本連載の第11回では「プレゼン資料は『如何に書かないか』を考えよう」と題し、プレゼンの資料作成を目的にするのではなく、プレゼン自体を成功させるための準備の仕方についてお話しました。今回は当日のプレゼン自体と後日のフォローに焦点を当てて、成功させるためのポイントをお伝えします。

事前のプレゼン準備がしっかりできたら、次はいよいよプレゼン本番。いくら準備が完璧でも本番で失敗してしまっては元も子もないので、ここはなんとしても成功させたいところですね。

確固たる自信を持って話そう

プレゼン慣れしていない方の中には、プレゼン本番になると緊張でガチガチに固まってしまうという方もいるのではないでしょうか?

緊張をほぐすには「深呼吸をするとよい」などのテクニックが紹介されている記事を見かけることもありますが、やはり「場数を踏むこと」に勝るものはないでしょう。そのため、場数を踏んで慣れるまでの間は緊張するのが当たり前なのだと認識して、いっそのこと「緊張していますが何か?」と開き直ってしまいましょう。

加えて、緊張しているかどうかにかかわらず、プレゼンでは「自信を持って」話してください。それが無理なら「自信を持っているように見えるように」話すのでも結構です。

その理由をご理解いただくために、以下のケースをお読みください。

ケース1
あなたは今、今度の連休に友人と海外旅行に出かける予定を立てており、とある旅行代理店のカウンターに座っています。カウンターの向かい側にいる担当者との簡単な挨拶を済ませ、本題に入りました。

あなた「今度の連休に職場の同僚2人と海外旅行に行こうと思っています。ビーチリゾートでのんびり過ごせて、ショッピングが楽しめて、食事も美味しいところがいいのですが、ちょうどよいツアーはありますか?」

担当者Aの回答
「そうですね……。そのようなご要望の場合はハワイかグアム、サイパンをお勧めすることになっているのですが、私はどちらも行ったことがないので、お客様が本当に楽しめるかと言われるとちょっとわからなくて……。あ、でも一応、このようなプランがありますがいかがでしょうか?」

担当者Bの回答
「はい、それでしたらハワイかグアム、サイパンへのツアーがお勧めです。いずれもエメラルドグリーンの海を眺めながら、白い砂浜のビーチで優雅にお過ごしいただけますし、お洒落なショッピングモールや南国の雰囲気漂う素敵なレストランが充実していて、お買い物もお食事も皆さまにご満足いただいています。滞在期間とご予算などに応じて、さらにお客様に合った詳細なプランをご紹介いたします」

担当者AとB、どちらの場合にもっと話が聞きたくなったでしょうか? プレゼンターがプレゼンの内容に自信を持たずに話すということは、聞き手の立場に立ってみると、担当者Aと同じように聞こえてしまうということです。どんなに入念な準備をしてきていても、開始と同時にプレゼンが失敗してしまうのは目に見えていますね。

どんなに緊張していても不安があっても、プレゼンターはプレゼン本番になったら「自信を持って話す」こと。このことはプレゼン成功のための鉄則であり、それが貴重な時間を割いていただいた聞き手に対する最低限のマナーでもあると思います。

始まったら用意してきたストーリーは捨ててよし

プレゼンの流れを事前に考え、何度もシミュレーションしてくることは素晴らしい心がけですが、本番ではそれに固執してはなりません。時として、プレゼンターが自分の用意してきた進め方を堅持するあまり、聞き手の質問に雑な対応をしたり、多くの聞き手が疑問を持っていそうな表情を浮かべていても見て見ぬふりをしたりすることがあります。このような対応は自らを窮地に追い込むのも同然の行為と言わざるを得ません。

プレゼンターがどれほど準備をして、流れや詳細なストーリーを考えてきたとしても、それは聞き手には関係のないことです。プレゼンの主役はあくまでも聞き手、ということです。

では、こちらについてもケースで見てみましょう。

ケース2
先ほどの旅行代理店での会話の続きです。担当者によるツアーの説明の最中に、あなたが気になったことを質問しました。

あなた「ハワイもグアムもサイパンもよさそうですね。でも、定番以外のところの情報も教えてもらえませんか? パラオやフィジー、バリ島もテレビの旅番組で観て気になっているのですが……」

