元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな省庁は「国税庁」です。

新宿の純喫茶で、店主が豆を焙煎したというエチオピアのコーヒーを飲んでいたら、隣にいたタレントと思われる男性とマネージャーらしき男性の会話が聞こえてきました。

マネージャー「どうして名刺持ってないの?仕事くれそうな人に会ったら、名前覚えてもらわないと」
タレント「タレントなんで、挨拶すればそれでいいかなって」
マネージャー「みんな、毎日たくさんの人と会うんだから、挨拶一回でお前の名前なんか覚えられないんだよ」
タレント「自分は、それなりに顔と名前が売れてます。名刺なんか用意しなくても大丈夫ですよ。無名な人が無名な人と交換するもんでしょう、名刺は」
マネージャー「馬鹿ッ 孫さんだって柳井さんだって、名刺持ってんだぞッ」

ぼくは吉本興業に所属しています。

今年は、タレント界に大きな変化が起きそうです。新しい働き方を考えなければいけません。お笑いは金に替えるのが難しいので、自ら仕事を取る必要があります。でも、お笑いの能力と営業の能力はリンクしないので、面白い芸人に仕事があるとは限りません。

これは、とても残念なことです。

ぼくがデビューした10年前、最初に仲良くなった9年上の先輩は、「よしもとはなんにもしてくれへんで」といつもぼやいていました。

当たり前です。仕事は自分で取ってくるものです。誰かが仕事を持ってきてくれるのをただ待っているなんて、甘えです。もし仕事を持ってきてもらったら、深く感謝しなければいけません。

仕事を取ろうと思ったら、まずは、他人が自分に仕事の依頼をできるような窓口を作る必要があります。Twitterのダイレクトメッセージを開放したり、Facebookを更新したり、ホームページにメールアドレスを載せたりすれば、連絡のハードルは下がります。

また、一緒に仕事ができそうな人と出会う場に出席することもあるでしょう。そういう場合に、挨拶をして「Twitter見てください」とか言っても、ほとんど効果はありません。だって、一回で名前なんて覚えられないから。

ぼくも何回挨拶しても「ラッキー倉田?」と呼ばれることがあります。

一期一会を大切にし、ふと気になったときに検索してもらうためには、名刺を配るとよいと思います。

でも、「タレントが名刺なんて」と考える人もたくさんいます。ぼくだって、8年くらい前はそう思っていました。

でも、今はそういう時代ではありません。

宴席やイベントで会って、その場でネタを見てもらうわけにはいかない。名刺を渡せば、相手の名刺がもらえ、連絡先もわかります。すぐに名前を忘れられても、イベントの司会などが必要なときに存在を思い出して、名刺を見返してくれるかもしれません。

喫茶店で、事務所の力で定期的に仕事がもらえていそうな勘違いした20代前半のファッションセンスが微塵もないタレントは

「自分は、それなりに顔と名前が売れてます。名刺なんか用意しなくても大丈夫ですよ。無名な人が無名な人と交換するもんでしょう、名刺は」

と言っていました。

ぼくは、そのタレントの顔を携帯や壁の鏡を駆使して確認しましたが、全く知りませんでした。中高生に人気の人なのかもしれません。聞になって調べたのですが、孫正義さんも柳井正さんも名刺を持っているそうです。

あれだけの有名人で、ビジネスを成功させた人でも、自分の役職や名前を伝える道具を持っています。このタレントがどんなに有名でも、孫さんや柳さんほど有名ではないでしょう。驕りがすぎる。

名刺を配ることが“ださい”とでも思っているんでしょうか。配って損をしないのなら配るべきです。損をすると思うのなら、その損と仕事が増えない損失とを比較するべきです。

取引する相手との出会いを大切にして、できることをすべてやれば、仕事を取ってくることがいかに難しいことか分かります。「事務所は何もしてくれない」と思ったら、「自分が何をしているか」考えてみるのはどうでしょうか。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。

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