テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第45回は、9日に放送された『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系、毎週金曜20:57~)をピックアップする。

公式ホームページに「金スマは、女性のリフレッシュをめざし、様々な悩み・ストレスを解消していく番組」と書かれているように番組の強みは、ノンセクションであること。毎週多種多様な企画を放送することで、17年を超える長寿化につなげてきた。

今回の放送は、「ポッコリお腹が解消! ゼロトレに梅宮アンナも挑戦!」。“ゼロトレ”は8月3日の放送に続く2度目にもかかわらず2時間スペシャルであるところに、番組の狙いが見え隠れしている。

ダイエット結果を冒頭で見せる荒業

『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』を放送するTBS

オープニングのナレーションは、「今年最も話題になったダイエット本がある。その名は『ゼロトレ』。5月発売以来、売上は何と75万部超え」「ゼロトレとは、1日たった5分寝ながら簡単なストレッチをするだけのダイエット法」と、ポイントをギュッと凝縮。

続いて登場したのは、ゼロトレの考案者・石村友見ではなく、体験者の梅宮アンナだった。2回目の放送だけに「今回の主役は梅宮」ということなのだろう。ただ、驚かされたのは、「梅宮アンナ、1週間でウエストが-11㎝」「挑戦者3人合計1週間で-46.3㎝」と結果を明かしたこと。「何㎝、何㎏やせたのか?」というダイエット企画のクライマックスを冒頭で見せてしまったのだ。

しかし、見方を変えれば、「クライマックスをチラ見せすることで、視聴者に内容の保証をしている」とも言える。テレビに限らず多くの娯楽やコンテンツがある中で、「つまらないものを見て時間をロスしたくない」という現代視聴者の安定思考に合う策なのかもしれない。

その後、松本明子と伊藤さおりが登場してウエストを測ったあと、「太って履けなくなったズボンを履く」という目標が発表され、5種類のストレッチを紹介。さらに、「たった1セット行っただけでウエストが-3~6㎝になった」というポジティブな途中経過で期待感を高めたあと、最終結果が発表された。

前述した通り、最終結果はオープニングで発表済だけにドキドキ感はない。そのことをわかっているスタッフは、アナウンサーに熱気あふれる実況をさせ、大きな「成功」の文字、大量のスモーク、派手なBGM、スローモーションでのリプレイの演出で盛り上げようとしたが、尻つぼみの感は否めなかった。

ゼロトレのあと、短尺企画の「森三中・黒沢かずこの1日ママ体験」を放送したのは、尻つぼみのメイン企画をフォローするためだったのだろうか。『金スマ』はこのように時間や印象の帳尻を合わせるような短尺企画を入れるケースが少なくないが、内容はさておきメイン企画を水増しする番組よりは視聴者ウケがいいのではないか。

黒子に回れるスターMC・中居正広

特筆すべきは、スタッフの手練れ感。17年間も放送しているだけあって、「これくらいやらなければ注目を集められない」「これ以上やると嫌われる」という攻守両面でギリギリの線まで戦おうという姿勢が伝わってくる。

たとえば、CM直前のあおり映像。「絶対変わってないと思ってたんだけど、すごいですね(梅宮)」「アンナの結末に中居が涙」「このあと3つ目のストレッチを大公開。1週間のゼロトレで奇跡が起きる」「このあといよいよ最後のゼロトレ。森三中・大島はゼロトレで衝撃的な姿に」と、シンプルながら鋭い訴求が見られた。「CM明けに同じ映像を繰り返す」という視聴者が最も嫌う演出がないなど、「あざとい」と言わせないバランス感覚は、経験がなせるものではないか。

また、ダイエットという美容・健康企画ながら、笑いどころをしっかり交えているのもさすがだ。梅宮の「会うたびに父・梅宮辰夫から猪八戒と言われた」。「恋愛をしていないと太るよね」という意見に対する室井佑月の「今度、合コン居酒屋でも行く?」。大竹まことから松本への「人間、ムダな努力も必要だよね」。伊藤の「相方・虻川美穂子のウエストを測ってみたら、まったく同じサイズだった」といった発言を生かしており、「生活情報番組ではなくバラエティだぞ」という矜持を感じる編集が目立つ。

終盤にも、梅宮の爆笑失恋エピソードを再現ドラマでじっくり放送。「それが原因でアイスクリームを食べまくり、太ってしまった」という過程をはさむなど、番組が単調にならないための視覚的な工夫も見られた。過去には、ゴーストライター騒動前に佐村河内守を紹介するなど問題視された放送もあったが、良い悪い両面で過去の経験値が現在に生きている様子が伝わってくる。

