テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第222回は、4月30日に放送されたテレビ朝日系バラエティ特番『藤井 風テレビ with シソンヌ・ヒコロヒー』をピックアップする。

現在の音楽シーンを席巻するアーティスト・藤井 風の初冠番組で、30日の放送が2週連続放送の2回目だった。前回は楽曲披露と見せかけていきなりコントを連発し、視聴者を驚かせたが、今回はどんなサプライズを用意していたのか。

テレビ朝日

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■2枚組CD風の演出が時代にフィット

オープニングで藤井のライブ映像に合わせて、「実はお笑いが大好きという藤井 風がシソンヌ・ヒコロヒーと初めてのコントに挑むこの番組。藤井 風の突然のお笑い挑戦に少しばかり世間を騒がせた前回でしたが、今夜はさらにチャレンジ満載の予感。そんな藤井 風テレビを今夜もステキな歌と共にお楽しみください」というロングテロップが映された。

ちなみに前回のテロップは、「実はお笑いが大好きという藤井 風がシソンヌ・ヒコロヒーと初めてコントに挑むこの番組。近年の音楽界を席巻する藤井 風だがバラエティーは初体験。やる気は充分だが、どうなることやら…もちろん、ステキな音楽ライブもありますよ」だった。

「番組のコンセプトと見どころをインタビューなどではなくテロップでサッと見せてしまう」という単刀直入な演出は、ネット動画的であり、放送時間の短い深夜帯の番組にもフィット。「早く見たい」というせっかちな現代人の好みに合っている。

続いて画面に表示されたのは、2枚組のCDに見立てた番組内容。Disc1が前回の放送でTrack1「子守歌」、Track2「プロポーズ」、Track3「名曲カバー」、Track4「おまじない」、Track5「まつり」、Disc2の今回はTrack1「ピアノバー」、Track2「出所」、Track3「大工の棟梁」、Track4「弟子たちの青春」、Track5「青春病」が放送されることが明らかになった。

アーティストの冠番組らしいモチーフであるとともに、最初にどれくらいのコンテンツ数があるかを知らせ、タイトルで期待感を高める。ここでも単刀直入でスピーディーな演出が見られた。

Track1の「ピアノバー」は、失恋した女性客をシソンヌ・じろう、バーテンダーをシソンヌ・長谷川忍、ピアノ奏者を藤井が担当。藤井が「北の国から」「おどるポンポコリン」「蛍の光」を弾き語りし、その歌詞に合わせて、じろうがノリボケ&ツッコミを入れるという構成だった。

「ほぼシソンヌのコント」であり、藤井はピアノをほぼ弾いただけという穏やかな滑り出し。ただ、ファンにしてみれば藤井が普段歌わないような名曲をカバーしたお宝映像であり、「これぞ冠番組」というコントなのかもしれない。

■藤井 風の歌はやっぱりすごかった

Track2の「出所」は、出所した女性をヒコロヒー、チャラくなった恋人を藤井が担当。恋人の服役中に、「原宿の美容院で金髪にして服を買い、10キロのダイエットをし、深作欣二の映画を見て男らしくなり、指輪を出してプロポーズし、宅建も取得した」という驚きの変化を見せた男が「出所したての女を上回る変化やめてもらっていい?」とツッコまれる構図のネタだった。

名曲カバーというレアな歌声の次は、“金髪チャラ男”というレアな姿。さらにファンを喜ばせたが藤井のセリフは少なく、ヒコロヒーのまくし立てるようなツッコミありきのコントであり、サプライズというほどのインパクトはなかった。

Track3の「大工の棟梁」は、収録前のトークからスタート。この段階で「サプライズはここだな」というムードが漂い始めている。

長谷川が「カロリーが高いネタですけど……藤井くんが一番しんどい、芸人でもやるのが嫌なハードなヤツを。練習したからいいっていうネタでもない」とハードルを上げると、藤井は「助けてください…」と珍しく緊張感をあらわにした。

コントが始まると、藤井が大工の棟梁、長谷川、じろう、ヒコロヒーが部下の職人を担当。藤井は3人が放つ立て続けのモノボケに、即興かつ全力で「……やかましいわ!」「……カンパチ~!」「……それはイノッチ」などとノリツッコミを入れていくが、明らかに苦しんでいる。

心が折れかけた藤井が「1回ミーティングしようか。あの……助けてくれ」とこぼすと、長谷川と担当を交替。藤井はモノボケ側に回り、最後は「やるほうはけっこう楽しい」と笑顔を見せて終了した。

藤井はクールなキャラクターとは真逆の姿を見せて盛り上げたが、本人だけでなく視聴者も「ふだん芸人が何気なくやっているノリツッコミはこんなに難しいのか」と気づいたのではないか。人気絶頂の今、そんな難易度が高く、恥をかくリスクの高いコントに挑む藤井の好感度はますます上がった感がある。

そのままTrack4の「弟子たちの青春」に突入。シソンヌとヒコロヒーのショートトークから、藤井が「青春病」を歌い、これがTrack5となった。

当たり前だが、コントのときに見せた不安定で自信のない姿から一変。藤井は同じ人物とは思えないほどの輝きを放ち、番組側はカメラワークやライティングなどの演出で、そのカッコよさサポートしていた。この落差こそがアーティストバラエティの真髄なのだろう。