元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな確率は『100%』です。

先日、こんな新聞記事を見かけました。

「電化製品関係の仕事をされている方と話したとき、ドキッとすることがあった。

『機能がいろいろついている製品を買いたいというお客さんがよくいるのですが、機能がつく分故障しやすいということがわかっているのですかね』

思わずうなずいてしまった。たしかに1つの機能につき1/10で故障するとした場合、機能が10あれば10/10で故障することになる」

一瞬、ほんの一瞬だけ「うむ」と思ってしまいましたが、聡明なみなさんなら、もうお気づきでしょうか。「無茶苦茶なことを言っている」と。確率の計算は、一見正しく見えるような論理でも、誤りであることがあります。

モノを購入するときに、何らかの確率を考慮して購入するか否かを選択するような場合、正しい知識がないと間違った買い物をしてしまうかもしれません。お金を使うときは、正しい確率の計算ができないといけないのです。

この新聞の内容では、電化製品が100%故障することになっています。1/10で故障するというそもそもの故障確率が高いということもありますが、そんなに故障するものなのでしょうか。故障する確率1/10の機能が10なので、1/10×10という計算をされたのだと思います。

正しい計算は、故障しない確率を計算し、それを1から引くことで求められます。つまり、機能1が故障する確率は1/10なので、故障しない確率は9/10です。機能1も機能2も故障しない確率は、9/10×9/10です。機能3も故障しない確率は、9/10×9/10×9/10です。

こうやって、9/10を10回掛けると、0.3486…となります。すべての機能が故障しない確率は、34.9%となります。逆に、1つでも故障する確率は、1―0.3486で、65.1%となります。ぜんぜん、100%ではないわけです。

携帯ゲームで当たる確率は?

こういった計算は、携帯ゲームのいわゆる“ガチャ”にも使えます。携帯ゲームには、課金して、ゲーム上のアイテムがもらえる(ただのデータですが)仕組みがあります。何が当たるかわからないので、欲しいものが出てくるまで、何度も引き続けます。

レアなアイテムは(ただのデータです)、なかなか出てきません。提供している会社の情報を見ると、出現確率1%とか0.1%といった低確率に設定されています。かといって、100回やれば必ず当たるとか1,000回しようとか考えて挑戦しても当たりません。

ぼくが子供の頃にやっていたような普通の駄菓子屋のカプセルトイ(モノがもらえます)は、こういった計算になりません。100個の中に当たりがあるとき、100回やれば必ず当たります。デジタルとの違いは、やればやるほど、ハズレが減っていくということでしょうか。

デジタルは、ハズレの数が不変です。毎回1/100に挑戦しなければいけません。駄菓子屋のカプセルトイは、1/100から1/99、1/98とどんどん当たる確率が上がっていきます。2つを混同すると、あなたは誤った選択をすることになります。だから、見かけ上の数値に騙されないように、正しい確率を把握して、お金の使い方を決められるようにしましょう。

でも、元気に生きている

今日、芸人の同期(じゃパン西日本)と話をしていたら、アルバイトの休憩時間の話になりました。彼は、アルバイトのタイムカードの履歴をぼくに見せながら「今日は10時から11時まで休憩した」と話したのですが、タイムカードを見ると、10時から11時59分まで休憩していました。11時59分を11時とみなしていたのです。

彼は、きっと確率もとてつもなく間違えるし、借金とかもいっぱいあると思います。毎週のぼくのこの記事も全く理解できないそうです。でも、元気に生きている。元気に生きているけれど、間違った確率の計算をして、損をしないように生きてほしいです。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら