――4月から始まった『中居正広のニュースな会』(毎週土曜12:00~ ※一部地域除く)は、『激レアさん』とはまた毛色の違った番組ですよね。

中居さんとは『中居正広のミになる図書館』からご一緒させていただいてますが、先ほども言ったとおり、僕はマニアックなことしかやってこなくて、学校で言ったら主要教科をやらず、変な教科だけ勉強して育っちゃったから、ニュースというのは全くやってこなかったジャンルなんです。

そこで、この番組をやるにあたって、今流行っていることや世間を騒がせているニュースを押さえつつ、どうしても悪者を見つけて叩くという感じになりがちだから、そういうことはやらないように決めました。それは、中居さんとも共通認識だと思います。むしろ、なぜそういう騒動になってしまったんだという根本的なところから扱うとか、何かを決めつけてどちらかの意見に流れてしまうようなことはやめるというのは、気をつけてやっています。

――タレントさんが1週間のニュースを振り返る番組として、『サンデー・ジャポン』(TBS)や、『ワイドナショー』(フジテレビ)が先行してある中で、そことの差別化という意識もあるのでしょうか。

中居さんはすごくニュースを見られているんですけど、番組内でも「自分は知識がないから、あくまで分からないことを聞くというスタンスに徹したい」と言われてます。最初は中居さんがニュースを斬っていくという期待をされる方も多かったようですが、そこは意識して中居さんが「皆ここまでわかった? 俺ギリついて行ってるよ!」とか言いながら、一緒に学ぶ番組にしたいと思っています。

■過激すぎて6割くらい使えない話

――さらに10月からは、爆笑問題さんと霜降り明星さんの『爆笑問題のシンパイ賞!!』(毎週金曜24:50~ ※一部地域除く)も始まりましたね。

本当に楽しくやらせてもらってます(笑)。爆笑問題さんの番組ということで企画書を出したんですけど、以前、物事を勝手に心配してロケに行くという特番(『シンパイの神』)をやっていて、またそういうのをやりたいなと思ってたんです。なおかつ、『ENGEIグランドスラム』で、爆笑さんが霜降りさんを楽しそうにイジったり、それに霜降りさんが臆せずバンバンツッコミ返すのがすごくいい関係だと思ったので、この2組でやったら面白いんじゃないかと考えました。

――実際に番組が走り始めて、その相性はいかがでしたか?

本当に思った通りでした! 粗品さんがいるから、田中(裕二)さんもボケる感じになっていて、太田さんも普段に輪をかけて自由にボケるので、完全にダブルボケになってます。せいやさんも普通なら3回に1回しか言えないような芯を食ったボケをバンバン言ってくれるし、粗品さんは最短のワードで的確にツッコんでいく。そのやり取りが卓球のラリーのようなスピードで毎回行われるので、ものすごいものを見ていると思って夢のようですね。

ただ、25分の番組に1時間近くトークしてくださるんですが、だいたい過激すぎて6割くらい使えない話です。太田さんが粗品さんの包茎手術の話を必ずして、それで毎回10分くらい盛り上がってしまうので、今のところ全放送回で30秒ぐらいずつ包茎手術の話をしてる、特殊な番組になってます(笑)

ロケのほうも、例えばかが屋さんはコントのキャラにならないと人に声をかけられないというので、実際にやり始めたら楽しくなって結局ずっとコントになっちゃって、それもすごく面白くて(笑)。芸人さんそれぞれの個性が出るロケっていう理想を持って続けていきたいです。

――それにしても、レギュラー番組3本の演出というのは大変ですよね。

ほかのディレクターのVTRを見て指示を出すというのができればいいんですけど、僕、口下手だからうまく伝えることができなくて、結局自分でVTRを引き取って直したりしてしまうので、その点は大変です。

  • 『爆笑問題のシンパイ賞!!』(テレビ朝日系、毎週金曜24:50~ ※一部地域除く)
    「ちょっとこれ心配なのよ」というヒトやモノを爆笑問題チームと霜降り明星チームに分かれた芸人軍団が調査対決するバラエティ番組。
    (写真左から)霜降り明星のせいや・粗品、爆笑問題の田中裕二・太田光、新井恵理那 (C)テレビ朝日

■好きなものしか出てこない夢の番組

――今後こんな番組を作ってみたいというものはありますか?

1つやりたいのは子供番組ですね。子供の頃からテレビを見てもらわないと、大人になっていよいよ誰も見てくれなくなっちゃうっていう単純な危機感もあります。どういうパターンがあるか分からないですが、親子で楽しめて、ちゃんとバラエティになってるという形をやってみたいです。

あと、野球がめっちゃ好きなので、文化系が見た野球というバラエティもやってみたいです。あの監督がこんな作戦をやると絶対裏目に出る…とか、そういう見方で野球を楽しむようなイメージ。「新・3大〇〇調査会」でも野球ネタは結構やっていて、頭の中にかなりストックされているので、それが出せる番組をやりたいですね。

――野球好きの中居さんが乗ってきそうじゃないですか?

でも、中居さんは巨人ファンで、僕はアンチ巨人の中日ファンなので…(笑)

――「テレビの規制が増えている」と言われることが多いですが、感じることはありますか?

僕らの世代は規制が厳しくなったところから入っているので、意外と実感は少ないです。でも規制って、それを見て傷つく人がいるから避けるというものなので、本来は良いことのはずですよね。今の世の中の認識よりテレビがめちゃくちゃやってたら、それって単に遅れてるだけで、それこそが一番ヤバいことじゃないですか。何かを笑いにしたら傷ついてしまう人は絶対にいるので、できるだけそれを少なくするように頑張るしかないと思います。配慮しながら最大限面白く作ることを試行錯誤するっていう仕事だから、映画や芸術じゃないので、しょうがないなと思いますね。

――ご自身が影響を受けた番組を1つ挙げるとすると何ですか?

どうしても1つにできなくて…。1本は、藤井(智久)さんがやっていた『虎の門』(01~08年、テレビ朝日)です。生放送でしゃべった言葉のテロップが出てくるのが斬新だったり、井筒(和幸)監督の映画のコーナーとかもありましたが、常にめちゃくちゃお笑いにストイックな企画をやっていて、好きなものしか出てこない夢の番組だったんですよ。それでテレ朝がいいなと思って受けましたから。

もう1つは、テレ東の高橋弘樹さんがやってた『ジョージ・ポットマンの平成史』(11~12年)。マニアックなんだけど独自の切り口で、ちゃんとストーリー建てて面白く仕上がっているのがすごいです。バカバカしいことを知的に見せるという、自分がやりたかったことをバカバカしくも緻密に作られているのがすごいなと思いました。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”をお伺いしたいのですが…

『勇者ああああ』をやっているテレ東の板川侑右さんです。あの番組を見てたら、芸人さんがめちゃくちゃスベっているのを延々と放送したりするんですよ(笑)。でも、誰も損はしていなくて、みんな美味しくなっている。その感覚がすごいなと思うのですが、狙いが何なのかを聞いてみたいです。

次回の“テレビ屋”は…

テレビ東京『勇者ああああ』演出・プロデューサー板川侑右氏