本連載の第166回では「部下の主体性を存分に引き出すための3ステップ」という話をお伝えしました。今回は問題解決におけるスピードの重要性と、スピードを上げる方法についてお話します。

問題に直面した際、会議に会議を重ねて時間をかけて話し合ったり、それほど重要ではない些細な問題まで上役の決裁を取っていたりする職場、ありませんか。もし、問題の解決策を見出して対策を打つまでに半年や一年などの期間がかかってしまうようでしたら、それは遅すぎるかもしれません。

既にご存知のとおり、多くの業界でビジネスを取り巻く環境変化のスピードが加速度的に上昇しています。ここ最近だけでもウクライナ戦争の勃発、資源高、半導体の供給不足、歴史的な水準の円高、コロナ第7波、中国のゼロコロナ政策による物流停滞など、挙げればきりがありません。

日々、これだけ目まぐるしく環境変化が起きている中で、目の前の問題について熟慮を重ねて完璧な対策を練ろうとしても、それにあまりに時間がかってしまっては、対策の前提となる環境そのものが変化してしまい思うような効果を上げられないでしょう。それどころか、下手をすると逆効果になるリスクさえあります。

それでは、問題解決のスピードを上げるにはどうしたらよいでしょうか。ここではそのための方法を3つご紹介します。

1. まずは仮説を立てよう

何か問題が生じた際に、とりあえず情報収集から始める人がいます。収集すべき情報の目星が最初からついていれば問題ありませんが、皆目見当もつかないような場合にはいきなり情報収集するのは効率が悪すぎます。なぜなら、あてずっぽうに情報を集めようとしても、どこから何の情報をどれだけ集めたらよいかが分からないからです。そのような状況では本来不要な情報まで収集してしまったり、いつまでも延々と情報収集しているだけで一向に先に進めなくなったりします。

問題が発生時、真っ先にすべきなのは仮説を立てることです。その問題がなぜ発生したのか、どこにどれだけ影響を及ぼすのかといった仮説を立てて、それを検証することです。経験や知識に裏打ちされた仮説は必ずしも100%正しいというわけではありませんが、ある程度の精度があることが一般的です。そこで、まずは仮説を幾つか立てて、有力なものから順に情報を集めて検証していきましょう。たとえ最初の仮説を検証して誤っていることが分かっても、そこから必ず何かしらの示唆を得ることができるはずです。その示唆を基に仮説をブラシュアップしたり、他の仮説の中から有望なものを選択したりすることができるはずです。

なお、仮説を立てることに時間をかけるのでは本末転倒になってしまうので、仮説は短時間で立てて、それを素早く検証することが大事です。

2. 仮説の誤りは潔く認めよう

「自分の仮説が正しいことを証明したい」という思いから、仮説が誤っていることを受け入れられない人があります。そうすると、その仮説の是非を検証をするために情報収集したはずなのに、仮説が誤っていることを示唆する情報が集まったときに「それは情報が偏っているのではないか」「情報が古いんじゃないか」などと言って、自分の仮説が正しいことを示す他の情報を探そうとする人がいます。

しかし、それではいつまで経っても先に進めません。また、さらに厄介なのが仮説を立証する情報だけを使用し、反証する情報を無視しようとすることです。これではもはや「仮説ありき」になってしまい、検証でも何でもなくなってしまい、仮説の有効性が疑われます。

仮説を検証する際には謙虚な気持ちを忘れずに、反証する情報があったら素直に謝りを認めて修正したり、他の仮説に切り替えたりしましょう。

3. 走りながら修正しよう

仮説を立てて検証できたとしても、それが100%うまくいくと言い切れることは殆どないでしょう。しかし現実には、どれだけ検証できても「それで本当にうまくいくのか」という疑問を呈する人はいます。そのような疑問の全てに完璧な答えを出そうとしても時間がかかり過ぎてしまい、問題の解決が遅れてしまいます。そうしているうちにも環境がさらに変わってしまい対策を打って期待できる効果が減少してしまいかねません。

そこで、ある程度上手くいく見込みが立った段階で、問題の対策を実行に移すことをお勧めします。机上の論理だけでは気が付かないことでも、実際にやってみることで初めて分かるということも多々あります。

とはいえやはり失敗するリスクが気になるということでしたら、最初は対象範囲を絞ったり、期間を区切ったりしてリスクを小さく抑えた上で対策を実行してみることをお勧めします。それで何か問題が見つかれば修正を施してアップデートし、それをもって対象範囲を拡大していけばよいでしょう。

以上、見てきたように仮説を立てて検証し、実行しながら修正していくという進め方を取り入れることで、時々刻々と変わりゆく環境に取り残されることなく、スピーディーに問題解決を図ることができます。是非、ご自身の職場でも試してみてください。