この「肩甲骨動かしストレッチ」は一定の効果が期待できるが、今ある「こり」に対する対症療法である感は否めない。毎日のQOLを向上させるには、「こり」そのものを生じさせないための対策が不可欠。そのためには、「正しい姿勢で過ごすこと」が肝要になってくる。

「肩こりを起こす原因として考えらえることを、ご自身の生活環境で少し思い浮かべてみてください。例えば、パソコン作業をしている姿勢はいかがでしょうか? パソコン作業を長時間していると、だんだんと顎が上がってきます。顎が上がると頚椎が後ろに反って背中は猫背になってしまうので、できるだけ顎を引くようにしましょう」

ほかにも、「パソコンのモニターの位置とキーボードの位置」や「いすの高さとデスクの高さ」は本当に自分に合っているだろうか。腰や腕の置き場を変えたり、置き場を確保したりするだけで肩こりが改善するケースもあるため、自分自身の作業時の姿勢を工夫するのもいいだろう。

「生活のなかでは、重い鞄はできるだけ片側に負担がかからないよう、リュックなどにした方がよいでしょう。また、腕を前後に振って走るランニングやスイミングなども、肩周囲の筋肉が動かされるため、血流がよくなりすっきりします。走る時間の確保が難しければ、歩くときに少し肘を後ろに引く意識をもって歩くのもよいでしょう。そして、一日の終わりにはゆっくりお風呂につかり、全身のこりをほぐしましょう」

ただ、頸部から背部にかけての痛みが椎間板ヘルニアや変形性頚椎症といった頚椎の疾患や、内臓の疾患由来であることも少なくない。肩こりの症状が続いたり、痛みが悪化したりする場合は、医師の診察を受けるようにしよう。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 長谷川充子(ハセガワ・ミチコ)

整形外科専門医。日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。日本整形外科学会認定スポーツ医
大学病院の整形外科、総合病院の整形外科医長を経て、現在は整形外科クリニックに勤務し、整形外科の診療をしている。 En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。