元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな言葉は「行為計算の否認」です。

あけましておめでとうございます。

昨年は、吉本興業の芸人にとって、激動の1年でした。一般に報道されている情報によると、今後のタレントと事務所の契約方法が大きく変わるようです。いままで曖昧だった契約内容を明確にし、タレントと企業が直接取引きする「直営業」のルールを定めて、反社会的勢力との接触を防止し、適正な納税を促します。

ぼくが思うのは、吉本興業だけが非難を受けて、不公平だということです。「闇営業問題」のときは、パーティの会場となった渋谷のホテルの名前がテレビに出ることはありませんでしたし、桜を見る会に反社会的勢力がいることがわかっても、関係者が謹慎したり事務所を退職したりした話は聞きません。

反社会的勢力との付き合いは絶対にあってはならないことですが、みなさんの周りにも反社会的勢力がいる可能性があって、周りにいるということは、警察に見つかっていない存在です。警察の捜査力でも見つけられないような人たちを、一般人が見分けられるのでしょうか。取引をする前に、企業は与信調査や反社チェックを行いますが、それですぐに反社会的勢力だとわかるなら、とっくに警察に逮捕されているのではないでしょうか。

積極的に反社会的勢力と付き合えば厳しく罰せられるべきですが、分からずに取引した場合にも同様に扱うのは酷だと思うのです。

  • ※クイズ仲間のしみけんさんに描いていただいたものをアレンジしました。 @avshimiken

所属事務所の批判をするタレント

吉本興業に関する問題があったとき、どういうつもりか、SNSに火に油を注ぐような投稿をするタレントが散見されました。「自分もこういう目にあった」「こういうところがよくない」「○○なんて嘘だ」そういった内容で、批判していたのです。

所属事務所は、タレントにとって取引先です。お互いに納得がいかなければ、取引しなければいい。そして、タレント側は、多くの場合、仕事をもらっている立場です。自分の批判をSNSで発信するような人に仕事を与えようとは思いません。それが分からず、今までの恩も忘れて、中傷する。それで事務所のイメージが悪くなったら、タレント全員が損をしてしまいます。なんて愚かなんでしょう。

その中で特に酷かったのが、単独ライブのギャラが少ない、という発言です。

ライブは儲からない

お笑いに限らず、ライブというのは、利益を出すのが難しいビジネスです。渋谷の吉本の劇場であれば、平日は15時くらいから23時まで、お笑いを楽しむことができますが、お客が10人程度になることもしばしばあります。それでも、スタッフさんの数はいつもどおりですし、音響や照明の環境も抜群です。しっかりとしたチケットも発行され、もぎりの方もおり、楽屋も整っています。

だから、赤字のライブがたくさんあります。それでも、損失をタレントが負うことはありません。すべて、劇場を運営する会社が負担してくれています。 しかし、それを理解せずに、自分の単独ライブのギャラが少なかったと数年前の話を持ち出して、非難するタレントがいたのです。ギャラが少なくて嫌なら、ライブの前にギャラの金額を話し合えばいいのであって、確認を行った自分にも責任があるはずです。瑕疵があるのに、それを理解できず、弁解できない場所で流布するなんて、造反、謀反です。

逆に、ライブのお客が少なかったときには、損失を負担したのでしょうか。「今日は、お客さんが少なかったですね。自分もお金出しますよ」と言ったのでしょうか。利益が出ているときだけ、分け前を要求し、赤字のときは押し付ける。そんな自己中心的で野蛮で恣意的なタレントが、今後も取引をしてもらえるとは思えません。

たくさんの出来事があって、タレントには悩みもありますが、話が高度でついていけない者が大勢います。でも、結局、ワンチームです。一緒に仕事をしていく仲間です。事務所は、世間の批判にさらされる中、タレントのことを考えたしくみ作りをしてくれています。だから、タレント自身も正確な情報と知識を身につけて、誤解のないようにしてほしいと思います。

さんきゅう倉田

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