テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第130回は、12日に放送された日本テレビのバラエティ番組『~第7世代が○○してみた~ お笑いG7サミット』(12:45~13:15 ※関東ローカル、22:30~23:25)をピックアップする。

今月5日にスタートしたばかりの新番組だが、スタート前から全12回の放送であることが明かされ、しかも2回目となる12日は昼夜の1日2回放送と異例尽くめ。各局で第7世代の起用が続いている反面、早くも彼らの真価が問われはじめているだけにこの番組の注目度も高い。

  • 霜降り明星

■番組のエースはぺこぱ・松陰寺か

最初のコーナーは、「ジブリ映画に出てくる料理を再現してみた」。日曜昼とは言え、何ともゆるい企画であり、「笑いにつながるのか?」という不安が募る。

ガンバレルーヤは、『千と千尋の神隠し』のお父さんが食べるプニプニの料理、『天空の城ラピュタ』のラピュタパン、『もののけ姫』のジコ坊の雑炊を忠実に再現。料理が完成したら登場人物になり切って食べるのだが、肝心のアニメ映像がないため「ジブリファン以外ピンとこない」という微妙なムードが画面から伝わってくるようだった。

次のコーナーは、「夢はゴールデンの冠番組! 第7世代のMC力を試してみた」。先週の初回放送に続く第2弾で、『徹子の部屋』のMCになり切って誰か来るか知らない状態から10分間のフリートークを仕切るという企画だ。

前回は霜降り明星・粗品、ガンバレルーヤ・よしこが挑戦し、「いいパターン」と「ダメなパターン」を見せたが、今回はぼる塾・あんりとぺこぱ・松陰寺太勇がMCに挑戦。あんりは原田龍二を相手に「MCを乗っ取られてしまう」「自分の話ばかりしてしまう」「突然好意を匂わせる」、松陰寺は天龍源一郎を相手に「冷静にツッコミのシステムを説明」「困ったら時を戻して軌道修正」という笑いどころをきっちり作っていた。

ただ、笑いのサイズが大きかったのは、やはり松陰寺。互いに言葉を聞き取れない状態ながらもトークを成立させ、最後は天龍から「言ってることはオレと同じくらい分からないけどタイミングはいい」というお墨付きをもらってオチをつけた。この番組のエース格は進行役にまわりがちな霜降り明星ではなく、芸歴の長い松陰寺なのかもしれない。

VTRが終わってスタジオに戻ると、ぼる塾・田辺智加が「私も『田辺の部屋』やりたい。ゲストはKAT-TUNの亀梨くんでお願いします」とはにかんでひと笑い。さらに、よしこが「あんりは私物化してる。MCも全然できてない!」と噛みつくと、あんりも「お前も全然できねえだろ!」と返し、そこから罵倒合戦が続いた。荒い上にオチのないトークだったが、それでも既存バラエティのレギュラーメンバーからは感じられないフレッシュさが魅力として伝わってくる。ここで昼の放送が終了した。

■最大の爆笑は一発ギャグ+おびえた顔

昼の放送から約9時間後、この日2本目がスタート。しかも全国放送の1時間特番だけに、力の入った企画が見られそうだ。

1つ目のコーナーは、「第7世代のツッコミ力を検証してみた」。霜降り明星・粗品、四千頭身・後藤拓実、ぺこぱ・松陰寺、ガンバレルーヤ・まひる、ぼる塾・あんりが同じボケにさまざまなツッコミを入れて競うという。他のメンバーが自由にボケる中、後藤は「脱力ツッコミ」、松陰寺は「否定しないツッコミ」、粗品は「たとえツッコミ」、まひるは「直感的な関西弁ツッコミ」、あんりは「キレのいい一言ツッコミ」を披露。見事に色分けされたツッコミが飛び交う中、まひるが予想外の優勝を果たし、粗品のマネをしながら「粗品に勝った!」とボケて笑わせた。

2つ目のコーナーは、「第7世代で誰が1番涙もろいのか?」。相方をだまして泣かせるというよくある企画なのだが、ぼる塾とぺこぱが失敗したあと、最後にガンバレルーヤが登場。まひるから8年間に渡る同居解消を切り出されたよしこは、わずか40秒で涙をこぼした。

さらに2人は「絶対離れないよ」と抱き合って感動を誘いながらも、「私たち大の男好きですから!」と笑いも忘れない。よしこは続けざまのスタジオトークでも、「一緒に住んでいるから彼氏ができないんじゃなくて、阿佐ヶ谷姉妹さんも(同居を解消して)別々に暮らしてるけど彼氏できてないじゃないですか」と畳みかけて笑いを誘った。同世代が並び立つことで、結果的にガンバレルーヤのバラエティスキルが他番組以上に引き出されている。

