南の島には南の島の事情がある!

本土とは違う独自の風土を持つ沖縄県。沖縄文化の独自性を統計から探してみましょう。

熱くても熱中症死亡者数は全国最少

沖縄県と聞いて本土の人が思い浮かべるのが南国のリゾート地。年間平均気温23.1度は2位鹿児島を5度近く上回る全国1位(1980年~2010年の平年値 全国平均15.2度)。年間真夏日数も96.0日で1位(全国平均51.5日)、年間熱帯夜日数も99.0日で1位(全国平均17.9日)と暑さは日本一。だからといって暑くて暮らしにくいかと言うとそうでもありません。

例えば、年間猛暑日数の0.1日は北海道と並ぶ全国最下位(全国平均5.2日)。沖縄県は北海道並みに猛暑日が少なく、熱中症死亡者数は人口10万人あたり0.29人と全国最少です(2010年 全国平均1.34人)。これは、海からの湿った風が熱気を吹き飛ばし、雲の傘を作ってくれるからで、年間快晴日数8.9日は全国最下位です(全国平均28.4日)。

子沢山でも、大家族暮らしではない

酷寒もなく猛暑もない穏やかな地で過ごす沖縄県民の特徴は"子だくさん"。人口15歳未満の子供の数、合計特殊出生率、小学校児童数、兄弟姉妹数どれも全国1位と少子化とは無縁です。沖縄県と言えば元気な"オバー"も有名で、さぞかし大家族で暮らしているかと思いきや、三世代世帯人数は42位で核家族が10位と、若い世帯が独立して暮らすことが多いようです。

もうひとつ、沖縄県民の有名な特徴が名字で、「比嘉」「金城」「大城」など郷土色豊かな名字が名字数ランキング上位に並んでいます。一方で本土に多い名字は少なく、日本の名字トップ10の「佐藤」「鈴木」「高橋」「田中」「伊藤」「渡辺」「山本」「中村」「小林」「加藤」のうち、「中村」以外は全て全国最下位です。

アイスや魚を食べない理由って?

次に沖縄県民の食生活を見てみましょう。暑いところならではのデータとして、ビール消費量が成人1人あたり年間75.66Lで2位(2009年 全国平均54.40L)、ミネラルウオーター消費量は年間3,992円で1位(2009年 全国平均2,350円)となっています。

しかし、同じく夏のデザートであるアイスクリーム・シャーベット消費量は年間5,369円で最下位(2012年 全国平均7,665円)と意外な結果に。ちまたで言われている「アイスクリームが売れるのは暑くなり始めた頃で、真夏には甘いアイスは売れない」という説を裏付けるような結果です。

食生活にまつわる意外なデータとして魚介類消費量もあげられます。年間24,439gは全国最少(2010年 全国平均45,109グラム)と、海に囲まれた島なのに魚介類を食べません。暖かい沖縄県の海に住む魚は脂身が少なく淡泊なため、焼き魚や刺し身に向かないのが原因のひとつと言われています。

魚介類を食べない沖縄県において唯一の例外がかつおぶし。年間消費量1,774gは全国平均の5.8倍とダントツの1位(2010年 全国平均305g)。かつおぶしは薩摩藩が中国に輸出する際の中継地として沖縄県に入り、薬膳料理などの形で広まったそうで、悠久の歴史が感じられるデータです。

沖縄県と他都道府県の相関図。独自の文化を持っていることが分かる

700以上のランキングから、沖縄県の相関関係を筆者が割り出したのが上の地図です。赤は似ている県、青は正反対の県、黄色はどちらでもない県。九州や四国にオレンジ色があるものの、ほとんどが黄色から黄緑色です。黄色や黄緑は相関関係があまりないことを意味しており、沖縄県がどの県とも似ていない独自の風土を持っていることを裏付けています。

※本文と写真は関係ありません

筆者プロフィール : 横道 文也(よこみち ふみや)

統計サイト「都道府県別統計とランキングで見る県民性」主宰。様々なデータを都道府県という切り口から分析し、新たな「おむつとビール」を探すデータマイナー。時系列でデータを分析する「年次統計」や歴史年表を分析する「年表マニア」などのデータサイトも運営。