元国税職員さんきゅう倉田です。好きな控除は「青色申告特別控除」です。

働き方の多様化で、独立して会社員からフリーランスになった方は以前より増えたように感じます。フリーランスになったばかりの頃は、みなさん不安と期待でいっぱいです。

一人でやっていけるのかな、税金とかどうなるのかな、でも単価が上がって収入は増えるな、自由な時間もできるし上司に理不尽に怒られることもなくなるななどと考えるでしょう。

新人フリーランスたちは不安を解消するために先発フリーランスに質問をします。今回は、新人フリーランスによく相談を受けるという音声さん(スタジオやロケでピンマイクをつけてくれたり、演者の音声を管理したりする人)に話を聞きました

フリーになって7年目の音声さん(以下Aさん)は自身で6回ほど確定申告をしています。メイクやカメラのアシスタントなど仕事で接点のあるフリーランスから質問を受けることがあるそうです。一番多いのは、

どこまでレシートを取ってるんですか?

フリーランスになったばかりだと、経費の扱いをどうしたらいいか分かりません。何が経費になるのかわからないし、経費にするためには何したらいいか分からないし、経費が多いと何が良いのかも分からない。

だから、どんな支払いのレシートを保管すべきなのかも分からない。

Aさんは「とりあえず、全部取っておけばいいんじゃないかな。私はとりあえず取っておいて後から確定申告の時に仕分けてるよ」と助言するそうです。

よく分からずに捨ててしまうのは悪手です。Aさんは賢いですね。

先日、久しぶりに同期の芸人と飲みに行きましたが、みんな店員さんから受け取ったレシートを丁寧に折りたたんで財布にしまっていました。現在、芸歴13年目。芸歴10年目くらいまではそのような光景を見ることはほとんどなかった。ぼくの周囲の芸人の意識も向上しています。

Aさんはレシートの補完についてのこんな話を新人フリーランスによくするそうです。

「私の知り合いのフリーランス3年目の子はすでに確定申告を2回してるんだけど、領収証もレシートも1枚も取っておいてなくて、何も調べることもせず、収入だけ申告してたくさん納税したらしい。流石におかしいと気付いて、3回目は同業者と一緒に税務署に行って確定申告するって言ってたよ」

億劫に感じて調べることをせず、不適切な申告を行って損をすることは多々あります。自分だけで判断できないのなら、同業者とともに確定申告の会場に行くのもよいですね。

こんな質問もあるそうです。

確定申告ってなんですか?

おそらく、自分ではまだ何も調べていない段階。質問をする側にも知識が必要です。0からではなく、少し勉強してから質問する方が効率的です。本を買う必要はないけれど、2~3時間インターネットで調べて勉強しましょう。

どこで申告したらいいんですか?

これも何も調べてない段階ですね。

いつ出すんですか?

調べましょう。

どうやって申告してるんですか? e-taxですか?

少し調べたようです。紙で申告するのがよいのか、e-taxがよいのか分かりづらいですよね。個人的にも国税庁的にもe-taxを推奨します。この機会にマイナンバーカードを取得しましょう。

収入ってどこまで入れるんですか? 源泉所得税ってなんですか?

これは調べ方が難しい。当然の疑問だと思います。Aさんの知人で支払調書をくれなかった会社からの報酬は収入に含めなくていいと思っていた60代のカメラマンのおじさんがいます。おじさんは10年で3回税務調査を受けました。

多い。そんなに調査を受けることはありません。きっと、申告内容から何度調査に来ても結果が出ると判断されたのでしょう。

正しく申告しないとこのような弊害もあります。

質問をしてくる人はどんな人?

「20代前半で、一人暮らしの女の子が多いです。結婚して子どもがいるような男の人は聞いてこない。テレビ業界の若い女の子の中には目先の収入欲しさにフリーになった子が多いので、その後のこととかあんまり考えてないですね。周りからフリーになればいいじゃん、と勧められることも多いです。でも、フリーになって仕事はくれるけど税金のこととか教えてくれるわけじゃないんで」

Aさんがフリーランスになってからやったことは?

「周りに聞いたし、自分で調べました。どこからどこまで経費なのか、インターネットで検索して調べました。家賃、光熱費は◯◯%まで入れていいらしいとか。買った靴の代金も経費に入れてるんですけど、これは仕事用のトレッキングシューズだからと説明できるようなものだけ入れるようにしてます。同業者が実家に帰った時の飛行機代も経費にしてるって言ってて、それはダメなんじゃないかなと思いました」

新たにフリーランスとなった20代前半の一人暮らしのみなさん。収入の増加に浮かれる前に、経費のこと、税金のこと、確定申告のこと、将来の貯蓄のことを考えて合理的にお金を使うようにしましょう。

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