だから、MCに業界トップ級の中居正広を据えながら、頼り過ぎることはない。事実、今回の放送で中居の発言は数える程度。中居が番組を仕切るシーンはほとんどなく、「(太った梅宮を見て)格闘家だよな」「(ウエスト)98? 98もあんの?」などとツッコミを入れるだけだった。

スタッフは「スーパースターながら黒子に回れる」という中居の強みを熟知している上に、「この番組で最重要なのは週替わりのコンテンツであり、無理に中居をフィーチャーしない」というスタンスを徹底している。

テレビ局と出版社が“ウィンウィン”の関係性

現在、『金スマ』の主要コンテンツは、「ひとり農業」「キンタロー。の社交ダンス」「有名人の人生ドラマ」「ベストセラー本の紹介」の4つ。なかでも、前回「医者が教える食事術の第3弾」、今回「ゼロトレの第2弾」が放送されたように、ベストセラー本の内容をタレントが実践するというパターンが目立つ。

過去にも『カーヴィーダンス』や『体脂肪計タニタの社員食堂』などがフィーチャーされたほか、今年も食事や掃除などの家事、ストレッチやスクワットなどの運動に関する著者が登場している。

たとえば、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)なら数人の著者が登場するが、『金スマ』は基本的に1人だけ。つまり、ここまで1冊の本や1人の著者にフィーチャーするのは『金スマ』くらいであり、その宣伝効果は計り知れない。

そもそも「ベストセラー」と言っても書籍の販売は数十万部から百万部程度に過ぎず、読んでいない視聴者のほうが圧倒的に多いため、そこにビジネスチャンスがある。実際、私が知っている書籍編集者だけでも「著者を『金スマ』に出したい」と願う人は20人超。ちなみに、『ゼロトレ』の発行元であるサンマーク出版は、「近藤麻理恵の『人生がときめく片づけの魔法』が『金スマ』で紹介されて人気が加速し、アメリカなどでベストセラー化した」という成功体験を持っていた。

一方、番組スタッフたちにとってもベストセラー本は、「多くの人々が関心のあるジャンル」「他とは明確に差別化された内容」などの強みがある上に、「書籍購入者は著者のファンであり、買ったという行為を自己肯定したい」などの理由から一定の視聴数が見込めるコンテンツ。ベストセラー本ばかり放送すると飽きられてしまうだけに、適切なペースを守りながら、今後も番組の長寿化を支えていくだろう。

ただ、視聴者の健康、生活、お金に直結する内容は、信ぴょう性への疑いや強烈なクレームと紙一重。スタッフたちはそんなリスクやプレッシャーと戦い、細心の注意を払いながら企画を吟味し、過剰演出を避けるなどの努力を重ねている。

「女性のリフレッシュをめざし、様々な悩み・ストレスを解消していく」という番組コンセプトは、「スタッフたちがリフレッシュできず、様々な悩み・ストレスを抱えていく」ということにつながらないか…少し心配してしまった。

次の“贔屓”は…「ただのアイドルバラエティ」なのか?! 『嵐にしやがれ』

『嵐にしやがれ』(C)NTV

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、17日に放送される『嵐にしやがれ』(日テレ系、毎週土曜21:00~)。

何度かのリニューアルこそしているが、「スタジオあり、ロケあり」「グルメあり、ゲームあり」のタレント総合バラエティとして、2010年4月のスタートから約8年半が経過。『SMAP×SMAP』(フジ・カンテレ系)が終了してからは、“アイドルグループ唯一のゴールデンタイム総合バラエティ”として存在感を放っている。

次回の放送予定は、「嵐vs山田孝之のうどんデスマッチ」「相葉雅紀と風間俊介の軽井沢ツーリング」「二宮和也とアートパフォーマーのコラボ」の3本立て。いまだ「ただのアイドルバラエティ」と揶揄(やゆ)する人もいるが、実際はどうなのか。タレント総合バラエティの肝である「タレントと企画のバランスはどうなのか?」「マンネリはないのか?」なども含め、検証していきたい。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。毎月20~25本のコラムを寄稿するほか、解説者の立場で『週刊フジテレビ批評』などにメディア出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日の視聴は20時間(2番組同時を含む)を超え、全国放送の連ドラは全作を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』『話しかけなくていい!会話術』など。