5つ目のエピソードは、歌舞伎俳優・中村獅童の息子・陽喜くん(3歳10カ月)。最大の見どころは、「疲れた。足が痛い」と言って歩こうとしない陽喜くんに、母が「梨園の妻」として厳しく接するシーンだった。

初舞台を間近に控えていただけに「泣かせてでも説得する」という形を取ったのだろうが、その後も獅童が陽喜くんを突き放すシーンがあり、一部の視聴者から批判の声があがっていたのも事実。ただ、子育ての賛否はさておき、陽喜くんのおつかいが「二世俳優の子育て」というテーマならではのエンタメ性があり、他エピソードと差別化できていたのは間違いない。

最後は獅童が涙ぐみながら陽喜くんを抱き締め、「ありがと」「ぼくもありがと」と感謝を伝え合う感動のシーン。さらに陽喜くんは、ごほうびとして初めて憧れの隈取りをしてもらい、「めちゃかっこいい」とドヤ顔を見せるハッピーエンドだった。

6つ目のエピソードは、岡山県津山市の柚來ちゃん(3歳7カ月。「これまで自閉スペクトラム症のお姉ちゃんにかかりきりだったため、柚來ちゃんのことを考える時間をもっと持ちたい」という母親の思いが込められたおつかいだった。

柚來ちゃんはお姉ちゃんの世話を率先して行ういい子だが、うどんを買ったあとの帰り道、その重さに「ひとりじゃ歩けないじゃん……」とグチをこぼす子どもらしいひと幕も。最後まで「みんなのために、みんなのために」と口ずさむ柚來ちゃんにスタジオメンバーが涙を誘われた。

最後は、千葉県銚子市の燈里ちゃん(4歳9カ月)。パン工場、魚屋、果物屋へのおつかいに向かう道のりで、タバコ屋、雑貨屋、パーマ屋……「次々に子どもの応援団が現れ、町中の人に見守られておつかいへ行く」というタイプのエピソードだった。

ひなびた地元商店街の温かさを映し、娘を迎えた母親の涙がこぼれたところで番組は終了。ほとんど起伏はなく、ただただほっこりさせられるエピソードを最後に選ぶところがこの番組らしかった。

■“隠れ正月番組”として定着した理由

今回の舞台は、芸能人の中村獅童親子を除けば、北海道、千葉(銚子)、神奈川(藤沢)、香川、岡山と、地方を中心に撮影が行われていた。出演する子どもと、おつかいルートの選定、近隣住人や店への説明と理解、おつかい当日の警備など、時間・労力・配慮の大きさは計り知れず、都会になるほど難易度が上がるのだろう。

とりわけ事故などのトラブルは絶対に避けなければいけないため、ロケには大量のスタッフを動員しているが、それでも、おつかいに行ってくれなければ撮れ高ゼロ。毎回放送後にあがる「泣いている子どもに無理矢理行かせるものなの?」などの批判も含め、いかにリスクの高い企画であるかがわかるだろう。

ただ、どんな内容であれ、一般人、しかも子どもがメインの番組である以上、批判の声を完封するのは難しい。ここまで努力と配慮ができているのなら、制作陣は胸を張っていいはずだ。放送30年を超えたが、結局、視聴者目線で感じられる変化と言えば、ナレーターにアニメ『鬼滅の刃』で竈門炭治郎を演じる声優・花江夏樹が加わったことぐらいではないか。

シンプルでイノセントな企画ほど、ごまかしが利かないため苦労は多くなるものだが、だからこそ普遍的であり、ほぼ毎年1月上旬に放送されている“隠れ正月番組”として定着できたのかもしれない。この企画は簡単そうに見えてハードルが高く、継続するのはさらに難しいだけに、たとえばYouTuberが真似しようと思っても、なかなかできないだろう。

日本テレビにとっては、子どもを持つ全世代の親が視聴者候補になり、しかも新たに子どもが生まれた若い親が必然的にメインターゲットとなっていく貴重なコンテンツ。ハードルの高さという意味で、「この番組が放送できるうちは、まだまだテレビは健在」と言えるバロメーターのような番組の1つであり、年2回の放送が半永久的に続いていくことを願ってやまない。

■次の“贔屓”は……「未婚」の稲垣吾郎が「結婚」に切り込む!『不可避研究中』

『不可避研究中』MCの稲垣吾郎

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、14日に放送されるNHKのジャーナル番組『不可避研究中』(23:35~)。

2019年12月のスタートからほぼ月1ペースで放送していたが、昨春から約8カ月にわたって放送がなく、ファンを心配させていた。しかし、昨年末に再開したほか、今年も放送が継続されることが明らかになり、しかもテーマは「結婚」。MCの稲垣吾郎は新しい地図の中で唯一、未婚だけにそのコメントが注目を集めるのではないか。

その内容は、20代女性ディレクターが周囲からの「結婚すべき圧」の実態を調査するほか、「結婚こそが人生の幸せ」と信じて疑わない20代男性ディレクターが恋愛リアリティ番組で一躍脚光を浴びた小柳津林太郎を突撃。さらに、稲垣が伝説の仲人に出会うコーナーもあるという。