今日ご紹介するのは「六文そば 須田町店」。黄色い看板でお馴染み(?)の「六文そば」は都内に複数店あり、この連載でも2年ほど前に「日暮里第1号店」をご紹介した。「富士そば」や「ゆで太郎」などの大手チェーンよりも各店の個性が強く、一部の界隈ではファンも多い。

  • 「紅しょうが天そば」(380円)

今回はその「須田町店」ということで、東京メトロ銀座線「神田」駅、東京メトロ丸ノ内線「淡路町」駅、都営新宿線「小川町」駅などが最寄りになる。それぞれの駅から徒歩2~3分圏内だ。

インパクト大の黄色い看板が目印

まず目をひくのは、独特のその佇まい。両脇を道路に挟まれ、一点透視図法で嫌でも飛び込んでくるその黄色。どことなく遊郭の置屋のような風格さえ感じさせる。この時点で来る価値ありである。

中に入ろう。時間は平日の午前11時過ぎ。忙しくなる直前をちょうど狙えて、先客は1名のみ、厨房には熟年の店員さんが3名いらっしゃった。席は立ち食いのみ。5~6人を回転させる小さな店である。壁には、看板と同じく黄色いプラ板に書かれたお品書き。適当に場所を陣取り、おもむろに見遣る。

基本は天ぷらのバリエーションによるそばがメインで、かきあげ、春菊、ピーマン、ごぼう、なす、ちくわ、あじ、いかなど。カウンターのケース内にも並んでいるのでこちらから見て選んでもよい。ひとつ気になったのが「さつまあげそば」。よしこれを、と思い頼むと、残念ながら「今やってないんです」のお返事。方向転換し、「紅しょうが天そば」(380円)を注文。

酸味がきいた紅しょうが天が食をそそる

代金は現金受け渡し。そばは、ものの十数秒でできあがる。卓上の刻み唐辛子をふりかけて、いただきます。ここの紅しょうが天は、実に赤く、見事なまっかっか。一口かじれば、この特有の酸味がたまらなく食欲を駆り立てる。

  • 黄色い看板でお馴染み(?)の「六文そば 須田町店」

麺は、白くてコシや香りが少なく、これぞ六文そばという味。ツユは真っ黒で甘みがある。ボリュームはそれほどでもないものの、丼が比較的小ぶりなので、持って立ち食いするにはぴったりだ。これぞ立ち食いそば。やれ手打ちだの無化調だの揚げたてサクサクだの、そんなウンチクを吹き飛ばしてしまうシンプルな「美味さ」がある。ごちそうさまでした。

余談だが、すぐとなりのブロックには行列のできる老舗蕎麦店「かんだやぶそば」が店を構えている。歴史に約束された逸品か、この紅しょうが天そばか。どちらをたぐるかは、あなた次第である。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。