テレビ解説者の木村隆志が、今週注目した"贔屓"のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第15回は、11日(19:00~21:00)に放送された『トコトン掘り下げ隊! 生き物にサンキュー!!』(TBS系)をピックアップする。

同番組は、「生き物の愛らしさだけでなく、特殊能力や驚くべき技なども紹介する知的エンターテインメント」として2014年5月にスタート。今回は、平昌五輪女子フィギュアスケートの金メダリスト、アリーナ・ザギトワ選手が出演する2時間スペシャルだった。

動物番組のトップに君臨する『志村どうぶつ園』(日本テレビ系)の背中を追いかけるべくスタートしてから、まもなく4年になるが、変化・進化はあるのか。

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    『生き物にサンキュー!!』MCの徳井義実(左)と松嶋尚美=次回18日放送の「犬ネコと子どもは超仲良しSP」より (C)TBS

番組開始からわずか半年で内容を激変

TBSの動物番組で思い出されるのは、ウーパールーパーやエリマキトカゲで大ブームを起こした『わくわく動物ランド』(83~92年)と、みのもんたの司会で約16年続いた『どうぶつ奇想天外!』(93~09年)の2つ。ともにクイズ形式だったが、『生き物にサンキュー』は、VTRを連ねるシンプルな作りに徹している。

当初は番組タイトル通り、さまざまな"生き物"をフィーチャーしていたが、半年が過ぎたころから"ペット"にシフトチェンジ。ほぼ犬と猫に絞って放送してきたが、空前の猫ブームを受け、明らかに猫の割合が増えている。この点は犬のコーナーが多い『志村どうぶつ園』とは対照的であり、差別化となっている。

ペットを扱うと必然的に増えるのが、犬猫を飼っているゲストの出演と、視聴者の投稿動画。MCの徳井義実を中心に、出演者たちは、ペットのエピソードをここぞとばかりに語り、親近感を誘っている。今回もパンサー・尾形貴弘の赤ちゃんと柴犬・三九(みく)の初対面シーンが放送されたが、タレントとしては最も好感度の上がりやすい番組と言っていいだろう。

また、視聴者からの投稿動画は、「制作サイドが狙っても撮れない面白さ」と「視聴者参加の一体感」の両面でキラーコンテンツとして機能。実際、一昨年スタートの『超かわいい映像連発! どうぶつピース』(テレビ東京系)、昨年スタートの『もふもふモフモフ』(NHK)は、投稿動画を中心とした細切れの映像で構成されている。

この日のサブ企画は「全国謎ネコ&犬 大調査」だったが、映像のテンポも、カラフルなテロップやイラストを交えた演出も、すべてがポップ一色。脱力感を誘う犬の放尿シーンに、花火のようなモザイクを入れるほどの軽さがあり、当初に掲げた"知的エンターテインメント"の面影はない。

しかし、「看板に偽りあり」と言うことなかれ。「すぐに番組を打ち切らず、時代の流れに応じて内容を変える」という日本テレビの成功パターンと同じだけに、「近年のTBS躍進とも無関係ではないだろう」と感じてしまった。

2020年に向けてアスリート企画連発へ

そして今回のメイン企画、ザギトワ選手にもふれておきたい。番組サイドとしては、「世界中から出演依頼が殺到する中、ダメ元でオファーしたら、まさかのOKだった」というのが正直なところだろう。

当然ながら日本のバラエティ初出演なのだが、ザギトワ選手は予想以上のサービス精神を披露。いきなり五輪と同じI字バランスを決めてドヤ顔を見せたほか、スマホで撮った愛猫・イリースカの写真や、超美男美女ぞろいの家族写真を見せてくれた。

さらに、ベッドや枕、大量のメイク道具、2匹のチンチラを見せ、スタッフがプレゼントしたフットマッサージ器と番組の猫Tシャツもすぐに着てポーズを取るなど、金メダル級の大サービス。この様子なら秋田犬を飼いはじめたあとも、同番組なら取材させてもらえるのではないか。女性スタッフを派遣したことも含め、制作サイドのファインプレーが光る。

もちろん愛猫・イリースカとのエピソードもたっぷり。ザギトワ選手は12歳で親元を離れ、イリースカのみを連れて単身モスクワへ。祖母と暮らしているものの、「モスクワには友達がいないの。イリースカが唯一の友達。週6日練習があって学校には行けないから個別授業を受けていて、だからスケート仲間しかいない」と寂しげに話す姿は、等身大の15歳そのものだった。

同番組は、3月28日にも「オリンピック選手を支えたペットSP」を放送。スピードスケートの金メダリスト・高木菜那選手と愛犬が登場して注目を集めていた。芸能人とペットのセットは、どうしてもビジネスの香りが漂い、好感度狙いがチラついてしまう。現在の視聴者は、それくらい敏感であり、制作サイドの事情を知っているだけに、侮らないほうがいいだろう。

その点、アスリートなら何の問題もない。今年はサッカーワールドカップ、来年はラグビーワールドカップ、再来年には東京オリンピック・パラリンピックが控えているだけに、国内外に旬のスターが目白押し。レジェンドも含め、魅力的な取材対象が多いだけに、看板企画になっていくのではないか。

当番組に限らず他テーマのバラエティも、これからの数年間は「アスリートにどんな企画でゲスト出演してもらうか」が成否の鍵を握るだろう。

来週の贔屓は…レギュラー化まで待ったなしか『山里&マツコ・デトックス』

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『山里&マツコ・デトックス』に出演する(左から)井森美幸、榮倉奈々、マツコ・デラックス、山里亮太、赤江珠緒 (C)TBS

来週放送の番組からピックアップする"贔屓"は、17日(23:56~)に放送される『山里&マツコ・デトックス』(TBS系)。「山里亮太が日ごろ書き溜めている毒をひたすら吐き出す」という超異色のトークバラエティで、昨年10月に放送され、あまりのキレっぷりと爆笑エピソードに、業界内外で「即レギュラー化を!」という声があがるほどだった。

しかも、今回は2週連続放送というから、レギュラー化への布石か、それとも、撮れ高が十分すぎるほどあったのか。どちらにしても、前回以上のヒートアップは間違いないだろう。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。