――あらためて、『クレイジージャーニー』の誕生のきっかけを教えてください。

企画書がなかなか通らない時期があって、そんな時に合田(隆信)部長に「おまえが好きなことを今一度突き詰めて、もう1回考えてみろ」って言われたんです。それでシンプルに考えたら、僕は「旅」と「松本人志」さんが好きだったので、それを合体させたのがこの企画なんです。松本さんは好奇心旺盛ですが、飛行機はあまり好きじゃなくて外国に行かれないので、僕が一人旅でドキドキしたインドの路地裏とかを見せたら、どんな反応をするんだろう、そのキワキワを知っているクレイジージャーニーたち会わせてみたらどうなるんだろう…というのが始まりです。

――実際に、松本さんのVTRのリアクションや、スタジオでのジャーニーとの掛け合いを見て、手応えはいかがですか?

一番良かったのは、ジャーニーに対してのリスペクトがすごくあるということでした。お笑いを極めた芸能界のトップの人が、訳の分かんないことやってるけど1つのことに打ち込んでいる人に終始敬語ですごくリスペクトがある。そうするとジャーニーも認められていると感じて、極めた者同士がリスペクトし合って話すので、空間として良いんですよ。収録が終わった後、ジャーニーはみんな「楽しかった」って言って帰っていきますからね。

  • 003のalt要素

    『クレイジージャーニー』(TBS系、毎週水曜23:56~)
    独自の視点やこだわりを持って日本&世界をめぐる"クレイジージャーニー"の旅に同行し、スタジオでその常人離れした体験談を聞いていく伝聞型紀行バラエティ。
    (C)TBS

――松本さんの新たな一面が見られる番組だと思います。

そうですね。松本さんの質問で、僕らが打ち合わせで知らなかったことが収録でどんどん出てきたりするんで、それはリスペクトし合っている空間だから、ジャーニーも急にスイッチが入って、思いもよらないことをしゃべってくれるんだと思います。ジャーニーって、人によっては少し偏屈だったりもするんですよ(笑)。でも、この番組では、そんな彼らがイロモノじゃなくて、すごくリスペクトを持って話を聞いてくれるんだ…と感じるみたいで、気持ち良くしゃべってくれるんですよね。

――他にもバナナマンの設楽統さん、小池栄子さんがMCでいらっしゃいます。意外な組み合わせだと思うのですが、この3人になった狙いはなんですか?

新しい座組でやりたいというのはありましたね。設楽さんはよしもとではないので、松本さんとガッツリ一緒にやることもなかったですし、小池さんはバラエティで相当な腕の持ち主ですが、女優業をメインにしていたところで、あえてアプローチしてみようと思ってオファーしました。

――3人の衣装ですが、白のシャツにジーンズという出で立ちには、どんな狙いがあるんですか?

あれは、僕の中で勝手にあったオシャレな旅人のイメージというだけなんですけど、周りからは「ダークでショッキングな映像が多いから、あえて白で清潔感を持たせたんだよね」って、思わぬ効果を言われたので、そっちでもいいやみたいな感じです(笑)

"ジャーニー・ネットワーク"からの紹介も

――なるほど(笑)。これまで登場した中で、印象に残ってるジャーニーの方はどなたですか?

ファベーラのギャングを撮影する写真家の伊藤大輔さんは、いろんな意味で面白かったです。キャラクターも「俺の撮る写真はさ!」みたいにオラオラと自分マインドが強くて、終始ロケ撮影もスタジオ収録のやり取りもそういう感じで印象に残っています。旅の内容も含めて、クセが強い"ザ・クレイジージャーニー"だなって思いましたね。

――ジャーニーの方は、どのように見つけるんですか?

本屋に行って変わったタイトルを見たら読んでみて会うっていうパターンと、最近はジャーニーがジャーニーを紹介してくれるという良いサイクルができてます。"ジャーニー・ネットワーク"ってすごいんですよ(笑)。「本は出してないけど、こういうのに打ち込んでるヤバい奴がいるよ」って紹介してくれて、ハマることもありますね。

偏屈であればあるほど収録が面白い

――この連載で『マツコの知らない世界』の坂田栄治さんや、『しくじり先生の』北野貴章さんが、自分から売り込んでくる人は、あまり面白くないと言っていましたが、『クレイジージャーニー』でもその傾向はありますか?

それは一緒ですね。こっちの勝手な希望ですけど、どこか打算的でない人であってほしいというところがあるんですよ。自分のやりたいことだけに純粋で、その思いが強い人の方がクレイジーである可能性が高いので、「『クレイジージャーニー』に出て有名になろう」と考えてる人にその可能性は低いです。そういった意味で言うと、偏屈であればあるほど収録も面白いので、ちょっとMCの3人も肩回ってる感じがするんですよ(笑)

――"偏屈"の面で印象に残っている方は?

偏屈ではないですけど、印象的だったのは、犬ぞりレースの本多有香さんですね。テレビ出演とか全く興味ない方だったので、あらゆるネットワークを使ってアプローチして、ようやく出演していただいたんですけど、ディレクターも「全然しゃべってくれないかも!」という感じで収録に来たんです。それで、松本さんたちに「今日の収録は、ちょっとどうなるか分からないですけど、すごく思いが強い方なんです」って説明したら、「分かったわ~」みたいな感じになって本番が始まったんですけど、収録が終わると本多さんは、それまで見たことなかった笑顔で「楽しかった」って言って帰って行ったんですよ。なんかMC陣の方もいつもより回って、そういうことが起きて面白いんですよね。

――そうすると、ジャーニーの人選は"偏屈度"を重視する部分もあるんですか?

思いやこだわりが強すぎると偏屈になりがちになるので、おのずとそうなりますね。名誉とかお金が欲しいとか、そういう動機じゃなくて、「誰も見たことないものを一番最初に見たくて…」みたいな方になってくるんです。

――滝沢秀明さんは「この番組は旅人の温度を伝えてくれる」と言っていましたが、それを伝えるために、意識していることはありますか?

全体的に言えることは、ジャーニーの人と文化に対するリスペクトがあるので、そこの意識をちゃんと持ってやっていると、おのずと温度が伝わるものになってるんじゃないかなと思います。他の番組でクレイジージャーニーが出て、ちょっとイロモノっぽい感じになっちゃった人もいたりするんですけど、この人がなぜこれに打ち込んでいて、何がしたくて何に喜びを感じているのかっていうところを描きたいと思っているので、そうすると熱も伝わるんだと思います。