――あらためてマツコさんの魅力について伺っていきたいのですが、『月曜から夜ふかし』をやってる日本テレビの古立善之さんが「VTRの素人さんを笑える空気感と目線を作ってくれる」と言っていました。坂田さんも、そういう部分は感じますか?

同じ感じはありますね。マツコさんは、誰よりも人の魅力を見つけるスピードが早いです。スタッフが結構打ち合わせをしないと見つけられなかった魅力を、マツコさんは瞬時に見つけちゃうんですよ。だから、マツコさんが触ったものがゴールドに光り輝くように見えることがあるんです(笑)

――神の手ですね(笑)

以前番組で「牛タンサイダー」というのを出すときがあったんですよ。実はこれ、とてもおいしいとは言えない物で。でも、マツコさんはそれを飲んで「マズい」と言う直前に顔をしかめて「うわぁ~これ牛タンを食ったあとの口の中だ~!」と付け加えるんです。そうすると、牛タンサイダーが面白く見えて、マズいものさえも光輝かせてしまう。

それから、生臭いキャビア味のポテトチップスを出したときも「マズい」って言うんですけど、袋を開けてすぐにその強烈な臭いに対して「そこは(生臭さ)穏やかでいいじゃない!」って言うと、その言い方とか表現方法で魅力的にしちゃうんです。その商品は放送時にもう販売してなかったんですけど「マツコさんがあんなにマズいって言うんだから、どんなもんなんだろう」って多くの人が興味持って、復刻販売されることになったんです(笑)

――普通「知らないこと」って興味がわかないですよね。それが、マツコさんを通すことによって面白くなって興味津々になってしまうところに、マツコさんのパワーを感じます。

目の前にある情報を、テレビの前の人に分かりやすく魅力的に伝えるのがうまいですよね。食べている味がどうなのかというのを、なんとなくではなくちゃんと考えて話してくれます。

――坂田さんは以前、細木数子さんが出演していた『ズバリ言うわよ!』も担当されていましたよね。マツコさんと細木さんって、ズバッと言うところとか、立ち居振る舞いとかが似てるなと思うんですが、どうですか?

似てますね! このお2人は、言葉の力が強くて気持ちもこもってるので、発言がズドンと来て流れないですよね。面白いのは、『ズバリ言うわよ!』も『マツコの知らない世界』も、同じ火曜21時枠なんです。たまたまなんですけどね。

――事前にスタッフの方が打ち合わせをして、面白いポイントはある程度想定できますよね。それでも、本番が始まって、マツコさんが全然違う方向に持っていって、想定より面白くなるということもあるんですか?

全然ありますよ! 僕らが打ち合わせを何回やっても見つけられなかったゲストの魅力の扉を、マツコさんが開けちゃうことは多々ありますね。

――スタッフの方への気づかいもすごいと聞きました。

たしかにすごいです。マツコさんは女装をされたりして、見た目は"武装"してる感じですが、テレビに出るときは心を"裸"にして、覚悟を決めて収録に臨まれます。台本なし、事前情報なしの状態で素人さんと本番で話す人はなかなかいませんからね。先日も視聴率が良くなかったことをメールすると、すごく熱い返信がありました。

――愛があるんですね。

マツコさんは、僕に対してすごく厳しいんです。でもその厳しいアドバイスによって、僕がみんなをうまくまとめることができればいいと考えているのかもしれないです。まさに番組の"座長"ですね。

―― 一見クールなイメージですが、実際は全然違うんですね。

収録時にはスタジオに行く前に、必ず美術さんの部屋に寄って「今日もよろしくお願いします」ってあいさつしたり、カメラマンさんで見ない顔があると「あれ? 新しい人?」って話しかけたりとか、とにかくすごいスタッフに気を配っているんです。