テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第235回は、7月31日に放送されたフジテレビ系バラエティ番組『千鳥の鬼レンチャン』(20:00~)をピックアップする。

2020年10月から4度にわたる特番の放送を経て、今春にレギュラー放送がスタート。今回はメイン企画の「サビだけカラオケ」に、ミキ・亜生、私立恵比寿中学・柏木ひなた、TKO・木下隆行、日向坂46・富田鈴花、友近、hitomiの6組が挑戦した。

千鳥、かまいたちという現在トップクラスの売れっ子がそろい踏みする番組だが、まもなくレギュラー版スタートから3カ月になるだけに、現在の強みと課題、今後の行方を占っていきたい。

  • 千鳥(上段)とかまいたち

    千鳥(上段)とかまいたち

■ライバル番組で100万円獲得の実績

番組は「1音も外さず10曲歌い切れば賞金100万円。合計レンチャン数で上回るのは果たしてどちらのチームか」というナレーションからスタート。画面には、かまいたち軍に「hitomi、私立恵比寿中学・柏木ひなた、TKO・木下」、千鳥軍に「日向坂46・富田鈴花、友近、ミキ・亜生」という事前のドラフトで指名された振り分けが表示されている。

レンチャン数の多いチームが勝ちなのだが、それは視聴者にとってほとんどどうでもいい話。これは千鳥とかまいたちのトークを盛り上げるための構成だが、その勝敗にほとんど意味がないことは見透かされているだけに、視聴者を見くびらないほうがいいだろう。

トップバッターのhitomiは、「日テレのカラオケ番組『熱唱!ミリオンシンガー』で100万円を獲った」こと、「番組のために1カ月間練習をしていた」ことを明かした。チャレンジャーが本気度を示し、「絶対に失敗できない」という思いを視聴者に見せるのは採点演出や大金獲得番組の常とう手段。当番組も分かりやすい入口として、それが徹底されている。

hitomiは、まずレベル1として表示された「オリビアを聴きながら/杏里」「SEASONS/浜崎あゆみ」「飾りじゃないのよ涙は/中森明菜」「アジアの純真/PUFFY」「手紙~拝啓 十五の君へ~/アンジェラ・アキ」の中から「アジアの純真」を選択し、あっさり成功する。

2曲目は自身と同じ小室ファミリーの「愛しさと せつなさと 心強さと/篠原涼子」も成功し、3曲目に「あなたに会えてよかった/小泉今日子」を選ぶと、“資金調達担当 コアミP”が登場。ノブいわく「薄くて長い」意味のない質問を浴びせてhitomiのテンションを下げようとしていたが、この演出は明らかにスベっていた。90年代に多かった内輪ウケの演出であり、なぜ令和の今、それを採用したのか。まだ「1周回って面白い」という状態にはなっていない。

4曲目は「今すぐKiss Me/LINDBERG」、5曲目は「世界中の誰よりきっと/中山美穂&WANDS」、6曲目は「Don't wanna cry/安室奈美恵」で成功したが、7曲目の「M/PRINCESS PRINCESS」で失敗。その瞬間、スタジオでは「アウト~!」と盛り上がり、大悟「『あのころの時代SP』やってほしい」、ノブ「盛り上がりますね」とトークが弾んでいた。

■挑戦者のカラオケか千鳥のトークか

2人目の挑戦者は、前回出演で2レンチャンだったミキ・亜生。モテ曲を歌ったことで一般女性から多くのDMがきたことを明かし、「その再来を狙う」「コンパの最後に歌う曲」「芸能人の価値はDMで決まる」などとたたみかけるが終始スベり気味で、大悟から「今のトークどうやったかな」と指摘されてしまう。その後も、千鳥とかまいたちからトークのダメ出しが続き、「亜生のスベリで笑いを誘おう」という意図が見て取れた。

1曲目「TRUE LOVE/藤井フミヤ」、2曲目「オリジナル スマイル/SMAP」、3曲目に前回失敗とした「猫/DISH//」、4曲目「Sign/Mr.Children」と成功し、5曲目の「しるし/ Mr.Children」で失敗。

3人目の挑戦者は、歌うま芸人の筆頭格・友近。しかし、1曲目の「飾りじゃないのよ涙は/中森明菜」で失敗。あっという間に終了した。これは企画のガチンコ感を醸し出すリアルな部分であり、この手の番組には欠かせないところだ。また、芸人ならその役割を任せやすいところがある。

4人目の挑戦者は、前回出演時にアイドル初のレベル10に到達した日向坂46・富田鈴花。挑戦前に「濱家隆一が、あるテレビ局の女子トイレに間違って入ってきた」というエピソードを話し、スタジオの4人も尺を使ったトークで盛り上がるが、この番組の視聴者は「早く歌わせて」と思った人のほうが多いのではないか。挑戦者と歌唱シーンか、千鳥&かまいたちのトークか。そのバランスは視聴者の好みが分かれるところだけに、この番組の課題なのかもしれない。

1曲目「SEASONS/浜崎あゆみ」、2曲目「マイ フレンド/ZARD」、3曲目「桃色片想い/松浦亜弥」、4曲目「BLUE BIRD/浜崎あゆみ」、5曲目「雪の華/中島美嘉」、6曲目「夢見る少女じゃいられない/相川七瀬」、7曲目「チョット/大黒摩季」、8曲目「大阪LOVER/DREAMS COME TRUE」、9曲目「あの夢をなぞって/YOASOBI」まで成功したが、10曲目の「ゲレンデがとけるほど恋したい/広瀬香美」で歌唱終盤に失敗。

やはり10レンチャンに挑む過程は緊迫感があり、この日最大の盛り上がりを見せたが、一転して涙のエンディングとなった。