人手不足が大きな社会問題となる中、若い人材は即戦力として、または将来を担う中心社員として期待されることも多いと思います。ただし、経済や雇用状況は流動的で、数年先には不景気で失業率が高まり、リストラの嵐となっているかもしれません。
そうならないことを願うばかりですが、いざという時に知っておきたい雇用保険について基本知識を確認しておきましょう。
失業した時に頼りにしたい雇用保険の基本手当
失業した際に頼りになる手当は一般に失業手当といわれています。パートやアルバイトも含め、1週間の所定労働時間が20時間以上あり、継続して31日以上雇用されることが見込まれている人が雇用保険の被保険者(保険の対象)となります。その被保険者が失業手当をもらうことができる主な要件は以下です。
●65歳未満の被保険者
●失業(離職)日以前の2年間において12カ月以上、保険に加入していること。なお、会社の倒産などの場合、失業日以前の1年間において6カ月以上加入していればよい。
●働く意思がある
つまり、過去2年間のうち、半分は雇用保険に加入していた人が失業した場合で、次の就職先を求めて就職活動をしている間、失業手当を受け取ることができます。会社の倒産などは予期せぬ事態であるため、期間が短い人でも失業手当の対象となるよう、要件期間が半分になっています。
自己都合と会社都合で手当が変わる
自分で退職を決意した場合は自己都合、倒産や解雇などは会社都合となり、失業手当の給付日数に大きな違いがあります。雇用保険は、雇用が確保されない人の生活を一定期間守ってくれるという意味合いが強いため、自己都合よりも会社都合の方が、日数が長くなっています(以下参照)。
通常、失業手当は7日間の待期期間の後、支給されることになりますが、自己都合の場合はその後さらに3カ月間、給付が制限されます。よって、7日+3カ月は給付がないため、その間に再就職する目途がある、または一定の生活を続ける貯金があるといった状況が求められます。
仕事をしていると思い通りにならないことも少なくありません。感情的に退職を決断するのではなく、一度冷静になり退職や転職について検討してください。なお、定年退職の場合、給付日数は自己都合と同じ扱いとなりますが、3カ月の給付制限期間はありません。
失業手当の金額
失業手当の計算基準となるのが被保険者として働いていた最後の6カ月間に支払われていた賃金の総額を180で除した額が基準となり、その金額の50~80%(60歳未満の場合)が給付割合となります。よって、過去6カ月の平均賃金よりもやや少ない額が手当となります。
なお、賃金が低い人ほど給付割合は高くなり、賃金が高い人ほど割合が低くなります。また年齢によって上限があり30歳未満の場合、日額6,750円(平成30年8月現在)が上限となります。よって、正社員で働いていた場合、1日5,000円前後を見込んでおけば、大きく異なることはないと思います。
受給期間は原則1年以内
失業手当は「会社に勤務して働く意思がある」人が対象になり、定期的にハローワークに出向き就職先を探す必要があります。受給期間は原則、失業した日の翌日から1年間です。よって、個人事業として独立開業をする場合や、病気などで療養・休養をし、その後ゆっくりと進路を考えるといった場合は失業手当を受け取ることができません。
「私は150日分失業手当をもらう権利がある。しばらくは休養するが、また働く気になり、就職活動を始めてから150日分もらおう」と思っている間に受給期間の1年が経過してしまうと、150日分どころか、一切手当をもらえなくなります。よって病気や出産などがきっかけで失業した場合などは事前に延長申請をすることで受給期間を1年から4年に延長することができます。
「病気で今の仕事を辞めたが、今後治療に専念するのか?」
「体調次第で新たな職場を探すのか?」
今はまだ決められない。というケースです。ハローワークに出向き、延長申請をすることを覚えておいてください。
育児や介護で休む場合も給付される
雇用保険は失業者以外にも育児や介護で休業する人を対象とした給付制度もあります。満1歳未満の子を養育するために育児休業した場合や親などの介護のため一定期間休業する場合など、休業前賃金日額の67%相当額が給付できる制度もあります。その他、雇用環境が大きく変わりつつある60~65歳の勤労者をサポートする制度もあります。
ライフスタイルの多様化を支える雇用保険
働き方のみならずライフスタイル全般、多様化が進んでいます。「20代はこういう働き方をすべきだ」といったような強要する意見を聞く機会がめっきり減りましたが、だからこそ転職や独立といったシンプルな単語では割り切れない様々な選択肢で悩む機会も増えていると思います。
特に若い人は30歳や40歳という節目でなっていたい理想像を持っている人も多いでしょう。その理想に向けて様々な意思決定を繰り返していくのですが、毎回必ず正しい判断ができるとは限りません。時に間違いを認め方向転換をすることもあるでしょう。
そんな時に雇用保険の存在が心強く感じることになると思います。ぜひ制度の概要だけでも頭の片隅に入れておいてくださいね。
著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)
内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。
九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。