人間・人生探求の一環として男女関係をテーマとしているライターの春日奈々です。7回にわたって「妻に三行半を突きつけられないように夫として何をすればよいのか」「あなた自身がどう変わればよいのか」といった視点から、熟年離婚の防止策を考えてきましたが、いよいよ今回が最終回です。これまでの努力も虚しく、妻から離婚を切り出されてしまったら……。最後に、離婚という"有事"に対する心構えや対応策をお教えします。

妻に三行半を突きつけられても、慌てずに対応を

突然、妻に離婚を切り出されても、感情的な発言や行動をとってはいけません。頭に血が上った状態で心にもない言葉を発し、さらに妻を傷つけ怒らせてしまったら、事態を収拾する最後の望みを永遠に失うでしょう。ここはひとまず反論せずに、妻の言い分に耳を傾けてみましょう。もしも、妻が既に離婚の準備をしているのであれば、離婚に関する要望も合わせて、細かく聴いてあげてください。その上で、「反省すべき点については素直に謝る」という、これまでの教えを実践しましょう。「離婚」を切り出す妻の中には、夫に改心して欲しいがために、最後の切り札として言い出す人も少なからずいるものです。そうした場合には、夫が妻に理解を示し、謝罪を口にして改心を誓うことで、離婚を回避する可能性があるのです。とにかく、本格的な話し合いは後回しにしましょう。あなたのショックが冷め、冷静さを取り戻してからにしてください。

諦めないで、第三者に相談してみよう

話し合いの結果、「いくら二人で話し合っても埒が明かない」となったら……。それでも諦めてはいけません。この際「家庭の恥」とはいわず、公的機関に相談してみてはいかがでしょうか。家庭裁判所には、「離婚調停」ではなく、「夫婦関係調整調停(円満調停)」を申し立てられる制度があるのをご存じでしょうか。これは「離婚をするための話し合い」のみならず、「夫婦関係を改善するための話し合い」にも利用できる制度です。家庭裁判所の調停委員が間に入って、夫婦双方の意見を聞きながら、アドバイスを与えたり解決策を示してくれます。具体的な手続き方法については、最寄りの家庭裁判所に電話で問い合わせてみてください。

民間の専門家に相談するのも1つの手です。夫婦の問題を専門に扱うカウンセラーなどは、夫婦の現状をよく理解した上で、夫婦関係修復の具体的なノウハウを提示してくれるでしょう。

では、身内に相談するのはどうでしょうか。もし、成人している子供がいるのなら、あなたが直面している人生最大のピンチを率直に話してみてもよいのかもしれません。ただし子供は、あなたが相談する前に妻と結束している可能性があります。子供が妻の味方をするのは、あなた自身にそれなりに原因があると思われているからかもしれません……。こうなった原因についてあなた自身が深く反省し、改心した姿を見せれば、血を分けた子供ですから仲裁役になってくれる可能性もあるでしょう。

「関係修復はもはや困難」と思ったら

いよいよ妻の決心は固く、関係修復は困難となってしまったら、弁護士の所へ法律相談に行きましょう。相談の際は、妻の要求をまとめたもの、財産リスト、夫婦の年表などを用意します。旧知の弁護士がいない場合は「法テラス」や各都道府県の弁護士会、各自治体で行っている法律相談をあたってください。妻の要求が妥当なものであるか、法外な慰謝料を要求されたとすればどう出たらよいのか、相談してみましょう。

外部の相談窓口

  • 家庭裁判所

  • 「夫婦関係調整調停(円満調停)」「夫婦の同居を求める調停」など、「離婚」ではない夫婦の問題解決のための調停を申し立てることができます。
  • 岡野あつこの離婚相談救急隊

  • 「夫婦関係修復相談」や「男性のための離婚相談」「熟年離婚相談」など、相談者の立場に立って、あらゆるケースに対応しサポートしてくれます。
  • 法テラス

  • 法的トラブルの総合案内窓口です。全国の利用者に最も適切な相談機関や団体を紹介するなど、法に関する情報提供を行っています。
  • 日本弁護士連合会

  • 全国に相談窓口がありますが、相談時間や取り扱う相談内容、相談料の有無が各地によって異なるので、まずは電話で問い合わせてみてください。

初孫の誕生で再び絆を深める夫婦も!

離婚協議が泥沼化し長期戦となった夫婦が、一転して復縁したケースも過去にありましたので、最後まで諦めてはいけません。私の知る夫婦のケースでは、娘のおめでた婚がきっかけとなり復縁しました。妊娠や結婚、里帰り、出産とバタバタしていたのでひとまず休戦をしていると、初孫が誕生。夫婦は「孫は鎹(かすがい)」とばかりに、「孫が命」のお祖父さん、お祖母さん化し、離婚話はすっかり白紙に……。冷え切った夫婦に初孫が誕生したことで、再び夫婦の絆を深めた好例ですね。

いずれにせよ、「みっともなくて誰に相談できるか! 」と、一人で悩むのはやめましょう。必ず複数の人に相談して、最善の答えを導き出すことが大事です。また、初孫誕生を機に復縁した夫婦同様、離婚届を提出するまでは何がきっかけで「復縁」の方向に流れが変わるかわかりません。「どうしても離婚をしたくない」のであれば、妻の気持ちを変えるよう全力を尽くしましょう。最後まで諦めてはいけません。

(イラスト: 櫻井輪子)