投資信託(以下、投信)を始めるには、まず、銀行や証券会社などで証券口座の開設を行う必要があります。証券口座にはいくつか種類がありますが、実は、どの口座を選択するかによって後々かかる手間が変わってくるのです。

今回は、証券口座にはどのような種類があり、それぞれどのような特徴があるかを解説します。

証券口座の種類は3種類ある

投信や株式投資などを行う証券口座には、まず大きく分けて「特定口座」と「一般口座」の2つがあります。さらに、特定口座は「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2つのタイプに分かれています。つまり、証券口座の種類は3種類ということになります。では、それぞれの口座にはどのような特徴があるのでしょうか。

<特定口座(源泉徴収あり)> 特定口座は、証券会社や銀行が1年間の投信や株の売買による利益や損失がどれだけあったかを計算してくれ、その内容をまとめた「年間取引報告書」も作成してくれます。これだけで納税時の手間は大きく減らすことができますが、さらに、特定口座の中でも「源泉徴収あり」の口座を選ぶと、証券会社や銀行があらかじめ税金を差し引き、投資家に代わって納税してくれます。

そのため、自分で税金の計算や確定申告をする必要はなく、税引き後の利益を受け取ることができるのです。なお、源泉徴収後に別の取引で損失が生じた場合は、源泉徴収額が戻ってくるようになっています。

<特定口座(源泉徴収なし)>

特定口座には、「源泉徴収なし」のタイプもあります。この口座を選択した場合、投資家はいったん税込で利益を受け取り、証券会社や銀行が発行してくれる年間取引報告書をもとに自分で確定申告を行い、納税しなくてはなりません。年間の取引が通算される点は便利ですが、源泉徴収ありの口座と比べると、確定申告の手間が発生することになります。 さらに、複数の証券会社や銀行で証券口座を開設していると、年間取引報告書は会社ごとに送られてきます。そのため、全ての口座の取引記録を見ながら自身で損益や税額を算出しなければいけない点には注意が必要です。

<一般口座>

一方、一般口座では、証券会社などによって口座の1年間の損益は計算されず、年間取引報告書も発行されません。そのため、投資家は会社から送られてくる取引報告書をもとに、自ら全ての口座の損益を計算し、確定申告によって納税を行う必要があります。

口座開設にあたり、どの口座を選択すべきか迷ってしまいますが、投資初心者で、確定申告や納税に不安がある場合は、「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶのが無難と言えます。これなら、手間がかからず、税額の計算間違いを起こす心配もありません。

なお、すでに他の種類で口座を開いてしまっているとしても、口座の種類は後から変更することができますので、現状で不便さを感じているなら変更を検討しても良いでしょう。 ※特定口座の源泉徴収あり、なしの変更は、その年に特定預かりの株式、投信、公社債の譲渡等が発生していない場合に可能。

NISA口座を有効活用しよう

上記3つの口座において投信や株式から利益が出ると、その利益に対して20.315%の税金が発生します(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)。しかし、NISA(少額投資非課税制度)口座を開設して投信や株を購入し、購入代金が年間120万円までの場合、そこから得られた分配金や売却益が最大5年間、非課税になります(最大投資金額は総額600万円)。これまで説明した3つのタイプの口座は、それらの他に「NISA口座」を持つことができるのです。

なお、NISAには、「ジュニアNISA」「つみたてNISA」も合わせた3種類があります。ジュニアNISAの非課税投資金額は年間80万円まで、投資できる期間は5年間で最大投資金額は総額400万円です。こちらは未成年者(0~19歳)を対象とした制度で、子どもの教育資金や就職資金を準備する手立てとして活用することができます。

一方のつみたてNISAは、非課税投資金額が年間40万円まで、投資期間は20年間で、最大投資金額は総額800万円となっています。つみたてNISAは、若い世代の人が将来に向けてコツコツと投資していくのに向いている商品と言えます。

証券口座のまとめ

証券口座には3つの種類があり、そのうち投資初心者には特定口座(源泉徴収あり)が便利ですが、それぞれの口座にはメリット、デメリットがあります。投資に習熟してきた頃、自分にとって使い勝手の良い口座を選ぶのも手でしょう。また、NISAで受けられる非課税の恩恵は大きなものですので、NISA口座も併せて活用できるといいですね。

筆者プロフィール: 武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。