――ナレーターという立場から見て、四半世紀でのバラエティの変化というのは、どのように感じていますか?

これはコンプラに尽きますよね。本当に大人しくなってきちゃって、「ナレーションで遊んであげないと、面白くならないんじゃないかな?」っていう番組もありますから。

――自分が最後の手段として盛り上げようと。

おこがましいですけどね。でも、僕を呼んでくれるのであれば、やっぱりディレクターの上をいかないといけないなと思ってやっています。

それと、どこのチャンネルをつけても同じ演者さんが出てるじゃないですか。売れっ子ばかりを使うからスケジュールが取れなくて、時間の制約がある中で作らなきゃいけない。『オドオド×ハラハラ』(フジテレビ、9月終了)もそうだったんじゃないかと思います。タレントに時間もない、各局そうですがここ数年制作費も削られている。そんな中で佐久間(宣行)たち演出陣は精いっぱい頑張っていたと思いますけどね。

――最近はバラエティ番組を新しく立ち上げても、定着するのがなかなか難しくなってきています。

でも田中良樹とか、一生懸命視点を変えて面白いものを作ろうというディレクターも増えてきていると思います。それに、藤井健太郎を見て育ってきたディレクターたちがこれから出てくるじゃないですか。もちろん、藤井健太郎みたいにはできないと思うんですけど。

――「テレビもここまでやっていいんだ」と萎縮しない制作者がどんどん出てくるかもしれないですね。

そういう期待もあります。ただ、局にもよると思います。藤井健太郎の番組なんて、合田(隆信、TBSテレビ専務)さんみたいな、ちょっと普通じゃない上層部に守られているからできるんだと思いますから(笑)。だから、藤井はTBSで良かったなと思いますね。

――『有吉の壁』(日本テレビ)や『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ)など、ナレーションがほとんどない番組もありますが、どのように見ていますか?

僕が大好きな『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)もナレーションがないんですよ。見ていると「しかし!」とか「そこで!」とか「この後!」とか入れたくなっちゃうんですけど、なくても成立してるので素晴らしいなと思いますね。

それと、昔に比べたらナレーションの量が減ってきているかもしれないです。「テロップに書いてあるから」って、必要のない言葉を削ることもありますから。僕も説明過多だと思って「これ、見れば分かるからいらないよね」って言ったりします。さっき『水曜日のダウンタウン』の初期の読みのテンポが速かったという話がありましたけど、ゆっくりになってきたのは、この傾向もあるかもしれないですね。

――思い返すと、昔の『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ)とか『ガチンコ!』(TBS)とか、ナレーションでめちゃくちゃ説明してましたよね(笑)

今あれを見ると疲れちゃいますよ(笑)。そのあたりは一周して落ち着いてきたのかもしれないですね。

『電波少年』の衝撃「あんなナレーション、なかった」

――バラエティが主戦場ですが、実はこんな番組のナレーションをやってみたいというものはありますか?

『Nスペ』もやって、TBSのスポーツでも世界陸上とかオリンピックとか、去年の大みそかのWBC特番も7時間生放送をやりましたから、もうオールジャンルやらせていただいていると思うんですよ。だから、服部潤を飽きずに使っていただければ、それでいいかなと思っています。

――ご自身が影響を受けた番組を挙げるとすると、何になりますか?

ナレーションというものを意識し始めたのは、やっぱり『電波少年』(日本テレビ)ですね。(木村)匡也さんはちょっと衝撃でした。あんなナレーション、なかったですもんね。

あとは『情熱大陸』(MBS)ですね。窪田等さんは怪物ですよ(笑)。淡々としたしゃべりの中に意志がきちんとあって、見るものを飽きさせない。あれはちょっと真似できないですね。だって、声がズルいじゃないですか(笑)。一緒にメシに行ったことがあるんですけど、車の話とくだらない話しかしてないのに、ずっと『情熱大陸』を見てるようで全く飽きなかったんですよ。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…

制作会社のイーストに小宮泰也という若いディレクターがいるんですけど、ちょっと最近すごいです。『たけしのニッポンのミカタ!』(テレビ東京)という番組にADで入ってきたのが出会いで、そんなに才能があるように見えなかったんですけど(笑)、『オドハラ』の後に始まる東野(幸治)さんとSnow Manの渡辺(翔太)くんの『この世界は1ダフル』という番組で演出をやるので、楽しみですね。

  • 次回の“テレビ屋”は…
  • 『この世界は1ダフル』イースト・小宮泰也氏