3つ目のコーナーは、「火事場のボケ力は出るのかやってみた」。鉄板ギャグを1つも持っていない芸人が極限状態に追い込まれたとき、限界を超えた力を発揮できるのかを検証するという。

選ばれたガンバレルーヤ・まひると四千頭身・都築拓紀は、心霊スポットや椅子バンジーにおびえながら一発ギャグを連発してセンスを見せたが、結局2人とも罰ゲームの椅子バンジーを食らってしまう。一発ギャグとおびえた顔の二段構えで笑わせる構成だけに、この日一番の笑いを生んでいた。

最後のコーナーは、「変顔世界チャンピオンとにらめっこ対決してみた」。イギリスのチャンピオンたちとリモートで対戦し、ガンバレルーヤ・よしこは完敗し、ぺこぱ・シュウペイは空気を読まずに必死に我慢して引き分け、ぼる塾・あんりも完敗した。

アンカーを任されたあんりは、変顔をする前から相手に笑われたあげく、「真顔が一番面白い」という結論に不満タラタラ。「気に食わないですね、この企画。あんな真顔でこっちが大爆笑されると街歩けねえよ。後半、変顔ひとつもしてねえよ。どうすんだよ、このあと電車で帰るのに」とまくしたてて爆笑で番組を締めくくった。

■先輩芸人に吸収されてしまうリスク

昼夜の2本を見て際立っていたのは、ガンバレルーヤのスキル、ぼる塾の瞬発力、粗品の器用さ。なかでも粗品は進行をこなすほか、笑いのお手本を見せて振り役に徹したり、対決コーナーでは「M-1王者として負けない」とあおったりなど八面六臂の活躍を見せていた。せいやも含めた霜降り明星が一歩引いたポジションを取ることで、他のメンバーたちはおいしいところをもらっているのだが、裏を返せば先輩芸人たちのように粗品の魅力を引き出せる存在がまだいないのかもしれない。

彼らはYouTubeチャンネルなどのネットツールで積極的に発信しているが、そこでの伸び伸びとした姿とくらべると、どこか優等生的でハジけていないように見えてしまった。スタッフサイドは彼らを既存バラエティの枠組みにはめ、彼ら自身もそつなくそこにハマれるのだが、それでは鮮度が消えたころ先輩芸人たちに吸収されてしまうのではないか。

実際、ここまでの放送はバラエティではおなじみの企画ばかりであり、オリジナリティは感じられなかった。その意味で当番組はまだ「第7世代のキャラクターを見せる取扱説明書」であり、「ファンを増やすためのプロモーションビデオ」という印象に留まっている。本人もファン層も若い彼らはテレビ業界にとってのキーマンになりうるだけに、今後は「第7世代だからこの企画」というオリジナリティあふれるコーナーが見たいところだ。

最後に1つ願望を書かせてもらうと、第7世代をフィーチャーした番組を見るたびに、「一部コーナーだけでいいからグループコントが見たい」と思ってしまう。演者・作り手両者の都合で難しいのだろうが、各事務所の若手が集うグループコントは、その時期にしか醸し出せないみずみずしい魅力であふれている。

■次の“贔屓”は…「深夜のIPPONグランプリ」バーチャル大喜利SP『ネタパレ』

『ネタパレ』MCの陣内智則(左)と南原清隆

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、17日に放送されるフジテレビ系バラエティ番組『ネタパレ』(毎週金曜23:40~)。

一時は存続も危ぶまれたが、お笑い第7世代の台頭が追い風になり、放送開始から3年が経とうとしている今、ジワジワと存在感を増しつつある。メインが漫才やコントなどのネタであることは変わらないが、このところ注目を集めているのがバーチャル大喜利。『IPPONグランプリ』(フジ系)の「写真で一言」に動きを加えたような企画であり、すでに人気コーナーとして定着している。

次回の放送は「歴代MVPが勢揃い! 真夏のバーチャル大喜利SP」。宮下草薙・草薙航基、ラランド・サーヤ、四千頭身・後藤拓実、GAG・福井俊太郎、ゾフィー・サイトウ ナオキ、ぼる塾・田辺智加、ハナコ・秋山寛貴、インディアンス・田渕章裕の8人が大喜利でしのぎを削る“レア回”と言っていいだろう。