洋画を吹き替えるのって、かなりセンスが問われると思いませんか?

……という唐突な問いで始まった今回のレビュー、タイトルをご覧いただければ僕の言っている意味もわかっていただけると思うのですが、もう、なんというか、タイトルの勝利ですよね、完全に。

負けた、と思いましたもん。 DVDをセットして画面に「密林ガール」って出てきたときに、「あ、これは笑い死ぬな」と思いましたもん。 それぐらいインパクトが強かった今回の珍DVD、改めてご紹介をば。

その名もずばり、『密林ガール』!

パッケージの無駄な疾走感! 既に「何かが間違っている」雰囲気がぷんぷん漂っています

原題は「SHANDRA:THE JUNGLE GIRL」なので、「密林ガール」というのはまあ間違ってはいないのですが、「密林少女」でもなく「密林の女」や「ジャングルの少女」とかでもなく、あえて「密林ガール」としたところに、僕は翻訳者の本気を感じました!

……と、タイトルだけであまり引っ張るのも何なので、さっそく本編をご紹介します。

あらすじは非常に簡単。

南米ジャングルにはひとつの伝説があった。それはジャングルに住むという謎の少女「シャンドラ」の伝説。長年にわたって彼女を追いかけてきた研究チームは、ハンター・カレンの先導でジャングルへと入っていった。果たしてシャンドラは姿を現すのか? 伝説に語られる密林ガールの正体とはいったい……。

ということで、タイトルでもある密林ガールとは、要するにターザンの女性版といったところでしょうか。では本編を追いかけながら、主にツッコミどころを見ていくことにしましょう。

なんといってもまずは密林ガールにツッコミ!

物語は、密林ガールを追いかけていた研究者の一人、アームストロング博士がジャングルの中で探索の成果をレコーダーに吹き込んでいるシーンから始まります。

「30日目……例の生き物の姿は未だ見られない。残念ではあるが、シャンドラは空想上の生き物だろう」

どうやら、思うように研究の成果が出ていないアームストロング博士。 そんな彼の姿を、木陰から見つめる一人の少女がいました。 そう、密林ガールです。

妙にエロティックな衣装を身にまとった密林ガール。この時点でもう怪しさ満点

まだ密林ガールの存在に気づいていないアームストロング博士に向かって、彼女は物音ひとつ立てず、素早い動きで急接近!

……という光景を僕は予想していたのですが、実際には全然素早い動きではなく、擬音で表すなら「のたのた」という感じで密林ガールは博士に急接近。こ、この動き……! 明らかに密林ガールは都会人です。

……とまあ、初っ端から中途半端な演技で我々のツッコミ欲を刺激してくる密林ガールですが、しかしここで「演技指導がなっとらん!」などと、がっかりしないでくださいね。なぜなら、密林ガールの走り方が全然ジャングル慣れしていないことなぞ、この映画ではほんの些細な問題に過ぎないからです。

「監督ぅ~森の中って走りにくいんですねえ」「ハハハ、ゆっくりでいいんだよ、それより足をケガしないようにね」※会話は僕の妄想です

えっ、そのシーン必要なの? エロシーンにツッコミ!

さて、本物のサバンナに放り出されたら2分でライオンの餌になってしまいそうな密林ガールですが、アームストロング博士に急接近した彼女は、ここで衝撃的な行動に出ます。

ボボンボ! ボボンボ!

という軽快なBGMが始まったかと思うと、アームストロング博士を押し倒し、彼の体の上にまたがって腰を振り始める密林ガール。

もうね、このときの僕の表情をぜひ皆さんにお見せしたかったですよ。 たぶん、初めて納豆を食べたフランス人みたいな顔になっていたと思います。

いやね、とりあえずまあ、お色気映画だからエロシーンがあるのはいいと思いますよ。でもね、密林ガールが人を襲うという、言うなればストーリーの核とも言える部分にエロを仕込んでくるとは思わなかったです。 「"襲う"ってそっちかい!」って思わず叫んでしまいましたもん。

……ここから、エロの暴走は止まることなく、他の登場人物にも波及していきます。

たとえば、メインキャラ二人による濃厚なベッドシーンは「その設定、いらなくね?」とつっこみたくなるほどストーリーと無関係ですし、普通のエロに飽きた人向けに、女性同士によるベッドシーン(もちろんこちらもストーリーにはまったく関係なし)もしっかり用意されている……など、ここまでくるとつっこんだら逆に負けかなという気持ちにさせてくれるから不思議です。

あの手この手でシチュエーションを変えてくるエロシーンは全て必見!(?)
※ちょっとキワどかったので一部隠させていただきました。ご了承ください(編集部注)

あ、ちなみに、密林ガールに性的暴行(実際に映画の中でこう表現されています)を受けた男性は生気を抜かれて危篤状態に陥ってしまうみたいです。

……エロ、怖えー!

後半になるにつれて増してくるカオスっぷりにツッコミ!

このように、エロから始まり、エロによって進んでいく本作品ですが、密林ガールを捕らえるために結成された研究チームがジャングルに入った物語中盤から、さらにカオス度がアップしていきます。

まず、密林ガールを捕獲するために、「裸の男を樹に縛りつけて囮にしようぜ!」という発想がクソ真面目に出てくる時点で、「この話はヤバイ」ということがわかりますよね。

さらに、この「密林ガール捕獲作戦」以降の展開を簡単に箇条書きで紹介すると……ってか、カオスすぎて箇条書きで説明するのが精一杯なんですが、

  • 唐突に始まる愛と裏切りのサスペンス展開!

  • 密林ガールに秘められた力とは?

  • 謎の恐竜登場! その衝撃の理由は!?

といった感じ。 ……これでわかります? 僕はわかりません。

なんで現代に恐竜が? それは見てのお楽しみ!

……でもね、今はわからなくていいんです。 密林ガールは、前半はエロを、後半はサスペンスを楽しむ物語ですから、あとは皆さんでご覧いただいて、そして思う存分こう叫んでください。

「ねーよ!」

僕は15回ぐらい叫びました。

(C)1999 Twilight Entertainment

今回ぶった斬られていただいた愛すべき作品

『密林ガール』

原題:SHANDRA:THE JUNGLE GIRL

CAST : リサ・スロー / ミア / ドレイク・テイタム /リサ・コムショー / バーク・モーガン /デヴィッド・クリステンセン
監督:シビル・リチャーズ / 脚本:アール・ケントン

アルバトロスより3月7日発売 5,040円


山田井ユウキ

レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、連日30.000以上のPVを誇る