こんにちは、人事・戦略コンサルタントの松本利明です。私は戦略人事のコンサルタントとして25年以上「働き方や人事」に関するコンサルティングを行い、5万人のリストラと6,500名以上のリーダーの選抜をしてきた『人の「目利き」』と呼ばれています。

最近、驚くことが増えました。本人は「周りに気を使い、慕われ、優秀な俺」と思っているけれど、周囲からは「勘違い野郎」と評価されている人が繁殖しています。特に令和になり、その傾向が顕著になりました。

ややこしいのは「本人は悪気がなく、よかれ」と信じ切っていることです。いわばグレーゾーンの範囲なので周りは指摘しづらい状況なので本人は気付きません。なので、うっかりするとあなたも「悪気のない困ったちゃん」の仲間入りしかけているかもしれません。

本連載では、「悪気のない困ったちゃん」のパターンを知り、そこから抜け出すヒントを解説します。

  • 気遣いセクハラ野郎とは?(写真:マイナビニュース)

    気遣いセクハラ野郎とは?

気遣いセクハラ野郎

「気遣いセクハラ野郎」とは、本人は女性に気を使い、好感度抜群の俺と勘違いしている人です。このご時世、あからさまなセクハラをする人は激減しました。会社にバレたら左遷かクビが待っています。転職しようにも、上司や同僚へインタビューや推薦文を書かせる「リファレンス(退職理由や前職でのパフォーマンスの確認)」という信用調査をされたら一発アウトです。

今の人事はTwitter、Facebook等のSNSの投稿や発言までチェックしています。どこかで「セクハラ野郎だ!」と書かれたらビジネスマン人生は終わりです。ゆえに、セクハラと思われないようにした気遣いが、余計に、悪気がないグレーゾーンのセクハラを生み出すのです。早速例を見てみましょう。

「一言の気遣い」のグレーゾーンの境目はこれだ

この一言をあなたは、これはセクハラだと思いますか?

「デートだったら休んでいいよ」はアウトかセーフか

数多くの社員アンケート調査でよく見かける、「デートだったら休んでいいよ」はアウトか限りなくアウトに近い一言です。仕事が忙しい状況の中、頑張って働いているので、プライベートも大事にしてね、という気遣いでしょうが、受け取る方は「大きなお世話」でしかありません。

休暇取得、有給取得は労働者の権利。いけている上司は「分かった」とだけ言って休暇申請を受理するだけです。余計な気遣いの一言は、ただの余計と知っているのです。

「女性は甘いもの大好きだからね」はアウトかセーフか

「女性は甘いもの大好きだからね」と差し入れする時に言うとアウトです。甘いものが苦手な人もいますし、ダイエットしている人がいるかもしれません。

「女性は……」とまとめて決めつけされることは、イラっとしかしません。ダイエット中の人や、スイーツが苦手な人がいるかもしれないし、スイーツ好きな男子もいます。「この程度のお菓子ごときでご機嫌取ろうとは、随分安くみられたものだ!」と折角の差し入れに罪は全くないのに逆効果になる場面を見たことも少なくありません。

「俺、女性のことを分かっているよ」的な言葉はいらないのです。「お疲れ様、よかったらみんなで食べてね」と主旨だけ伝えるのがスマートです。

「いつも有り難う」とサシ飲みはアウトかセーフか

「いつも有り難う」はOKですが、サシ飲みはグレーより限りなくアウトに近いです。男性側の下心の有無は関係ありません。もし、その場を見られて「デートしている、不倫している」と誰かに思われたら最後です。「ここだけの話~」とどんどん噂に尾ひれがついて広まり、公然の事実となりかねません。こうなったら完全にアウトです。

そもそも、男性社員でも「上司とのサシ飲み」の最後は説教と思われることが9割ですし、若い層でお酒を飲む人の割合は低いです。飲みに誘うなら、複数名。慰労目的なら少し豪華ならランチが無難です。


いかがでしたか。勘違い野郎にならないコツは2つです。1つは「あなたのことは分かっている」という気持ちを言葉にするのを止めましょう。余計な気遣いはかえって誤解を招きます。

もう1つは、半径5mを見渡した視点で見ることです。相手のことしか見えてないので言ったり、できたりすることも、周囲からどう見られる可能性があるかを考えれば、自分を客観視できます。客観視できれば、よほど鈍感でない限り、アウトかセーフを正しく判断できます。

【ポイント】相手のことを気遣う気持ちは全て自分の言い訳と気づくこと

執筆者プロフィール:松本利明(まつもと・としあき)

HRストラテジー代表

外資系大手のコンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパルを得て現職。世界を代表する外資系や日系の大手企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人のリストラと6,500名以上のリーダー選抜・育成に従事した「人の『目利き』」。英国BBC、TBS、日経、AERA等メディア実績多数。 『「いつでも転職できる」は武器になる』(KADOKAWA)などはベストセラー。