担当者Aの回答
「パラオ、フィジー、バリ島ですか……。ビーチリゾート、ショッピング、お食事の3つをお楽しみいただきたいお客様には、ハワイ、グアム、サイパンの3カ所へのツアーををご案内するよう教わっているので、まずはこちらのご案内をお聞きください」

担当者Bの回答
「はい、どちらもご案内している3カ所に引けを取らない人気リゾート地ですね。当店ではいずれもツアーの扱いがございます。まずパラオですが、海については今挙げていただいた中で最も美しいと評判で、ダイビングやシュノーケリングをされる方には大変人気があります。一方で優雅に過ごせるようなビーチの数が少ないのと、ショッピングを楽しむには物足りないという感想も多くございます。お食事につきましては……」

担当者AとBの回答、どちらに好感が持てたでしょうか? どちらの担当者も最初に案内するツアーはマニュアル等で決まっていたはずですが、担当者Aはその流れを半ば強引に進めようとして聞き手の要望を無下にした一方で、担当者Bは聞き手の要望に柔軟に対応しています。

あくまでも聞き手が主役であるという意識を持ち、準備してきたストーリーに固執することなく臨機応変に対応することは、プレゼンの成功に不可欠です。

プレゼンが終わっても気を抜いてはならない

事前準備をしっかり行い、本番当日も自信を持ってプレゼンを行い、聞き手の立場に立って柔軟な対応を心がけた甲斐があり、プレゼンが無事に終わりました。ようやくプレッシャーから解放されたと胸をなでおろされるかもしれませんが、そこで油断してはなりません。プレゼンの内容に協力的な姿勢を取ってくれた方に感謝を伝えたり、プレゼン中に怪訝な表情をしたままの方や何も発言されなかった方に話を聞いたりして、後から個別にフォローを入れるとよいでしょう。

重要なプレゼンであればあるほど、事後フォローをしっかりやって、トラブルの芽を事前に摘むことが大事になります。例えばプロジェクトの承認を得るためのプレゼンであれば、協力を要請する各部署の役員の表向きの承認は得られたとしても、内容や進め方に対して快く思っていない方がいれば、不安要素として残ってしまいます。そのような方を放置すると、忘れた頃に足をすくわれるかもしれません。そうならないためにも、プレゼン後には個別にコンタクトして、その方の意見や懸念等に耳を傾けつつ、誠意を持って丁寧に説明を行い、心からの協力を取り付けるのです。

このフォローの重要性をご理解いただくために、ケースで見ていきましょう。

ケース3
旅行代理店での担当者のやり取りの末、あなたはハワイのツアーを申し込みました。そして出発の3日前に担当者からメールが届きました。

担当者Aのメールの一部
「ご出発まであと3日と近くなって参りましたが、ご体調はいかがでしょうか? 楽しい旅をお過ごしください」

担当者Bのメールの一部
「ご出発まであと3日と近くなって参りましたが、ご体調はいかがでしょうか? ご滞在期間は晴天が続き、気温も22~30度という予報が出ておりますので、ビーチでの優雅なひと時を存分にお楽しみいただけるかと存じます。また、お客様はワインがお好きと伺っておりましたが、ご滞在期間中にハワイ・フード&ワイン・フェスティバルという催しが開催される予定です。きっとご旅行をさらに盛り上げる機会になるかと存じますので、ご興味がおありでしたら、ぜひご参加ください」

どちらも同じ3日前に届いたメールですが、担当者Aは定型文、担当者Bはお客のことを考えて自分で書いた文章です。ツアーの内容や価格が同一であれば、担当者Bのようなメールを受け取った人のほうが、担当者Aのようなメールを受け取った人より、この旅行代理店のリピーターになりそうですね。

プレゼンが終わった後にしっかりフォローを入れるのはひと手間かかりますが、それを補って余りあるほどのメリットがあります。特に相手との関係が重要であり、さらに長期間続くのであればなおさらです。プレゼン後も気を抜かずにフォローを怠らないようにしましょう。

さて、ここまででプレゼン自体および後日のフォローのポイントをお伝えしてきました。本稿は「成果を上げながら定時で帰る仕事術」という趣旨との兼ね合いでは、「定時で帰る」という要素より「成果を上げる」という要素に偏ってはいますが、着実に成果を上げることは、定時帰りを達成する上で避けては通れないということで、ご理解いただけましたら幸いです。

筆者プロフィール: 相原秀哉(あいはら ひでや)

株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役
慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。