日経BPは5月29~31日、『HumanCapital2019』を開催した。経営・人事・現場の課題を解決する人材関連ソリューションイベントだ。その中から、セッション「日経ビジネス『課長塾』体験講座 部下を"本気"にするエンパワーリング」を紹介したい。

  • 成長しない部下に困っていませんか?(写真:マイナビニュース)

    成長しない部下に困っていませんか?

課長塾とは

課長塾は「マネジメントの原理原則」「優先順位決定」「リーダーシップ」など、マネジメントに不可欠な要素を学ぶ講座。

再現性と実践可能をコンセプトとし、短期間で学べるカリキュラムなこと、異業種のメンバーと「学び」を通して交流することで「自分の気付き」の幅が広がることが特徴だという。

ディスパワー上司とエンパワー上司の違い

登壇した、エンパワーリング代表取締役の上村光典氏は、エンパワーリングとは「『自分の本気力』で人と組織の『本気力』を高めること」と話す。

上村氏「エンパワーとは自分が力の源泉となり、人や組織に活力を与えること。その逆で、ディスパワーとは、人や組織の活力を奪うことです」。

  • エンパワーリング 代表取締役 上村光典氏

    エンパワーリング 代表取締役 上村光典氏

世の中にはエンパワーな人と、ディスパワーな人の2つに分かれる。エンパワーな上司が職場にいると、全体のモチベーションが高まったり、コミュニケーションが活発になったりするなど、組織の一体感が強まるそうだ。

反対に、ディスパワーな上司が組織にいると組織の活力が奪われ、挙げ句にはメンタルヘルスやハラスメント、職場の離職率の問題などを引き起こす。問題のある組織には、必ず複数のディスパワーな上司が存在すると上村氏は言う。

エンパワーとディスパワー、その違いはどこにあるのだろうか? 上村氏によると、それは本気力にあり、エンパワーリングでは自らの本気力を高めることが肝となるという。

ディスパワー上司は他人を責める

本気力は「対『人間』」「対『仕事』」「対『自分』」の3つで構成されるそうだが、その中でもベースとなる「自分の本気力」を高める方法を紹介してくれた。

上村氏「自分の本気力を高めるには、主体性を強化することが必要です。そこで鍵となるのが自己責任力です」。

自己責任力とは、望ましくない状況や結果について、「自らに原因の源を求め、自ら解決に当たり、自らの成長の機会に変えていく力」と上村氏は定義し、本気力が低い上司(ディスパワー上司)には自己責任力が弱いのだという。

上村氏「上司になると、『何度教えても理解しない』『同じミスを繰り返す』など大小さまざまな部下の問題が発生します。そうした部下の問題には原因がありますが、その原因究明を行う際、人の思考は大きく『自己責任型』と『他責型』の2パターンに分かれます」。

自己責任型と他責型

問題が起こる原因を自身にあるのでは? と考える自己責任力の強いタイプが自己責任型。その逆で、自分以外の外部と考えるのが他責型だそう。

そして、どちらの傾向に寄るかで、エンパワー上司、ディスパワー上司の分岐点となるのだという。

つまり、ディスパワーな人の多くは他責型で、常に「自分以外の誰か、何かが悪い」「他人が何をなすべきか」ということを無意識に考えている。実は、上村氏自身、(講師となる前の)会社員時代は他責型で、なにか問題があるたびに部下に向かって原因を求め、ストレスを感じていたという。

上村氏「他責型のタイプは『問題の原因は自分ではなく相手だ』、『自分は正しい』という思考で凝り固まっています。『問題は常にお前だ』と言う上司に、部下はエンパワーされません」。

  • 自身も会社員時代は他責型の上司だったと言う上村氏

    自身も会社員時代は他責型の上司だったと言う上村氏

他責型の思考は個人だけでなく、組織にも起こり、他責の文化を持つ組織では、新しい制度や取り組みを導入しても逆効果になるのだそう。

自己責任と自責は似て非なるもの

それとは逆に、自己責任型の人は、自分に原因を求め、自分が何をするべきかを常に考え、成長するのだという。

だが注意したいのは、「自己責任=自責ではない」ということ。上村氏もよく「自己責任で考えると、精神的につらくなりませんか?」と質問されるそうだ。

上村氏「『自己責任の思考』のアウトプットとは、問題に対して主語を自分として考え、できることを行うことで、ポジティブでエンパワーにつながることです。これに対して自責とは『自分を責めること』で、思考が自分が悪い、駄目だと考えるネガティブでディスパワーなもの。

自己責任と自責を混同し、解釈を間違えると、上司のメンタルが駄目になってしまうことになる。他責、自責ではなく、自己責任とする。自らに『責任』を持たせることが秘訣です」。

「部下が成長してくれない」「毎回同じミスを繰り返して困る」と悩みを感じたら、まずは自分が原因ではないか? エンパワーできていないのでは? と振り返ることが必要なのだろう。そのうえで、適切なサポートを行えば、成長しはじめる部下が増えるかもしれない。

著者プロフィール: 上村光典(うえむら・みつのり)

営業会社の管理職・社内教育トレーナー、人材コンサルタント会社を経て、1992年より日本メンタルヘルス協会にて衛藤信之氏に師事、同協会でカウンセリング・ゼミ講師を務める。2006年新手法『エンパワーリング』を開発。また同時にその啓蒙・実践のために株式会社エンパワーリングを設立する。現在は「BusinessをHappinessにする」「人と企業を本気にする」を2大テーマに掲げ、全国を奔走中。