投資信託は、運用の専門家に投資を任せられる便利な金融商品。投資信託を利用することで、時間のない忙しい人でも投資を始めることができます。しかし、大切な自分のお金を投じるからには、投資信託でどのようにして利益や損失が出るのかしっかりと理解しておく必要があります。本連載で、投資信託の利益が決まる仕組みを、特に重要な用語とともに確認していきましょう。

投資信託の利益は「売却益」と「分配金」

投資信託(以下、投信)の利益や損失は、どのようにして決まるのでしょうか。一つ目は、売却益(キャピタルゲイン)、または損(キャピタルロス)、二つ目は分配金(インカムゲイン)です。

売却益や損は、投信の価格がどう動くかによって決まります。投信を購入したときより売却する時の価格が上がっていれば、解約することで利益となりますが、反対に、下がっていれば損をします。なお、投信の価格は「基準価額」と呼ばれています。

もう一方の分配金とは、投信の決算が行われるときに投資家に支払われるお金のことです。分配金は、運用成果の一部から支払われているため、分配金が支払われると、投信の資産である「純資産総額」が減り、基準価格が下落します。

ちなみに、分配金が支払われない投資信託もあります。気を付けておきたいのは、分配金は投信の利益の一つですが、分配金をもらったからといって投資したお金が増えるわけではないという点です。投資したお金が増えているかどうかは、あくまで買った時よりも基準価額が上がっているかどうか、そして、分配金も含めた「トータルリターン」を確認して判断しましょう。

「純資産総額」から投資信託をチェックする

投信には数多くの商品がありますが、気になるものがあれば必ず確認しておきたいのが「純資産総額」です。純資産総額とは、その投信が持つ資産総額から運用にかかる手数料などを差し引いたもので、いわゆる、その投信の規模を示すものと言えます。

純資産総額が数百億円や数千億円もあれば、規模の大きな投信です。投信を選ぶ際は、純資産総額の大きさをチェックしてみましょう。規模が大きい投信ほど、多くの投資家から支持を得て選ばれていると判断できるからです。また、純資産総額が順調に増えている投信も運用が安定していると考えられます。

反対に、あまりに規模の小さい投信や、純資産総額が減り続けている投信は、運用が困難になる危険性がありますので気を付けましょう。

また、投信を取引する時の単位を「口(くち)」と言います。投信の資産のうち、自分の持ち分が口数です。投信は、「○○口買う」という買い方より、たとえば、1万円購入した結果、「○○口買えた」という具合に、その時の価格に応じて購入できる口数が変化します。そして、投信の価格である基準価額は、純資産総額を全ての口数で割って計算します。多くの投信の基準価額は、1万口あたり1万円でスタートし、その後の運用結果で変動します。

「騰落率」と「トータルリターン」との違い

投信を購入したら、どれだけ利益が出ているのかはぜひ知りたいですよね。それを知るためには、投信の「騰落率」と「トータルリターン」を見ます。これらは、預金でいうところの「利回り」のようなものです。

まず、騰落率とは、投信の基準価額が一定期間でどれだけ変動したかをパーセントで表しています。前日比や1週間から、1ヶ月、3ヶ月、1年、3年、5年といくつかの期間に分けられており、投信の運用報告書や月次レポートに記載されています。

一方、トータルリターンとは、投信にかかった手数料や受け取った分配金などを含めて計算し、一定期間にどれだけ値上がりしたか、もしくは値下がりしたかを表したものです。 騰落率とトータルリターンの違いは、算出方法の違いだけであり、どちらも対象期間内に投信の価格がどれだけ変動したかを示しています。なお、騰落率よりもトータルリターンのほうが、より実際の利益や損失が明確にわかるため、最近では、トータルリターンが重視される傾向にあるようです。

投信の運用はプロに任せておけますが、その成果は、定期的に発行されるレポートなどでしっかり確認しておきましょう。なお、投信は長期的に安定して成績が出ていることが大切です。1ヶ月や3ヶ月といった短い期間だけで判断するのではなく、3年、5年といった長い目で見るようにしてください。

筆者プロフィール: 武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。