テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第106回は、26日に放送されたABCテレビ・テレビ朝日系バラエティ特番『じもキャラGP~お笑い怪獣と異名さん~』をピックアップする。

「知られざる異名を名付けられ、地元で愛される名物キャラを日本全国で大捜索」というコンセプトの大型特番。事前情報では、「木更津のくっきーが本人と対面」「女子ソフトボール二刀流」「なにわのビリー・ジョエル&大阪の侍」「青森でルパン発見」など、強烈なキャラクターが次々に発掘されそうなムードが漂っている。

MCは素人イジリの最高峰・明石家さんま。日曜夜のさんま特番と言えば、『行列のできる法律相談所』や『誰も知らない明石家さんま』など日本テレビ系のイメージが強いだけに、テレ朝系でどんな姿を見せるのか興味深い。


■各地から牧歌的なキャラをピックアップ

明石家さんま

番組冒頭、日本地図が映され、東北・北海道3人、関東5人、中部4人、関西2人(映像上のミスでのちに3人に増える)、九州6人のじもキャラが登場することが明かされた。

まずはスタッフが熊本で、じもキャラを探すVTRから。1人目は演奏会で「ブラボー」を連発するおじさんで、じっくり掘り下げると思いきや、短いインタビューのみであっさり終わってしまった。テンポよく次々に見せていく構成なのか!?

そのまま熊本で2人目の「熊本のウド鈴木」、3人目の「見た目が面白い画家」、4人目の「プロレス好きのビアホールマン」を発掘したあと、この3組がスタジオに登場。さんまに加えて、関根勤、千原ジュニア、ロバート秋山ら芸人がトークを盛り上げる。

トークが終わるとVTRに戻り、熊本から鹿児島へ移動。5人目の「ツチノコを追う少年」、6人目の「吹上の情熱家」が紹介され、後者がスタジオに登場し、彼の作った“ゴミドレス”のファッションショーが披露された。

続くエリアは中部。スタッフは名古屋で聞き込みを開始し、7人目の「唐揚げブームのパイオニア」、8人目の「ビールを飲む大須のくまさん」が紹介され、2人そろってスタジオに登場した。

さらに名古屋で9人目の「天井落としのツヅキさん」、10人目の「ドラゴンズファンの母」を紹介した後、関東エリアへ移動。東京で11人目の「荒川の二刀流」、宇都宮で12人目の「餃子屋の二刀流」、木更津で13人目の「ラーメン界の麺ターティナー」、14人目の「バームクーヘン界の坂本龍馬」、15人目の「木更津のくっきー」が紹介され、「荒川の二刀流」と「木更津のくっきー」がスタジオに登場した。

ソフトボール少女の投球が千原ジュニアの太ももを直撃したり、木更津のくっきーが本人と共演して白塗りに挑戦したり、映像のバリエーションを見せて、結果的にこの日のハイライトになった。ここまで牧歌的なキャラクターばかりで、毒や危うさを感じさせる人はゼロ。日曜ゴールデンタイムらしいと言えば、そうなのかもしれないが、「インパクトに欠ける」とみなした人もいるのではないか。

■気になってしまう取材エリアの偏り

次は東北・北海道エリアへ向かい、青森で16人目の「青森の清少納言」、秋田で17人目の「十和田湖のルパン」、北海道で18人目の「ガマおばさん」を紹介し、スタジオにガマおばさんが登場。ちなみに十和田湖のルパンは「雪かきが忙しくて収録を欠席した」ようであり、この程度は想定済みだろうが、素人番組の怖さとも言える。

最後の関西エリアでは、大阪で19人目の「大阪のお侍さん」、20人目の「浪花のビリージョエル」、京都で21人目の「カナダから来た裏千家」を紹介し、お侍さんと裏千家がスタジオに登場。最後に、じもキャラNo.1に「熊本のビアホールマン」が選ばれて番組は終了した。

計21人が紹介されたが、どこか物足りなさを感じたのは、「グランプリ」とうたいながら九州は熊本と鹿児島だけ、中部は名古屋だけ、東北は青森と秋田だけ、関西は大阪と京都だけ、中国・四国エリアに至ってはスルーされていたからか。とりわけ「ABCテレビの制作なのに、地元周辺エリアが少なかったのはなぜ?」と感じてしまった。

この番組を見て、「うちのエリアには、もっと面白い人がいるよ」と思った人は少なくないだろう。スタッフが汗をかくスタイルはABCらしさを感じた反面、この程度の取材ならエリアで分けずに放送するか、どこかのエリアに絞ったほうがよかったという感もある。

一般人を軸に据えた番組としては、「2時間30分で21人」という構成もギャンブルだったのではないか。各地のじもキャラたちは、見た目先行の人ばかりでトークが広がらず、大半がほぼ出オチ。その意味では現在、素人イジリで支持されている『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)のような短尺でナレーションベースの構成にするべきだったのかもしれない。

■さんまの引き笑いは最後まで見られず

素人イジリの最高峰・さんまをもってしてもトークが広がらなかったことが、その難しさを物語っている。実際、タイプの異なるキャラクターをスタジオに集めたにもかかわらず、さんまがいつものように、引き笑いすることも、大きく手を叩いてバカウケすることもなかった。

今回のようなVTRベースの番組にするなら、MCはさんまである必要はなかったのかもしれない。とはいえ、さんまの持ち味を生かすべく、スタジオトークベースの番組にするとしても、全国各地のじもキャラを最低30人は集めたいところであり、これも困難だろう。

“『ナニコレ珍百景』の人物版”として見るなら、特番ではなくレギュラーコンテンツ向きの感もあるが、視聴率は5.5%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)に終わってしまい、その可能性は低い。また、「全国の面白い一般人をフィーチャーする」というコンセプトと、「スタッフがドキュメント風に発掘していく」という演出は、時流に合っている反面、「この人、見たことある」が5人もいたのは残念だった。

今ごろ関係者は失意の中にいると思われるが、「じもキャラ」という微妙なネーミングも含めて、練り直しての再チャレンジに期待したい。

■次の“贔屓”は…香取慎吾がフワちゃん、ぺこぱとご対面 『内村カレンの相席どうですか』

『内村カレンの相席どうですか』に出演する(左から)近藤春菜、香取慎吾、内村光良、滝沢カレン=フジテレビ提供

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、2月1日に放送されるフジテレビ系バラエティ特番『内村カレンの相席どうですか』(21:00~23:10)。

18年7月から不定期放送されている“相席”がキーワードのトークバラエティ特番。メインゲストが会いたい人を立て続けにスタジオに呼んでトークを展開していくのだが、進行役を滝沢カレンが務める面白さもあり、各所でオリジナリティを感じさせる。

今回のメインゲストは、香取慎吾、菅野美穂、三浦翔平の3人。香取は、伊藤淳史、フワちゃん、ぺこぱ、ミルクボーイ、八木優希。菅野は、叶姉妹、石田ひかり、星野真里、ギャル曽根。三浦は、田中真弓と相席するという。やはり注目は、地上波バラエティ復帰が進む香取であり、すべての絡みがネット上の話題を集めるのではないか。