テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第205回は、25日に放送されたTBS系バラエティ特番『お笑いアカデミー賞2021』をピックアップする。
コンセプトは、「総合司会・ダウンタウン 2021年、各ジャンルで最も活躍した芸人を表彰する年に一度の“笑い”の祭典!!」「56名の人気芸人が大集合! 全6部門のノミネート芸人を一挙発表!」と、実に単純明快かつ豪華絢爛。ダウンタウンとおぼん・こぼんの初対面なども予告されており、1年を振り返るお祭りムードが期待されていた。
■「ガチンコ」で選ばれた多忙と演技
本家「アカデミー賞」風のセットが組まれ、芸人たちが集う中、MCのダウンタウンが登場。松本人志が話し始めると、芸人たちは振られるのを恐れて目を逸らすが、つかまったマヂカルラブリー・村上、かまいたち・濱家隆一が立て続けにスベってしまった。ダウンタウンがそろうと一見、穏やかに見えてもピリピリした緊張感が漂っているのだろう。
ほどなくナレーションが始まり、「2021年、今年もいろいろあった。いいことも、そうでないことも。だけど、どんなときでも芸人たちは、日本中を笑いで盛り上げるため全力で頑張ってきた。たまには行きすぎて怒られちゃうこともあったけれど、そんな芸人たちを年に一度くらい盛大にねぎらってあげてもいいのではないだろうか」と語ってから番組タイトルコール。芸人をねぎらう……笑いでおいしくしてあげるということか。
最初の「最優秀多忙賞」でノミネートされたのは、マヂカルラブリー、かまいたち、見取り図の3組。それぞれの多忙な1日に密着した映像が流れたが、この3組の忙しさをガチで競うとしたら間違いなく、かまいたち一択だろう。プレゼンターとして柔道金メダリスト・阿部一二三が登場し、トロフィーが贈られたのは、かまいたちだった。つまり、これは「ガチの忙しさを競う賞だった」ということになる。
番組はテンポよく2つ目の「最優秀ドラマ演技賞」へ。浜田雅功のドラマ出演映像を流してひと笑いさせたあと、『ドラゴン桜』のゆりやんレトリィバァ、『オー! マイ・ボス! 恋は別冊で』のミキ・亜生、『#家族募集します』のヒコロヒー、『ドラゴン桜』の鬼越トマホーク・金ちゃんの4人がノミネートされた。しかし、登壇後のコメントで全員がスベってしまう。
プレゼンターに大御所の奥田瑛二が登場して驚かせたが、真骨頂はこのあと。奥田は「最優秀ドラマ演技賞は……浜田雅功」とボケてここまでで一番の笑いを巻き起こした。結局、受賞したのはヒコロヒーで、この賞も「ガチで選んだ」という感が強い。
ただ残念だったのは、TBSのドラマ出演シーンのみだったこと。Praviの宣伝絡みがあるとは言え、現在放送中ではなく放送終了後の賞だけに、これくらいは局の垣根を越えて笑い重視で選んでほしいと思ってしまった。現実的には難しいかもしれないが、この賞はそれくらい笑いの要素が少なかったのは間違いない。
■福男を決めるゲームの美術が出色
3つ目の賞は、1カ月間練習したかくし芸の中から一番を決める「最優秀かくし芸賞」。浜田が「今まで(の賞と)関係あらへんやん!」とツッコミを入れたが、裏を返せば「ここからがこの番組の笑いどころ」ということになる。
かくし芸はそれぞれ、宮下草薙が中国雑技、パンサー・尾形貴弘が「30秒で大豆を何個ストローで移動できるか?」「1分間でブリーフ何枚履けるか?」「1分間で弾けるポップコーン何個キャッチできるか?」の世界記録に挑戦、ダイアンが令和版テーブルクロス引き。プレゼンターに村方乃々佳ちゃんが登場し、宮下草薙が選ばれたが、難易度を考えるとこれもガチで選ばれた感が強い。
4つ目の賞は、今年から来年につながる福男を決める「最優秀福男芸人賞」。芸人たちが体を張って決める賞だけに、スタート前から「これがメインイベント」というムードが漂っていた。
まず休憩中、喫煙所で最後まで煙草を吸っていたマヂカルラブリー・村上が閉じ込められてしまい脱落。小さいドッキリで笑いの助走をつけるスタッフの仕掛けが見事だった。
福男を決める1つ目のゲームは、空中に設置した47コの金ダライが落ちてきた人が“痛いけど勝ち”という「金ダライ宝釣り」。ゆりやんレトリィバァ、オードリー・春日俊彰、宮下草薙・草薙航基、鬼越トマホーク・坂井良多、パンサー・尾形貴弘、Aマッソ・村上、さらば青春の光・森田哲矢、もう中学生、見取り図・盛山晋太郎、FUJIWARA・藤本敏史の10人が金ダライを食らって勝ち抜いた。その間、村上が立つはずだった場所に金ダライが落ちる神がかり的なハプニングもあり、なかなかの盛り上がりだったのではないか。
2つ目のゲームは、あみだ状のパイプから落ちてくる熱々ローションをかぶった人が“熱いけど勝ち”という「顔面で福を受け止めろ 熱々あみだくじ」。春日俊彰と尾形貴弘が「さすが」と思わせる熱々のリアクションを披露して勝ち抜いた。
どちらのゲームもシンプルだが芸人のリアクション力を引き出すものであり、何より美術が出色。そのまま『オールスター感謝祭』で使ってほしいレベルの特別感とバカバカしさがあった。