トヨタの現場でPDCAを身に付け、動線思考を軸に講演活動や企業コンサルを行う原マサヒコさん。"ムダを無くすプロ"である原さんに、サラリーマンが日々直面する「通勤」や「会議」のムダを解消いただきます。

  • エスカレーターの片側渋滞が無駄だと思いますか?

Q.いつも通勤で駅を通る時に思うのですが、エスカレーターでたまにしか来ない人のために右側を空けておかなきゃならないのは何なのでしょうか?左側に行列ができていて非効率だと思うのですが。

原さんの回答

いやあ、これは本当に社会的な課題ですよね。ずっと昔から言われ続けているけれど、なかなか改善されていない。

エスカレーターは片側を空けて乗る設計ではない

そもそもエスカレーターというのは片側を空けて乗るものではありません。エスカレーター製造会社も「歩くことを想定して作っていない」と主張していて、安全のために歩かないよう呼びかけているのです。

私はメカニック出身なので車でたとえるクセがあるのですが、皆さんは高速道路で渋滞に巻き込まれたことはありますでしょうか。渋滞になると、全ての車線に車が分散しますよね。そうやって全員で足並みを揃えながらノロノロと進んでいきます。

でも、エスカレーターはどうでしょう。どんなに渋滞していようが、どんなに長蛇の列になろうが、“追い越し車線”を常に空けているわけです。これってとても不思議な状況なんですよね。

エスカレーターに乗る人はさまざま

じゃあなぜ、片側を空けて歩くようになっているのでしょうか。ひとつ言えるのは、エスカレーターに乗る人の事情がそれぞれ異なるからです。エスカレーターには次のような人が乗っています。

・駅で「電車に間に合わない」と一秒でも早く急いでいる人
・自分は急がないので、立ち止まって手すりにつかまっている人
・皆が歩いているから、仕方なく歩いている人
・歩かなくて済むなら一歩でも歩きたくない人
・後ろからのプレッシャーが怖くて、仕方なく譲る人

公共の乗り物ですから、当然ながらいろんな人がいるわけです。体力がある人もいれば無い人もいますし、身体的事情から歩くのが困難な人もいるでしょう。かと思えば、ものすごく急いでいる人や、「どけどけ!遅いぞ!」と血の気が多い人がいるのも現実です。

しかし、前述したようにエスカレーター製造会社は「歩くことを想定して作っていない」と言い、駅でも「歩かないで」というポスターを見かけます。特にエスカレーターが長いほど、歩く危険度が増すんですよね。

エスカレーターが長いと歩く危険度が増す

東京には長いエスカレーターの駅がたくさんあります。例えば都営大江戸線の新宿駅。南北線の後楽園駅。千代田線の国会議事堂駅や新御茶ノ水駅。都営大江戸線の六本木駅にいたっては深さ日本一で、地下42.3mもあるそうです。ビルでいうと地下7階に相当するというから驚きですよね。また、千代田線の新御茶ノ水駅は地下鉄駅のエスカレーターとしては日本最長なのだとか。

そんなところで歩いたり走ったりしたら思わぬ事故になりかねません。JRが2013年に掲示したポスターには次のような記述があります。

「エスカレーターで歩行用に片側をあける習慣は、危険な事故につながる場合があります。なぜなら、片側をあけて乗ることのできないお客さまもいるから。エスカレーターは、ステップ上に立ち止まって利用することを前提に設計されています。すべてのお客さまが、安心してエスカレーターに乗れるよう、皆さまのご協力をお願いいたします」

しかし、こういったポスターを貼り続けてもなかなか歩く人は減りません。これ、個人的には段階的に厳しくしていくと良いのではないかと思っています。

エスカレーターの片側渋滞はやめるべき

現在、「ホームドア」は設置されている駅とされていない駅があると思いますが、落ちてしまう人が多い駅を優先的に設置しているはずです。それと同様に、"長いエスカレーターで片側だけ大行列になっている場所"だけでも、優先して手を打つべきと思うのです。

スピーカーからのアナウンスを徹底したり、エスカレーターの乗るところに足跡マークをつけたり、歩く人を注意する監視員を設けたり。

万が一、接触して転倒などの事故がおきたとしたら長さが長いほど被害も大きいはず。後ろから来るかもしれない「ルールを守らない人」の為に、"片側だけの大渋滞"などというはすぐにやめるべきです。

それでも歩いて進もうとする人は、左側で立っている人にぶつかってトラブルになっても文句は言えませんし、右側で立ち止まっている人がいても文句を言ってはいけません。事故やトラブルに遭いたくない人は、ベルトにつかまって大人しく立っているようにしましょう。

筆者プロフィール: 原マサヒコ(はら・まさひこ)

1996年、神奈川トヨタ自動車株式会社に入社し、技術力を競う「技能オリンピック」で最年少優勝。カイゼンのアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」でも2年連続全国大会出場を果たすなどメカニックとして活躍。現在はトヨタの現場ノウハウを伝える書籍の執筆や全国での講演活動に力を入れている。

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