時代が急速に、激しく変化している今、上司と部下、中でも新人若手世代との間にあるジェネレーションギャップは、より大きく、深くなりつつあります。しかし、それを放置しておいては、組織として、また個としても、変革の時代を生き抜いていくことはできません。

そこで、働き方をリサーチしているリクルートマネジメントソリューションズがここ10年間にわたって行ってきた調査の結果と、同社研究員二人の話をもとに、上司世代と新人若手世代がより良い関係を築くためのヒントを探ります。

  • 上司は部下に嫌われるもの?(写真:マイナビニュース)

    上司は部下に嫌われるもの?

いまの若手が理想とする上司像

同社の新入社員意識調査結果によると、この10年の間に、新人若手世代が理想とする職場像、上司像が変わってきているのとのこと。その大きな要素は以下の3つです。

●トップダウン・管理型から⇒個性&多様性尊重・個別対応型へ
●情熱・叱咤激励型から⇒支援・応援型へ
●競争型から⇒共創型(コラボレーション)へ

この変化について、リクルートマネジメントソリューションズ HRD事業開発部 主任研究員の桑原正義氏は次のように解説します。

桑原氏「かつて、今の上司世代の人々が新人だった頃は、『情熱的なしっかりしたリーダーの下で、一致団結し、一所懸命、切磋琢磨しながら、組織全体で決めた目標達成に向かって邁進していく』そんな組織像を理想とし、それになじんでいました。

しかし、現在の新人若手世代の人たちは、こういう像をあまり好んでいません。彼らは、『一人ひとりに対してちゃんと意見を聞いてくれる。自分の特徴や個性にあった関わりをしてくれる。厳しく指摘するよりも、ほめる・認める。鍛えあうよりも、支え合う・助け合う』そういう職場や上司を理想としています」。

  • リクルートマネジメントソリューションズ HRD事業開発部 主任研究員 桑原正義氏

    リクルートマネジメントソリューションズ HRD事業開発部 主任研究員 桑原正義氏

明治安田生命の調査(※)における理想の上司像とされた有名人1位は、10年前は男性でイチローさん、女性で真矢みきさんでした。今年は、男性で内村光良さん、女性で水卜麻美アナウンサーとなっています。「しっかりついて行けば大丈夫そうだな」という頼もしい上司から、「話しやすそうだな、応援してくれそうだな」という親しみやすい上司に変わってきています。
※出典:明治安田生命保険相互会社 2019年2月15日「『理想の上司』アンケート調査」

育ってきた社会背景から若手の特徴を解析

こうした意識の変化に大きく影響しているのが、今の新人若手世代が育ってきた社会、生活、教育の変化による、彼ら自身の経験値の変化です。

  • 社会の変化がもたらす経験値の変化 出典:リクルートマネジメントソリューションズ

    社会の変化がもたらす経験値の変化 出典:リクルートマネジメントソリューションズ

加えて、こうした社会背景の中で育ってきたからこその仕事や生き方に対する価値観も、彼らを理解する上で注目すべきポイントだと桑原氏は言います。

桑原氏「新人若手世代、特に1990年代後半以降生まれの"ジェネレーションZ"と呼ばれる人々に、既存の常識、価値観に対するアンチテーゼのようなものが生まれてきていると思います。

まず彼らは、上司世代と比べるとプライベートを重視しています。さらに、仕事に対するモチベーションリソースが、『お金や地位・名誉』といった外発的なものではなく、『意味があるか』『世の中の役に立っているか』『学べているか』といった、内発的なものにシフトしています」。

外発的(動機付け)とは、行動の要因が評価・報酬などの人為的な刺激によるものであるという考え方、内発的(動機付け)とは内面に湧き起こった興味・関心や意欲によるものであるというものです。

この変化は、東日本大震災をはじめとした大災害を経験したり、目の当たりにしたりしたこと、また、これまで上司世代が規範とした社会常識や価値観、例えば、終身雇用や年功序列の概念などが崩壊しつつあるのをリアルに感じとっているからだそうです。

桑原氏「これからは、自分自身の幸せは自分で守っていかなければならないということがわかっているからこそ、より本質的なものや、自らの幸せに対する関心が高いのが、新人若手世代の特徴です」。