本連載の第217回では「コスパの高い働き方に不可欠な3つの考え方」という話をお伝えしました。今回は「会議にかかるコスト」についてお話します。

あなたは一日にどれだけの会議に参加していますか。多い方では出社から退社まで、ほぼ会議に出続けているという方もいるでしょう。会議に出ると仕事をした気になりますが、よく考えると「会議に出ること」=「仕事をしている」ということにはなりません。自分が参加する会議が、昔からの慣習でなんとなくやっているというだけであれば、実はその会議はやらなくても何も困らないかもしれませんし、むしろやらない方が、コストが浮くのでやめた方がよいかもしれません。

「え、会議にコストがかかるの?」と疑問に思われた方もいるでしょう。そうです、会議には「人件費」というコストがかかっているのです。コスト(費用)と呼ぶ以上、もちろん定量的に算出できます。それでは、会議にかかる人件費を算出してみましょう。算出式は次のとおりです。

会議にかかる人件費=参加者の人件費平均時間単価 × 参加者の人数 × 会議の時間

参加者の年収が以下のとおりだったとします。
課長: 700万円、係長: 500万円、平社員: 400万円

ある部署で行われている、週に1回2時間の定例会に課長1名、係長3名、平社員15名の合計19名が参加していたとして、年間の平均出社日数が250日、平均勤務時間を8時間とすると参加者の人件費平均単価は、

(700万円×1名)+(500万円×3名)+(400万円×15名)÷19人÷250日÷8時間
と計算でき、その結果は約2,158円になります。

そのため、会議にかかる人件費=2,158円 × 19名 × 2時間
となり、これを計算すると1回の定例会には82,000円の人件費がかかっていると算出されます。

さらに、週次での会議ということなので年間52週間の内、お盆と年末年始の休みを考慮して50回、開催していたとすると、82,000円を50倍した410万円が1年間で、この会議のためだけにかかっているということになります。つまり、平社員1名の年収と同じくらいの費用を定例会だけにかけているのですね。

それだけの価値が、その会議に本当にあるのかどうかを今一度、見直してみるとよいかもしれません。

なお、会社が人を雇い続けるのに負担する金額は、年収に加えて会社負担分の社会保険料やオフィス賃料、水道光熱費、通信費、交通費、各種福利厚生費などがあるので、会議にかかる人件費は実際にはさらに膨らみます。

さて、会議にかかる人件費を算出してみて、「会議の成果にコストが見合っていないのではないか」と判断したら、どのように対応すればよいのでしょうか。

その際には、以下のステップで検討します。

1. その会議自体をなくせないか?

言うまでもないことですが、会議のコストを最も減らせるのはその会議自体をやめてしまうことです。とはいっても、実際になくすとなると「いやいや、なくなると困る」という人は多いでしょう。その場合には、会議をなくすと「誰が」「なぜ」「何に困るのか」というのを具体的に掘り下げましょう。もし、それで曖昧な理由しか出てこないのでしたら一度、テスト的にやめてみて、本当に困るのかどうかを検証するのも手です。

2. 会議の頻度を下げられないか?

会議そのものをなくすことはできなかったとしても、会議の開催頻度を減らすことはできるケースもあるでしょう。週次で開催しているのであれば隔週や月次にすれば、その会議にかかるコストはそれだけで半分、或いは4分の1に減らすことができます。年間400万円の人件費を200万や100万円に減らせるのであれば、大いに意味がありますね。

3. 会議の時間を短くできないか?

現状、会議の時間が2時間であれば1時間へ、現状が1時間であれば30分へと減らせないかを検討してみましょう。予め設定された会議時間が長すぎると、ついダラダラと話してしまうことがあるので、思い切って短くすることで要点を明確にして有意義な内容になる効果も見込めます。

4. 会議の人数を絞れないか?

また、会議の人数が多い場合には、人数を減らせないかと考えてみてもよいでしょう。特に、毎回発言しない人がいる場合には、会議に参加してもらうより他の仕事をしていてもらった方が組織全体として生産性が上がるので、会議への出席を控えてもらうのがよいかもしれません。もし、その人にも会議の内容を知っておいてもらう必要があるのであれば、会議後に議事録をシェアすれば十分です。

5. 会議の人件費単価を下げられないか?

この手は少々トリッキーではありますが、会議参加者の人数はそのままに、会議の人件費単価を下げるという方法もあります。現在の参加者にマネージャークラスが多く参加している場合に、内容によっては平社員レベルでも十分対応できるのであれば、そちらに移管してしまう方が、会議コストが下がります。本当に今の参加者の役職でなければ対応できないのかどうか、今一度見直してみましょう。

以上、会議コストの算出方法と、コストの下げ方の考え方をお伝えいたしました。ぜひご自身の職場の会議コストを算出の上、効率化をしてみましょう。