テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第178回は、19日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『まっちゃんねる』(21:00~23:10)をピックアップする。

「松本人志が地上波でとにかく面白いことを探ってみる実験的バラエティ」というコンセプトの特番で、昨年10月に続く第2弾。今回は昨秋の第1弾で驚きと爆笑をもたらした「女子メンタル」と、新たな派生企画となる「イケメンタル」の2本立てとなった。

「女子メンタル」には、井上咲楽、神田愛花、菊地亜美、鈴木奈々、野呂佳代、浜口京子、ファーストサマーウイカ、丸山桂里奈、「イケメンタル」には木村昴、島太星(NORD)、JOY、高橋克典、武田真治、山田孝之がそれぞれ出演(五十音順)。

山田孝之や高橋克典がどんなネタを繰り出すのか……それだけでもネット上の話題を独占しそうな可能性を感じてしまうが、以下にほぼすべてのネタを挙げながら掘り下げていきたい。

  • 「女子メンタル」で優勝した加藤諒モノマネをする菊地亜美 (C)フジテレビ

■「爆笑してもイエロー」の良きゆるさ

番組開始早々、1本目の「女子メンタル」がスタート。すぐに「制限時間は2時間30分」「笑いの度合いでイエローorレッドカードが出される」「時間内で1人に決まらなかった場合、攻撃ポイントやアグレッシブポイントが高かった者を優勝者とする」「最後まで笑わなかった者がバラエティ女王の称号を獲得」というルールが紹介された。

さらに、松本人志の「まずいね。こんなに面白くなりますか? 撮れ高がよかったのでぜひ見ていただきたい。少々期待を上にしても超えてくる。第3弾はないな。これ以上は無理だと思う」という大絶賛をはさんでスタート。見ているこちらが「松本人志自らそこまでハードルを上げまくっていいの?」と心配になるくらいのコメントに驚かされた。

最初にボケを繰り出したのは、丸山桂里奈。「“よっちゃんイカ”らしきものを参加者に配っていくが、野呂の分だけ“生のイカ”だった」というベタなネタだったが、これを野呂が受け止めてイカを振り回しながら「イカヌンチャク」とボケをつなぐチームプレーを見せた。

続いて、井上が自分のキャラクターを生かして“つけ眉毛”をつけようと提案……したとき、獣神サンダーライガーに扮した野呂が乱入。全身タイツのぽっちゃり体形で笑わせようとしたが不発に終わり、そのまま浜口とスパーリングが始まってしまう。浜口はジャイアントスイングやボストンクラブなどのプロレス技をたたみかけ、笑いなしの戦闘モードで野呂のネタをつぶしてしまった。しかし、この浮きまくる浜口に菊地がクスッとわずかに笑ってしまい、最初のイエローカードを受けてしまう。

菊地は反撃すべく、つけ眉毛を生かした加藤諒の顔マネを乱発。さらに若き日のアントニオ猪木に扮した神田が登場し、ライガーの野呂とパンツを食い込ませるスパーリングを始める。プロレスネタが多いのは、“女子”とのギャップと、動きのある笑いにつなげやすいからなのか。

その後、CMをはさんで、神田提案のほら貝ゲーム、浜口のレギュラー「あるある探検隊」全力モノマネ、ウイカが口いっぱいにタバコの束を吸ってむせる……とネタが次々に飛び交う中、飛脚にふんした浜口が妙な方言を繰り出すと、野呂が「アハハハハ」と爆笑。しかし、「一発レッド」ではなく、イエローカードだった。

この企画に「ガチンコのつぶし合い」というピリピリムードではなく、「お笑い団体戦」という連帯感が漂っているのは、このようなゆるめのジャッジによるのではないか。

■峯岸みなみ級の爆発力は見られず

以下、主な流れとネタを挙げていくと、カードをめくってあだ名をつけていく「なんじゃもんじゃゲーム」で、「モト冬樹」を引いた浜口が「おしゃれ夫婦」。「児嶋一哉」を引いた神田が「(ロッ)ポンギじゃないほう」と毒を吐くが、自ら笑ってしまいイエローカードを受ける。

さらに、鈴木がびんぼっちゃまスタイルの正装で登場するが、これまた自爆でイエローカード……と思いきや、ウイカが鈴木の尻穴付近を押して笑いを誘っていた。なんじゃもんじゃゲームに戻り、ウイカの写真を引いた菊地が「今期張り切りすぎて1人だけ浮いてる女」と悪口で攻めるもウイカは笑わず。井上が乱入して「ミスタービーンのモノマネをしながら泥がついたニンジンとカブを丸かじりする」という荒い芸を披露する。

浜口が鯛のかぶりもので登場しようとするが、頭がぶつかって部屋に入れない。菊地があいみょん風で入ってきてギターを弾いたあとすぐに下がったが、再び加藤諒で登場し、さらに志村けんさんの顔芸を披露。野呂が祭りの法被を着て神輿を探し、適当なものを担いで練り歩く。菊地は「違うのやるから、もう1個見て」と言いながら、結局「何度でも加藤諒です」を繰り返す。野呂はその加藤諒の手をかついで練り歩き、長州力に扮した神田が続き、浜口も踊るというカオス状態に。

ゆりやんレトリィバァのアメリカ星条旗水着を着た丸山が登場。びんぼっちゃまスタイルの鈴木奈々が自転車に乗って登場し、「お尻で後輪を止める」という体を張った芸を2度見せる。すると丸山も挑戦し、そのリアクションで全員が笑いそうになってしまい、松本が「全員アウトにしたろうかな」と言うほど一番の笑いどころとなった。

浜口がリーゼントのツッパリ風コスプレで登場するが、仕掛けながら笑ってしまいイエローカード。最後は「たたいてかぶってジャンケンポン」で、ここまで一触即発ムードを見せてきた菊地とウイカがヤンキーケンカ風の殺気立った攻防を見せ、野呂が唐突にスピードワゴン・小沢のモノマネをぶっ込んで終了のブザーが鳴った。

戦い終えたばかりのメンバーのもとに松本が現れ、「誰が優勝してもおかしくなかったんですが、ギリギリ審議の結果……菊地亜美です」と発表。終わって見れば、ネタの手数こそ多かったものの、イエローカードが菊地、野呂、神田、鈴木、浜口に1枚ずつで「退場者はなし」という結果に消化不良の感が残った。

また、ウイカはスベり気味のネタでも必死に笑いをこらえる顔を見せるなど、番組全体を盛り上げようとする姿勢を見せていたが、もし第3弾があるのなら峯岸みなみ級の攻撃型タレントが必要だろう。