日本語の基本的なリズムは「七五調」といわれる。川柳・俳句は五七五の17文字。短歌は五七五七七の31文字。演歌や歌謡曲の歌詞も、よく聞いてみると七音と五音を多用している。これは文章も同じで、長い文を書くときは七五調に近づけると読みやすくなる。ただし、厳密に七五調を続けると「都々逸」のようになってしまうので気をつけたい。

ところで、偶然だけど「五七五のリズムで駅名が並ぶ路線がある」とネット上で話題になったことがある。たとえば京浜東北線。浜松町駅から鶴見駅まで音読してみよう。

  • 京浜東北線浜松町~鶴見間の停車駅を七五調のリズムで読んでみよう(日下田氏のTwitterより)

「はままつちょう(五音)」「たまちしながわ(七音)」「おおいまち(五音)」「おおもりかまた(七音)」「かわさきつるみ(七音)」。

たしかに五七五七七のリズムになっている。

この遊びの提唱者はTwitterアカウント「日下田(@higeta)」こと日下田治久氏。公式サイトのプロフィールによると、「うどんと鶏肉、地図と路線図がすき。」とのこと。DTPの会社に勤務しつつ、イラストレーションの仕事もされているそうだ。路線図好きと芸術的センスが発案の源といえそうだ。

日下田氏は他にも、西武新宿線の本川越~新所沢間などを披露。ハッシュタグ「#連続駅五七五七七」を設定したところ、多くの賛同者が現れた。小田急電鉄小田原線の梅ヶ丘~代々木上原間、東京メトロ東西線の東陽町~南行徳間、都営地下鉄大江戸線の六本木~築地市場間、JR飯田線の上市場~相月間、東京メトロ南北線の飯田橋~赤坂見附間など、続々と投稿された。

  • 西武新宿線にもあった五七五七七

  • 長崎電気軌道でも発見

中には「字余り」「字足らず」の例もあるけれど、その残念感がまた楽しい。鉄道事業者や鉄道路線、まして駅には何の落ち度もないというのに、残念扱いとは気の毒すぎる。そしておもしろい。

なお、「もうすぐ山手線新駅ができるため京浜東北線 浜松町~鶴見間が詠めなくなってしまうので、これを機にまた新たに見つけてくださるとうれしいですね」と日下田氏。確かにその通り。いわゆる「品川新駅」はまだ駅名も決まっていないけれど、どんな駅名が入ってもリズムが崩れそうだ。

ただし、五七五七七を「文字」ととらえると字余りになる場合でも、「音」で数えれば融通が利く場合もある。たとえば「はままつちょう」は7文字だけど、「ちょう」は1音または2音で数えられる。同様に「ん」のような「撥音」、「っ」のような「促音」も、前後の音に含めたり独立したりすることで調整可能。駅名もなんとなく五音・七音が多いような気もしてくる。

七五調のリズムは物事を暗記する場合の語呂合わせでも使われている。たとえば春の七草を「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、はるのななくさ」と覚えるように。駅名も七五調だと覚えやすい。もしかしたら、こどもがいつの間にか駅名を暗記してしまう理由も、七五調で覚えやすいからかもしれない。

普段利用している路線にも「連続駅五七五七七」があるかもしれない。忘年会の話題のひとつとして遊んでみよう。