本連載の第246回では「仕事が暇なときの対応次第で残業は増減する」という話をお伝えしました。今回は定時で帰るために意識を変えることの有効性についてお話します。

定時で帰れない理由のひとつに「定時で帰らなくても別に困らない状況」があるのは確かです。しかし、これを逆手に取り、「定時後に予定を入れる」ことで意図的に「絶対に定時で帰らなければならない状況」を作り出す方法があります。この方法は、特に若手ビジネスパーソンが仕事とプライベートのバランスを保ちながらキャリアを築いていく上で非常に有効です。それに関して、以下では4つの切り口から説明します。

残業が当たり前の風潮に挑もう

いまだに職場によっては、残業があたり前という風潮が根強く残っているところがあります。このような職場では、定時で帰ることは時として「やる気がない」とみなされがちです。しかし、敢えてこの風潮に挑むことは自分の時間を守り、仕事以外の人生を豊かにする第一歩です。定時後に趣味の時間を確保する、スポーツジムに通う、オンラインコースで学びを深めるなど、自分の成長や健康、幸福に投資する時間を持つことは、長期的に見て仕事のパフォーマンス向上にもつながります。

その一方、残業が当たり前の風潮の中で、定時後に予定を入れることが必ずしも現実的ではないという意見もあります。特に繁忙期やプロジェクトの締め切りが迫っている時期には、定時で帰ることが難しくなることがあります。また、定時で帰ることが「やる気がない」とみなされる職場文化では、キャリアアップにも影響を与えかねません。

仕事の繁忙期やプロジェクトの期限には柔軟に対応する必要があります。重要なのは、繁忙期が終わった後に、適切に休息を取ることを計画することです。また、成果を出しつつ効率的に働く方法を上司や同僚と共有することで、定時退社への理解を深めることができます。

時間管理スキルを向上させよう

定時後に予定を入れることで、自然と時間管理スキルが向上します。このスキルは、ビジネスパーソンとして非常に重要な能力の一つです。時間に追われる中で仕事を効率的に進める方法を見つけ出し、優先順位をつけてタスクを処理する力は、仕事の成果を大きく左右します。また、時間に対する意識が変わることで、ムダな会議や雑務を減らす工夫も生まれやすくなります。

しかし、時間管理スキルを向上させることが仕事の効率化につながるという考え方に対して、効率化だけが仕事の質を保証するわけではないという反論があります。創造性や深い思考が必要なタスクでは、時間をかけてじっくり取り組むことが求められる場合があり、単に時間内に終わらせることを目指すことが、質の低下を招く可能性もあります。

そのため、タスクに必要な時間を正確に見積もり、質の高い成果を出すために十分な時間を確保することが重要です。それには時間管理ツールを使って仕事の進捗を視覚化し、優先順位を定めることが有効です。効率化はあくまで手段であり、最終的な目的は高品質な成果を出すことであるべきです。

社外のコミュニティに触れる機会を持とう

定時後の予定を趣味や勉強会など、社外のコミュニティで過ごすことは、異業種の人々との交流を生み出し、視野を広げる大きな機会となります。このような交流は、新しいアイデアや刺激を仕事に取り入れるきっかけとなり、自分だけでは思いつかなかった解決策やビジネスチャンスをもたらすこともあります。

しかし、こうした主張に対しては、仕事とプライベートの境界があいまいになり、結果として疲労が蓄積する恐れがあるという反対意見もあります。また、趣味や社外活動に多くの時間を割くことで、仕事に対する集中力やモチベーションが低下する可能性も指摘されます。

活動を選ぶ際には、自分にとって有意義なものを選び、仕事とのバランスを考えることが重要です。また、活動から得た学びや経験を仕事に活かすことで、仕事への貢献度を高めることができます。

ワークライフバランスを実現しよう

最も重要なのは、定時後に予定を入れることでワークライフバランスを実現できる点です。仕事だけでなく、プライベートな時間も大切にすることで、精神的な充実感や幸福感を得ることができます。仕事のストレスから離れてリフレッシュすることで、翌日の仕事へのモチベーション向上にもつながります。

その一方、ワークライフバランスの改善を目指す中で、定時後に予定を入れることがストレスの原因になることもあります。予定を詰め込みすぎると、仕事の後の活動が義務感に変わり、リラックスする時間が減少することもあります。また、個人の体力や家庭の状況によっては、定時後に予定を入れることが現実的ではない場合もあります。

定時後の予定を入れる際には、自分自身の体力とリカバリーの必要性を考慮することが大切です。すべての日に予定を入れるのではなく、適度な休息の日を設けることで、過度なストレスを防ぎます。また、予定は「しなければならない」ではなく、「したい」と感じるものに限定することで、プレッシャーを軽減します。

定時で帰るためには、仕事の効率化だけでなく、プライベートの時間を大切にするという意識の転換が必要です。定時後に予定を入れることは、仕事とプライベートの充実を両立させるための実践的な方法です。この習慣を身につけることで、ビジネスパーソンとしてだけでなく、個人としても成長することができるでしょう。時間は有限です。仕事だけでなく、自分自身や大切な人との時間を大切にして、充実した人生を送りましょう。