テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第210回は、5日に放送されたTBS系バラエティ番組『ジョブチューン~アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』(18:51~ ※一部地域除く)をピックアップする。

今回の放送は、「イオン×超一流料理人&イオン本社・ダイソー本社に突撃訪問!」。イオンの惣菜を超一流料理人が判断するジャッジ企画と、イオン本社、ダイソー本社を突撃する企画の2本立てが予告されていた。

『ジョブチューン』と言えば、元日に放送されたコンビニジャッジ企画で物議を醸したばかりであり、同企画はそれ以来の放送。「料理人が食べずに判定しようとして開発担当者を泣かせてしまう」という強烈なシーンに批判が殺到していたが、何らかの変化は見られるのか。

  • 『ジョブチューン』MCのネプチューン

    『ジョブチューン』MCのネプチューン

■冒頭から総合格闘技風のあおり映像

番組は「前哨戦」と題して、イオン社員イチ押し第11位の「牛肉と出汁の旨味が利いた肉じゃが321円」のジャッジからスタート。開発した入社5年目の若手社員・柳田さんが商品への思いを語り、調理工程を丁寧に紹介したあと、ジャッジが始まった。

結果はいきなり7人が満場一致で合格。震える声でプレゼンしていた柳田さんは涙を流しながら喜びを語ったが、満場一致で合格だけに審査員のコメントは絶賛ばかりだった。

19時になり、あらためて「日本一のスーパーが参戦」と紹介した上で、本番のジャッジ企画がスタート。商品部長の金子さんが、「最近、惣菜や弁当はコンビニで買う人が多いと思いますが、イオンの惣菜がおいしいということを証明しに来ました」「コンビニジャッジの最高記録が8品なので、それを超える9品合格を狙います」と力強くコメントした。

続いて目に飛び込んできたのは、総合格闘技のあおりVTRを思わせる映像。アニメ『鬼滅の刃』主題歌でAimerの「残響散歌」を流しながら、「社員それぞれの思いが詰まった商品が……」のナレーション、「残念! 不合格」「パーフェクト合格!」の予告映像、「その運命は!?」「コンビニに負けない!」「果たして!?」「イオンの挑戦」のテロップをたたみかけてあおりにあおった。

さらに「1位:唐揚げ 2位:ポテトサラダ 3位:ロースカツ重 4位:レバーの赤ワイン仕立て 5位:トマトスープごはん 6位:コロッケ 7位:マルゲリータ 8位:幕の内弁当 9位:メンチカツ 10位:絶賛肉餃子」のメニュー一覧を表示。「大げさすぎるのでは?」という感覚と同等以上に、「不合格もパーフェクトもあったんだ」というネタバレが気になってしまった。

本来は「何品合格するのかな……」と視聴者をハラハラさせたいはずなのに、ここまでネタバレさせるのは制作サイドの抱える矛盾ではないか。いずれにしても、制作サイドにおいて見てもらう上での不安がある様子がうかがえた。

■「プロの提案」フォローのテロップ

まずは「10位:絶賛肉餃子429円」がスタート。開発部エースの緒方さんが登場し、製造工程が映されたあとジャッジが始まった。結果は合格3人・不合格4人で不合格。「中華の専門家2人が不合格」という厳しい幕開けとなってしまった。

審査員の「日経レストランメニューグランプリ優勝 Turandot臥龍居 小澤善文」は、「非常に残念」などと酷評。しかし、「餡のキャベツをもう少し細かくして入れれば絶対においしくなると思いましたね」と続けて、画面上に“プロの提案”というテロップが表示された。

続いて「5年連続ミシュラン一つ星 中国菜 エスサワダ 澤田州平」もダメ出しをしたあとに、「野菜の旨味を前面に出したほうがいいんじゃないかな」という“プロの提案”をコメント。さらに、「でも何がすごいって思ったのは、皮がまったく固くなかったこと」「いろいろ苦労されたと思うんですけど、モチッとしておいしかったので、もうちょっと具の部分をおいしくしていただいたら。もっとおいしい餃子を作っていただきたいと思います」と前向きなアドバイスを重ねた。

どちらも、「不合格にしたのは“プロの提案”をすることが目的ですよ」と言いたげなコメントであり、元日放送の影響を踏まえたものであることは間違いないだろう。ところが次に流れたのは、「いきなり不合格となってしまったイオン。コンビニ惣菜ジャッジの記録超え、9品合格にはもう1つも落とせないが果たして……」というナレーションだった。つまり、ここまでは「強烈にあおる演出は変えず、ほぼ審査員のコメントを変えたのみ」の調整に留まっている。

続く「9位:自慢のメンチカツ1個192円」はスタジオで試食し、トークをはさんだあとジャッジに入り、満場一致のパーフェクト合格。2人が絶賛コメントを放ったのみであっさり終了するなど、ジャッジ前後の開発者コメントもなく、あまりドラマティックな要素がなかったのだろうか。

「8位:トップバリュ 銀鮭西京焼き幕の内弁当537円」は、おにぎり・お弁当担当の時田さんのコメントを入れながら調理工程をじっくり紹介。あえて冷めた状態のまま食べてもらう形で勝負し、こちらも満場一致のパーフェクト合格を勝ち取った。

時田さんは「最初は売れなかったのでうれしい」と涙を流していたが、ここまで4品中3品がパーフェクト合格だけに、「今日の審査員はこれまでより甘めなのかもしれない」と感じた視聴者が多かったのではないか。