いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、立川のレストラン「ベースボール」をご紹介。

  • スポーツファン大喜びのレストラン「ベースボール」(立川)

「楽しいパーティーは ベースボール」とは……?

立川の北口を歩いていたら、MEGAドン・キホーテ裏の「立川通り」沿いに変わったお店を見つけたんですよ。変わったというか、存在感ありすぎというか。

  • 「ベースボール」のフォントも気分

なにせ店名が「ベースボール」で、看板には「楽しいパーティーは ベースボール」とか書かれているのです(ちなみにフォントもベースボールっぽい)。つまりはパーティー仕様ですか?

  • 徹底的な野球仕様

視線を横に移してみれば、「スポーツ大好き!大集合!! プロスポーツ選手も多数ご来店!!」との表記もあり、その下には野球のユニフォームがかけられています。あの……恥ずかしながら「スポーツ大好き!」じゃないし、ましてや野球にも疎いんですが、お邪魔してみてもいいですかね? だって、気になっちゃうじゃないですか。そりゃー気になりますとも。あと少しでお昼という時間だったから、おなかもすいてたし。

  • ランチの看板もクセが強すぎ

それにしても、「本日のランチ」と書かれた看板の情報量がすごい。いちばん上の「独身定食」ってなんです? 独身じゃないんですけど、頼めますかね? とか思っていたら、下のほうには「横峯さくらちゃんステーキ」などという謎メニューも。「ビーフステーキ」といえば牛肉のステーキ。では「横峯さくらちゃんステーキ」といえば……などと余計なツッコミはしますまい。

ともあれ他のメニューも(ダイナミックな文字の勢いもあって)気になるし、入ってみるしかないですね。ちょっと怖いけど。

  • 予想以上に広い店内

足を踏み入れると、ちょうど外に出ようとしていた様子の女性店員さんが「いらっしゃいませ」と明るく声をかけてくれました。しかも外には出ず店内に戻り、「こちらのお席へどうぞ」と店内を見渡せる特等席に案内してくれるという親切さ。ホスピタリティが行き届いてるなあ。

席についてみると、目の前の店内がとても広くてビックリです。あとからお聞きしたら200席もあるらしく、そりゃー「楽しいパーティーは ベースボール」と謳いたくもなりますわな。

  • おすすめメニューのアピール度も強い

ところで、なにをいただこうかな? 「独身定食」が頼めるか聞いてみようかな……と思っていたところ、メニューを持ってきてくださった初老の女性が有無をいわさぬ勢いで「はい、本日のおすすめは牛スジのお鍋と和牛のカルビ焼き肉です」。

リズム感満点の口調だったので「独身定食頼めます?」なんて聞きづらく(小心かよ)、勢いにまかされるまま「じゃあ、カルビ焼き肉でお願いします」と、「宮崎和牛カルビ焼き肉 期間限定価格 監督おすすめ第2弾 甘くて柔らかい和牛です お肉は皆を笑顔にさせてくれます リピーター続々!! 美味しいお肉で乾杯」などなど、やはり情報量満載のそれをお願いしたのでした。

ただ、押しが強いとはいっても嫌な印象はなく、基本的にはどの店員さんも人当たりがとてもいい感じ。その振る舞いにも店内の雰囲気にも昔のレストランを思い出させるところがあり、不思議と落ち着けます。

  • 野球関連グッズがたくさん

ちなみに店内数カ所にあるテレビモニターでは、当然のことながら野球が流れていました。ユニフォームやサインボール、選手のサイン色紙などがいたるところに飾られているので、たしかにファンにはこたえられないでしょうね。

  • まずはここから

やがて男性の店員さんが「はい、これからいろいろ出てきますので」と気になることばを発しつつ、箸とサラダ、青菜のおひたしを持ってきてくださいました。ほどなく、えのきがたっぷり入ったコンソメスープも加わります。その取り合わせはたしかに「いろいろ」な感じ……というよりミスマッチでもありますけれど、サラダは新鮮で、コンソメスープの仕上げも上品、おひたしも懐かしい味わいです。昭和50年創業だそうですが、なるほど当時からの伝統を守り通しているんですね。

  • ボリューム満点の「宮崎和牛カルビ焼肉」

その後にお目見えした「宮崎和牛カルビ焼き肉」も、キャベツ、赤ピーマン、もやしの上に肉がたっぷり乗っています。濃いめの味つけだし、ライスとの相性も抜群。いまどきっぽくはないかもしれないけれど、いい意味で昭和のレストランらしさが感じられます。

  • ディスタンスも文句なし

食べている最中にもどんどんお客さんが入ってきたのですが、スペースが広いので無理なくディスタンスをとることが可能。みなさん、ゆったりとくつろいでいることがわかります。たしかに、職場の近くにこういうお店があれば通っちゃうでしょうね。メニューは多いし値段も手ごろ、おいしくて感じもいいのですから。

  • かわいい「64円券」

ところでお勘定の際、「これ11枚で700円のお食事ができますので」と、お釣りと一緒に「64円券」と書かれた水色のチケットをいただきました。そのためにはあと10回通わなければなりませんが、いずれにしてもサービス旺盛。

駅から遠くないとはいえ、決して人通りは多くない通り沿い。にもかかわらず客足が絶えない理由が、なんとなく理解できる気がしたのでした。

立川に用事があったら、またお邪魔してみよう。そしてそのときは、「独身定食」にチャレンジしてみることにしよう。

●ベースボール
住所:東京都立川市曙町2-31-15
営業時間:11:30〜22:00(ランチ11:30〜14:00)
定休日:年末年始、夏季休暇