テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第219回は、9日に放送されたTBS系バラエティ特番『キングオブコントの会2022』(19:00~)をピックアップする。

「『キングオブコント』にゆかりのある芸人たちが、この番組のために書き下ろした新作コントを披露する」というコンセプトのネタ特番であり、昨年6月12日に続く2度目の放送となる。

「歴代王者12組に松本人志、さまぁ~ず、バナナマンを加えた32名が出演」「芸人自ら脚本・演出・キャスティングした新作コント19本」「松本人志が新作コントを書き下ろし」という充実の構成は、特大の話題と笑いに結びつくのか。

「日本一豪華なコント番組」というコピーに加えて、東京03・飯塚悟志が「あんまりハードル上げたくないけど、やっぱり面白い」、空気階段・鈴木もぐらが「すごくイイものができあがったと思います」と語るなど、随所に自信のほどが表れていた。

『キングオブコントの会2022』に出演した松本人志

『キングオブコントの会2022』に出演した松本人志

■オープニングからお祭りムード全開

オープニングは出演者が一堂に会したスタジオトークから。松本が「このメンツがまた集まれるとはすごいことですよね」と切り出し、さらに「みんなが出たコントをみんなが(スタジオで)どう見守るのかっていうのも1つの醍醐味」と語った。人気芸人32人がそろう映像は確かにお祭りムードがあり、トークパートへの期待感もおのずと高くなっていく。

少しのメンバーイジリをはさんで、早速1本目のコントに移り、東京03が手がける「ファミレス」で、飯塚悟志、角田晃広、豊本明長に加えて、シソンヌ・じろうとロバート・秋山竜次が参加。「もし東京03のコントに、強烈なキャラの2人が投入されたら……」という設定、流れ、ビジュアルなど、オープニングにふさわしい明快さがあった。松本はこれを「怪獣大戦争」と例えたが、これは「これからもたくさんの“怪獣”が出ますよ」という前振りだろう。

2本目は、空気階段が手がける「立てこもり」で、水川かたまりと鈴木もぐらに加えて、豊本明長、かまいたち・濱家隆一、じろう、どぶろっく・森慎太郎&江口直人が参加。それぞれが志村けんさん、所ジョージ、安倍晋三、X JAPAN、大森南朋、白木屋のキャラクターを演じたモノマネコントで、またもサラッと見られる序盤らしいネタだった。ポイントは、じろうの志村けんさんや濱家の所ジョージなど、「モノマネ芸人ではなくコント師のモノマネだからこその笑いがある」ことだろう。

3本目は、コロコロチキチキペッパーズが手がける「伏線回収業者」で、ナダルと西野創人に加えて、さまぁ~ず・三村マサカズ、角田晃広、森慎太郎、江口直人、ライス・関町知弘が参加。ナダル、三村、角田の強烈な“怪獣”に、ギターを持たず歌わない森と江口の新鮮さが加えられていた。

4本目は、ジャルジャルが手がける「脚本家とエグゼクティブプロデューサーの奴」で、後藤淳平と福徳秀介に加えて、かもめんたる・岩崎う大が参加。「自分の職業を『脚本家』『エグゼクティブプロデューサー』と言えない」という1コンセプトで押すジャルジャルの世界観に、俳優としても活躍するう大が加わることで、「コメディドラマのような仕上がりに昇華する」という特別感があった。

5本目は、ライスが手がけた「法律相談所」で、田所仁と関町知弘に加えて、飯塚悟志、豊本明長、角田晃広、鈴木もぐら、ナダルが参加。一人ひとりがたっぷりと役を演じ、声を張り上げる熱演コントで、テレビというより劇場の特別公演を見ているような豪華さと迫力があった。

■「日曜劇場」風の贅沢なコント演出

6本目は、かもめんたるが手がけた「墓参り」で、岩崎う大と槙尾ユウスケに加えて、豊本明長、シソンヌ・長谷川忍が参加。「ヤクザのアニキがダイコンに生まれ変わったら」というおバカな設定も、顔に水をかけられて苦しむ流れや巨大なダイコンの着ぐるみも、いかにも往年のテレビコントらしい楽しさを感じさせた。

7本目は、どぶろっくが手がけた「誇り高き者たちへ」で、森慎太郎と江口直人に加えて、じろう、バイきんぐ・西村瑞樹、福徳秀介、田所仁が参加。披露されたのは、「チェリーボーイ」がテーマの楽曲に合わせて撮られたミュージックビデオ風のコントだった。彼らの十八番である下ネタながら、ここまでで一番のインパクトがあったことから、もしコンテストだったら決勝進出したかもしれない。

8本目は、ロバートが手がけた「ママ友」で、秋山竜次と山本博に加えて西村瑞樹、関町知弘、かもめんたる・槙尾ユウスケが参加。いつも通りの秋山ワールドがコント王者たちの加勢で過剰さが際立っていた。約15分の長尺だったが、これでも9分程度カットして放送したというから驚かされる。

9本目は、シソンヌが手がけた「喫茶店」で、じろうと長谷川忍に加えて、大竹一樹、秋山竜次、福徳秀介、バイきんぐ・小峠英二、かまいたち・・山内健司が参加。ネームバリューで言えば、今回最も豪華なユニットだが、その内容は松本が「日曜劇場みたい」と評したように“ほぼドラマ”だった。9台のカメラや繊細なライティングなども、通常のネタ特番では見られない技術であり、希少さという点ではこの日一番ではないか。

10本目は、バイきんぐが手がけた「宅飲み」で、小峠英二と西村瑞樹に加えて、鈴木もぐら、豊本明長が参加。スタッフがペットボトル8,000本を用意して作ったゴミ部屋は圧巻で、これもテレビのゴールデン特番ならではであり、ネット上でシェアされやすいコントだった。

11本目は、ハナコが手がけた「お座敷遊び」で、秋山寛貴、岡部大、菊田竜大に加えて、バナナマン・設楽統&日村勇紀が参加。「若手のハナコとベテランのバナナマンがガッチリ組む」という王道のユニットコントだったが、設定も流れもどこか志村けんさんを彷彿させる懐かしさがあった。

12本目は、かまいたちが手がけた「路上ミュージシャン」で、山内健司と濱家隆一に加えて、後藤淳平、福徳秀介、森慎太郎、秋山寛貴、関町知弘が参加。「路上ミュージシャンに難クセをつける男だけでなく、ファンの中にも危ないヤツがいる」という、かまいたちらしい毒気たっぷりネタで、福徳、関町、秋山の女装も効いていた。