体の構造と毎日の生活における姿勢が肩こりの症状に関与しているというのであれば、肩こりになりやすい人には何か共通の特徴があるかもしれない。実際に長谷川医師に尋ねてみたところ、「YES」という答えが返ってきた。

「体格的には体が細く、胸郭の厚みがなく、なで肩の方が肩がこりやすく、胸郭が厚くしっかりしている体形の方が肩がこりにくいと言われています」

その理由として、先述の体幹にぶら下がっている肩から腕の重みを支える筋肉が、厚みのある体幹に乗っているほうが安定がしやすく、負担が少ないためと考えられている。一方で筋肉が少なければ、それだけ重みを支えるための負担が増すし、肩がこりやすくなるというわけだ。

「日常生活では、同じ位置で肩を保持し続ける時間が多い方が肩こりになりやすいですね。それと、腕の位置を動かさずに細かい作業を要求される仕事をしておられる方は、広く肩関節を動かす作業をしている方よりも肩こりがひどくなりやすいと言えます」

首を回すストレッチが危険な理由

肩こりでこる筋肉は肩甲骨から脊椎骨につながっているほか、一部頭蓋骨にもつながっているという。こういった繊細な部分に関わっていることもあり、肩こりが悪化すると頭痛などの他の症状を招くケースがある。

そんな肩こりの症状の程度を緩和させるためには、ストレッチが有効な手段として知られている。

肩がこると、なんとなく首を回したストレッチをする人もいるかもしれないが、これはNG。頚椎の骨の中には神経や血管が多くあり、むやみに頚椎を左右や後方へと動かすと、場合によっては症状を悪化させかねない。

長谷川医師は、肩甲骨を前後上下にしっかりと動かすストレッチが効果的だと話す。

「動かしたいのは、主に脊椎と肩甲骨をつなぐ筋肉です。電車のつり革を持つような姿勢まで腕を上げ、肩関節を開いて肘は曲げたままにし、できるだけ後ろへ引っ張るようにすると左右の肩甲骨同士が寄ります」

この状態をキープしたまま、さらにその位置から小刻みに肘を前後に動かしたり、肩甲骨を上下に動かしたりすると、肩甲骨と脊椎をつなぐ筋肉の僧帽筋や菱形筋(りょうけいきん)が収縮する。続いて、その手を前方やや斜め上につき上げ、さらに背中を丸めて脊椎と肩甲骨の間を広げる。この動きによって、先ほど収縮した筋肉が伸びるような感覚を覚えるだろう。

「この動作を仕事や作業の合間といった具合に、定期的(1時間ごとなど)に何度か繰り返し行うとよいでしょう。手を上げるといった動作ができない場合は、腕を下げたままでも、肩甲骨を上げ下げしたり、前後ろに回したりするだけで少しほぐれます。そして、これらのストレッチは、顎を引いた状態で行いましょう」