本連載の第10回では「データの集計・分析をスマートにこなせるようになろう」と題し、データの集計や分析の作業を効率化する方法をお伝えしました。今回はこのデータ集計結果や、プロジェクトの報告などで行うプレゼンを効率的・効果的に行うための心得と準備についてお伝えします。

これから始める取り組みについて他部署の協力を取り付けるためのプレゼン、全社を挙げたアイディアコンテストのプレゼン、クライアントへの提案プレゼン等、規模や目的は様々ですが、会社では日常的にプレゼンが行われているのではないでしょうか。

そしてプレゼンに使う資料を用意するために膨大な時間と労力をかけている方も少なくないのではないでしょうか。そこで、今回はプレゼンを行うための心得と準備に焦点を当てて効率化する方法をお伝えします。

最も重要なのは資料ではなくプレゼンそのもの

特に重要なプレゼンとなると、失敗したくない一心から大量の資料を作成してしまう方をよく見かけます。資料を沢山用意しておくとプレゼンターとしては安心できるかもしれませんが、プレゼンの成否とは全く無関係にしか思えない場合が多々あります。

それどころか、スライドが多過ぎて予定時間内に消化しきれず時間切れになってしまうケースや、スライド内に情報を詰め込み過ぎて非常に見づらいケースなど、却ってプレゼンの質を損なっている残念なケースが多々あります。

このようなことが起こるのは、プレゼンターが「作成した資料を説明するのがプレゼンである」という認識を持っていることに起因するのではないかと推察します。本来、プレゼンで使用する資料とは「プレゼンの効果を上げるために使用するもの」という位置づけのはずです。あくまでも「プレゼンが主、資料が副」ということです。

そのため、本来は資料がなくてもプレゼンは成立します。その前提に立った上でプレゼンの効果を高めるために資料を用意すべきかどうかを判断し、用意すべきと判断したら最低限の資料を見繕うという順番で検討を進めるクセをつけましょう。

事前情報を整理しよう

資料がなくてもプレゼンが成立するからといっても、プレゼンに向けた準備が不要というわけではありません。事前にしっかり準備をすることはプレゼンを成功に導くために不可欠です。

そのためにまずやるべきなのは、プレゼンの目的、相手、環境といった情報を整理することです。まず目的においては「そもそもプレゼンを通して達成したいこと」を明確にします。例えば「新商品のアイディアを会社に採用してもらう」や「プロジェクト予算の追加を承認してもらう」、「部署間の情報共有の円滑化策についてフィードバックをもらう」など、できる限り明快な目的を設定しましょう。

次に相手ですが、予め決まっていなければ目的達成のために必要な方を選定し、召集する必要があります。また、予め決まっているか否かに関わらずプレゼン相手を分析しておくことをお勧めします。例えば「各部署から出席する10名の部長の内、7名は既に取り組みの内容についてご理解いただいているが残りの3名はそうではないので、取り組みの背景や意義、特に該当の3部署への影響とサポート体制について厚めに説明した方がよいだろう」といった具合に考えます。

環境についてはプレゼンを行う会議室の広さや雰囲気、空調、机や椅子の数や配置、プロジェクターやモニターの有無と画面の大きさ・明るさ・明瞭さ等について事前にチェックしておくとよいでしょう。なお、プレゼンターと聞く側の距離があきすぎると集中して聞いてもらえない場合がありますし、反対に近すぎると圧迫感があるので目的と相手に合わせた程よい距離を想定しておきましょう。

プレゼンの流れとメッセージを決めよう

事前情報を整理したら、それを基にして当日のプレゼンの流れを決めます。目的を達成するために何をどの順番で話すべきかを考えるのです。

それは例えば

「問題提起」→「解決策提示」→「協力要請」

というシンプルなステップの流れや、

「背景説明」→「課題説明」→「原因説明」→「施策候補説明」→「費用対効果説明」→「質疑応答」→「施策採用是非問いかけ」

のように少々込み入ったものなど、目的と相手に合わせて設計します。

その上で、ステップごとに伝えるべき内容を入れていきます。例えば「問題提起」→「解決策提示」→「協力要請」の流れならば「各営業担当者が顧客や案件の情報を抱え込んでおり、同一のクライアントに異なる担当者が知らずにアプローチしてしまい、クレームが頻発している」→「顧客管理と案件管理の一元化に向けた営業支援ツールの導入を行いたい」→「ツールの要件を決めるために各担当者にヒアリングをさせてもらいたい」といった内容が入ります。

なお、その際に口頭だけで内容が相手に十分伝わるのであれば資料は不要ですし、より説得力を増す必要があって、そのために絵や図、グラフなどの視覚情報が効果的だと判断すれば資料を作成します。ただし、先ほどもお伝えしたとおり資料はあくまでも補足ツールですので、作成する場合でも必要最低限の情報に留めましょう。そして、ぱっと見て内容が理解できるように各スライド内に情報を詰め込み過ぎず、「1スライドにつき1メッセージ」という原則を守っていただくと効果的です。

今回はプレゼンを効率的・効果的に成功させるための心得と準備に焦点を当ててお話しましたが、いかがでしたでしょうか。最初からやみくもに資料作成に時間をかけるのではなく、事前情報の整理や流れとメッセージを考える部分を徹底することで、プレゼンの成功確率を上げるとともに時間の節約を実現できます。なお、次回はプレゼン本番とその後のフォローについてお伝えしますので、そちらもぜひご一読いただけますと幸いです。

著者プロフィール:相原秀哉(あいはら ひでや)

株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役
慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。