本連載の第173回)では「メール対応に時間、かけすぎていませんか」という話をお伝えしました。今回はテーマをがらりと変えて、今流行りのDAO(分散型自律組織)での働き方についてご紹介します。

DAOという言葉を耳にしたことはありますか。これはブロックチェーンをベースにしたweb3という概念に含まれる、全く新しい組織形態として世の中に認知され始めているものです。なお、DAOとは"Decentralized Autonomous Organization"の頭文字を繋いだもので、日本語では「分散型自律組織」と呼ばれています。

先日の岸田内閣の所信表明演説でもweb3サービスの利用拡大に向けた取り組みを進めるという話があったことを踏まえるとDAOという形態の組織は、これから日本社会に広まっていくことが十分に予想されます。ぜひ、今のうちからDAOについての理解を深めておきましょう。

DAOとはどのような組織なのか

DAOは「分散型」で「自律」した組織ということですが、それは何を意味するのでしょうか。以下、ひとつずつ見ていきます。

従来の組織の多くは「分散型」ではなく「中央集権型」です。株式会社や地方自治体、或いは学校なども社長や知事、校長やその周囲など少数の人に権力が集中しているので、後者に該当します。それに対して「分散型」であるとは、権力が一握りの人たちに集中するのではなく個々人に分散している状態で、重要な意思決定は基本的に組織を構成する皆で行うことになります。

次に「自律」についてです。株式会社など従来の組織では「社員が何をすべきか、何を達成すべきか」は上司から部下に「指示」という形で伝えられ、社員はそれを遂行します。もちろん、社員がある程度の裁量を持って動くこともありますが、あくまでも上司が監督責任を持つ以上は何らかの制限があるはずです。翻って「自律」した組織では、人々は誰かの指示に従って動くのではなく、自分の意思で能動的に動きます。

これら2つの特徴を持つDAOという組織形態なんて、うまく機能するのかと疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。しかし、実際にDAOは存在しますし、全てではありませんが組織として上手く機能しているところもあります。

その最たるものがビットコインです。ビットコインはどこかの国や企業が中央集権的に管理しているのではなく、世界中に分散しているマイナーたちが報酬を得るために自律的に活動することによって取引データの信頼性が確保されるような仕組みになっています。

DAOでは実際にどのように働いているのか

私はPFP(Profile Picture、Twitterなどのアイコンに使われる画像)のNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)を作成・運営しているNinja DAOというところに所属しています。所属といっても、何か正式な手続きを経たわけではなく、Discordというコミュニケーションツール上で仲間と共にやり取りしているだけです。

そこでクリエイターやマーケター、エンジニア等の仲間と共にプロジェクトの遂行に関与しています。仲間といっても実際に会ったことはおろか、Zoomなどで顔を見せ合って話したこともないので本名や年齢、本業、住んでいるところなどの個人情報についてはお互いに全く知りません。それでも仕事を一緒に進める上では全く何の支障もありません。

DAOの中では、それぞれ固有のスキルを持った人たちが自然発生的にチームを組んで、目的を達成するために協業します。メンバー間に上下関係は一切なく、他の人に「お願い」をすることはあっても「指示」することはありません。もちろん、人事評価とも無縁です。

そんな環境でどうやって協業できるのか不思議がる人もいるでしょう。確かに指示命令系統が厳格に機能している株式会社で働いている人からしたら、幻想のように感じるかもしれません。

私がDAOで共に働く仲間は皆、その道のプロです。自分が任されたことについては責任を持って期限内に成果を出すことが求められますし、実際に成果を出し続けています。特にコアメンバーの大半は経営者や個人事業主が占めているということもあるので、指示がなくても自分から動くという行動様式が身についているのもあるでしょう。

つまり、メンバー全員が自分の得意技を発揮して、自分の仕事を全うするために自ら動いているのです。中央集権的でなく、指示命令系統がなくても、皆がのびのびと仕事をしながら共通の目的を達成するという、この働き方は非常に興味深いものですし、従来型の組織にとっても参考になることが多いのではないでしょうか。

近い将来、DAOで働く人たちは増えていくものと思われます。それによって、同じ目的意識を持った人同士が自然と集まり、得意なスキルを活かして自由に仕事をして目的を達成するという働き方が主流になるかもしれません。ぜひ、DAOについてアンテナを立てて情報収取してみてください。