トヨタの現場でPDCAを身に付け、動線思考を軸に講演活動や企業コンサルを行う原マサヒコさん。"ムダを無くすプロ"である原さんに、サラリーマンが日々直面する「通勤」や「会議」のムダを解消いただきます。

  • 朝の混雑でイライラしませんか?(写真:マイナビニュース)

    朝の混雑でイライラしませんか?

Q.朝の通勤時やランチの時に、会社のビルのエレベーターがいつも並んでいて混雑しています。やっと来たと思っても満員で乗れずに通過。とてもイライラするのですが、何か対策はありますか?

原さんの回答

確かに、出勤時や昼食時のエレベーターの混雑というのは、オフィスビルで働く人にとって大きな課題だと思います。

せっかく定時に間に合うようにちゃんと会社に来たというのに、エレベーターの前で大行列が発生していてなかなか乗れない。遅刻しそうになって焦ってしまう。「エレベーターの頭が悪すぎだろ!」とか「エレベーターの速度をもっと上げられないのか!」などと怒りをぶつけたくなるのも分かります。でも、ここは冷静になって考えるべきでしょう。

まずエレベーターの性能というのは専門各社が常に考えて開発を続けています。例えば、時間帯によって何階から何人位が乗るかをAIが予測をして動いたり、入館ゲートでIDをタッチするとどのエレベーターに乗るべきかを教えてくれたり。

ただ、それはあくまで最新のエレベーターに搭載された機能であり、既存のエレベーターを交換するなんてことは容易にできないわけです。つまり、あなた一人の力ではどうにもならない。だとすれば「エレベーターの混雑」という事象に対して、あなたが自分自身でできることを考えていくべきでしょう。

エレベーターの待ち時間にすべきこと

まず方法として挙げられるのは、「エレベーターの待ち時間にすべきこと」を用意しておくということです。毎日同じ時間に乗る場合、どのくらい待つのか予測がつくはずですよね。であれば、その時間に何をするのか、あらかじめ決めておけば良いではないですか。 1分だとしたらLINEで仕事の指示を出す。2分だとしたらメモ帳にアイデアを書いてみる。3分だとしたら経済ニュースをチェックする。そんな風に時間別のTODOを決めておくのです。

「エレベーターの前にある鏡は、待つ時間に感じるストレスが軽減される効果がある」というのは有名な話です。つまり、他に意識がいくようにその時間を過ごせばストレスは減らせるわけです。

別の時間に置き換える

次に挙げられるのは「別の時間に置き換えてしまう」ということ。これは低層階に限った話になりますが、動線を階段に持っていってしまうのです。毎日階段を上がっていくという選択をすれば、「エレベーターを待つ時間」ではなく「トレーニングの時間」に転換させてしまうことができます。

私が整備士として働いていた時、体は丈夫で不健康とは無縁の日々を過ごしていました。しかしホワイトカラーとしてオフィスビルで働くようになってから、体を動かす習慣が皆無になってしまい体の不調も出てくるように。ですから、オフィスまでの道のりを「トレーニングの時間」にしてしまっても良いではないですか。

待つという無駄な時間

そして最後に挙げるのは、「そもそもエレベーターを待たない」ということです。つまり、早く出社して混む前に乗ってしまえばいい。これは私自身、最終的にたどりついた選択肢です。なんでもそうですが、長蛇の列に並んでただひたすら待つというのは、日常の動線として非常によくありません。

エレベーターの場合、混雑がひどい時には3分くらい待ってしまうこともあるでしょう。1日3分エレベーターを待つとして、年間の就業日数が120日だとしたら360分。つまり6時間です。1年のうち6時間もエレベーターを待っていることになります。あなたの人生は、そんなことに費やしていて良いのでしょうか。

「なんでもそうですが」と書きましたが、これはランチタイムで考えてみても同じことが言えるでしょう。オフィス街の飲食店はランチタイムになると大混雑します。そして、並んでいる人をみると疲れた顔をしています。

ランチタイムは"休憩時間"だというのにも関わらず。給料日後の銀行でもそうです。増えたばかりのお金を下ろすために、お金と同じくらい大事な時間を費やすというのは、何だか滑稽にも思えます。大勢が同じタイミングに同じ動線をたどり過ぎなのではないでしょうか。

あらかじめ行く場所が決まっている場合には「そこがいつ混むのか」「いつ空いているのか」は最低限、把握しておくべきです。そして可能な限り空いている時間を狙って行きましょう。

朝は皆が出社する前に出社できないでしょうか。ランチは少し早目の11時台に行くことはできないのでしょうか。ランチタイムを勝手に変えることが会社で禁止されているとしたら、その会社のくだらない決まりを変えることはできないのでしょうか。

月末に銀行のATMに並ばずに済むよう、お金のやりくりをすることはできないでしょうか。そんな根本的なところから考えていくべきだと思います。

執筆者プロフィール : 原マサヒコ(はら・まさひこ)

1996年、神奈川トヨタ自動車株式会社に入社し、技術力を競う「技能オリンピック」で最年少優勝。カイゼンのアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」でも2年連続全国大会出場を果たすなどメカニックとして活躍。現在はトヨタの現場ノウハウを伝える書籍の執筆や全国での講演活動に力を入れている。

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