放送回数は実に5000回以上。22年にわたり。朝のお茶の間で親しまれてきた『情報プレゼンター とくダネ!』(フジテレビ系)の終了が発表された。このタイミングである理由は、4月の春改編のセールスが始まるからだ。今の『とくダネ!』の提供社にも説明をしなければいけないし、新番組を大体的にアピールするためにもこのタイミングしかない。他局の改編情報が報じられ始めているのも、そういうことだ。

『情報プレゼンター とくダネ!』で司会を務める小倉智昭

始まりがあれば、終わりがある。それは当然のことではあるものの、出演者はもちろん、スタッフも自分が携わる番組は長く続いてほしい、終わらないでほしいと思うし、そのためにプライベートを犠牲にし、本当の意味で命を削っている人もいるだろう。キャスター・小倉智昭氏の「毎朝3時起きで」という発言に驚かれた視聴者もいるかもしれないが、キャスターらいわゆる演者は現場入りが比較的遅いほうで、日付が変わる前から準備をしているスタッフもいるだろう。放送直前の『めざましテレビ』の中でも『とくダネ!』のPRをしているから、8時の前から番組はすでにスタートしているようなものだ。(前日にPR原稿を残して引き継いだり、当日になって差し替えたりとかドタバタが想像される)

番組終了タイミングの意味するもの

さて、ここで注目したいのは"番組終了のタイミング"である。低視聴率にあえぎ、死に体となって終わるよりは、「きれいな引き際で」という選択肢を、フジテレビ上層部、小倉氏本人も考えていたのではないだろうか。ではどんなタイミングが良いのか? その絶好のタイミングは、まさに東京五輪だったのだ。かつての東京五輪で聖火ランナーを経験し、今回も再び聖火ランナーに決まっている小倉氏にスペシャルリポーターを務めてもらう。そして、オリパラが終わった後の2020年9月に勇退。番組開始当初の1999年に思い描くことができるはずのない、美しすぎるほどのできすぎた花道だ。

おそらく同じようなことを考えていた業界の人は多いだろう。東京でオリパラが開かれるという世界的なイベントと、"2020"という響きの良い年。いろんなタイミング、理由付けにピッタリだ。しかし、コロナ禍によってまさかのオリパラ延期、象徴的だったはずの"2020"もそのまま持ち越しに。『とくダネ!』終了も春改編まで持ち越されたという形ではないのか。

こういった大物キャスターや大御所タレントが出演する番組の終了で筆者が思うのは、その出演者の高額なギャラを理由にしてもらいたくないということだ。よくあることだが、改編の2、3カ月くらい前から、「〇〇はギャラが高額すぎて番組ごとリストラ対象」などとネットニュースやスポーツ紙上が騒がしくなる。大体"民放関係者"というクレジットがついていて、筆者もそのグループに属するわけだが、正直なところ、「ブッキングしておいてギャラが高額とか言うの?」という印象だ。もうギャラが払えないというところまできたのなら、内実まで伝えてギャラの交渉をすればいいのではないかと思ってしまう。そういうことを腹を割って話せない間柄で、真に良い仕事ができるのだろうか。しかし、報じられている内容も一部で実際にあることなのだろうとしたうえで、では、これほどまでに高額なギャラを理由とした番組終了や出演者降板が相次ぐ先に、テレビはどうなってしまうのだろうかという疑問がある。テレビは一体どこを目指すのかということだ。

気になる後番組は?

『とくダネ!』には週2で出演中のカズレーザー

民間企業なのだから経費を抑えて、利益を上げるという大原則は分かる。広告収入が縮小していく一方だから仕方ない。しかしながら、そのリストラを断行することによって、その放送局はもとより、業界全体の見え方やイメージはどうなるのだろうか。テレビに未来はないと思われないか。バラエティやドラマの1本あたりの制作費はアマプラ(Amazonプライム・ビデオ)やネトフリ(Netflix)のほうがはるかに潤沢と言われ、これまでであればテレビを目指してきた人たちもそういう方向にシフトしていくのではないか。

と、悲観的な話をするとキリがないが、報道や情報番組をみていくと、まだまだ配信系が追い付けないジャンルもある。また、制作費を存分に突っ込んだからと言って、必ずしも面白いものになるかどうかというのは別次元の話だ。蓄積された番組制作のノウハウもテレビ局ごとにある。テレビの「きれいな引き際」はまだ先だと信じたい。

話が大分逸脱したが、『とくダネ!』の後番組はどのような布陣となるのだろうか。MCはやはり現在『とくダネ!』にスペシャルキャスターとして出演しているカズレーザーだろうか。若い視聴者を狙っていかなければならないから、若手で試すのだろうか。そういう予想する楽しみを持ちつつ、小倉氏の残り2カ月半、何が起こるか分からないから目が離せない! さすがにポロリはないだろうけど。(昭和のノリで締めます締めます)