地元の人なら当たり前に知っていても、その土地になじみのない人が知らずに損する事例がある。たとえば都営地下鉄三田線の神保町駅からJR京浜東北線の大森駅へ行く場合、品川駅で乗り換えると、三田駅・田町駅で乗り換えるより122円(IC運賃)も高くなる。その理由は、泉岳寺~品川間が都営地下鉄ではなく、京急電鉄の路線だから。この春から東京で通勤・通学する皆さん、旅行で新幹線の品川駅を利用する皆さんはご注意を。
東京から郊外へ延びる大手私鉄のほとんどが、JR山手線に接続する駅を起点としている。地下鉄に直通する路線でも、境界になる駅は山手線との乗換駅であることが多い。東急電鉄の東横線と田園都市線は渋谷駅、目黒線は目黒駅、池上線は五反田駅。小田急電鉄は新宿駅。西武鉄道は池袋駅と新宿駅。京成電鉄は上野駅。東武鉄道の東上線は池袋駅。同じ東武鉄道でも、伊勢崎線は山手線に到達しない。
京急電鉄の起点となる駅は品川駅で、起点を示すゼロキロポストも品川駅にある。ただし、泉岳寺~品川間も京急電鉄の路線で、都営浅草線との境界は泉岳寺駅である。ここを勘違いして、京急電鉄と都営地下鉄の境目が品川駅だと思ったら、京急電鉄の1区間分の運賃が加算されてびっくり、ということになってしまう。ICカード乗車券を使っているとびっくりもしない。気づかないうちに割高な運賃を差し引かれている。
先の例、都営地下鉄三田線の神保町駅からJR大森駅に行くルートを検証しよう。乗換えが楽なルートは、三田駅で地下鉄同士の都営浅草線に乗り換えて品川駅に行き、広い乗換え改札口とコンコースで京浜東北線ホームに降りるルート。ただし、この場合は泉岳寺~品川間で京急線の初乗り運賃が発生する。
運賃が安いルートは都営地下鉄の三田駅で降りて、地上のJR田町駅に行くルート。こうすれば、途中に京急電鉄の区間は介在しないから、都営地下鉄とJRの運賃だけで済む。とはいえ、このルートは足腰の弱い人や荷物の多い人には少しつらいかもしれない。地下から地上に行くだけでも面倒だし、田町駅ではいったん橋上駅舎に上がり、ホームへ降りる必要がある。上下方向の動線にムダがある。
筆者はこの上下移動を嫌って、割高を承知の上で品川駅乗換えルートにする。しかし、知っていて高い運賃を払う場合は納得できるとして、知らないで乗って、あとから割高と知る場合では、気分的に面白くないと思われる。
そもそも、都営地下鉄の三田駅はJR田町駅近くの地下にある。ここからして、道慣れない人には難易度が高い。違う名前の駅が近いという事例は東京に限らないけれど、乗換駅の選択次第できっぷ代が変わる事例は少ないと思われる。普段このあたりで電車に乗らない人は要注意だろう。
なお、乗換案内サイトやアプリで「運賃の安い順」を指定すると、三田駅・田町駅での乗換えルートを表示してくれる。到着時間順では大手町駅・東京駅乗換えルートや日比谷駅・有楽町駅乗換えルートも表示される。ちなみに、今回の例で都営浅草線ではなく都営三田線の駅を選んだ理由は、都営浅草線各駅の場合、並行するJR線の駅に出たほうが時間的にも運賃的にも有利になってしまい、参考にならないからだ。
路線図や駅の案内表示を見て、なんとなく電車に乗ると損をするかもしれない。普段の行動ルートについて、この機会に乗換案内サイトやアプリで確認してみよう。
余談だけど、このルートはJR線の田町~品川間に新駅ができた場合に、泉岳寺駅との関連性で選択肢が変わるかもしれない。今後どうなるか、興味深い。