体内リズムや周辺環境などの同調関係が崩れ、睡眠障害を起こしてしまうと、日常生活に影響が出始めます。睡眠障害と言われる症状の中で最も多いのは「不眠症」、つまり上手に眠れなくなることです。逆に、昼間の眠気で困っている「過眠症」の方もいます。このような睡眠障害を自覚できるサイン、そして通院すべきタイミングについて知りましょう。
どのような症状を睡眠障害と呼ぶのか
満足な睡眠を得られず困っている人は、人口の2割ほど存在すると言われています。その中でも多いのが「不眠」「眠気」「睡眠のスケジュールが合わない」という3つの訴えです。これらの症状が出ると、社会生活に支障をきたすことになります。
また、睡眠中に起こる異常現象も睡眠障害の一種です。例えば、いびきをかいて呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」や、下肢に不快感や痛みを感じて眠れない「むずむず脚症候群」、眠っている間に動き回ったり食事をしたりしてしまう「睡眠時遊行症」などがあります。
これらの症状はすべてが独立しているわけではありませんが、不眠、眠気、睡眠リズムの乱れ、睡眠中の異常現象など、このような症状を総合して「睡眠障害」と呼びます。
医師の診察を受けたほうがいいサインとは
「睡眠障害」の症状はさまざまですから、自覚できるサインの現れ方も多様です。それでも多くの場合は、眠い、眠れない、起きられない、疲れが取れないといった自覚症状を感じて通院に至るケースがほとんどです。また、睡眠中に起こる異常現象では、本人に自覚がなくとも家族やパートナーが気付く場合もあります。
とはいえ、不規則な生活をしているときや夜更かしをしてしまったときなどに、少し眠れない、起きられないといったことは誰にでもありますので、睡眠障害を自己判断することは難しいかもしれません。では、どのような場合に医師の診察を受けるべきなのでしょうか。それは、日常生活に影響が及んだときです。例えば、眠気が1週間以上続き、仕事や学業といった部分に支障が出始めたら、睡眠障害を疑うべきでしょう。
また、自分でいくら努力しても遅刻をしてしまうという人や、寝てはいけない場面で眠ってしまうという人も診てもらうと良いでしょう。特に若いビジネスパーソンには、不摂生と生活リズムの乱れから睡眠障害を起こしている方が多くいます。病院では、そういった方向けのカウンセリングも受けられます。自分で解決できないと思ったら、病院に行きましょう。
満足のいく睡眠をとるために、みなさんもさまざまな方法を模索していることでしょう。ですが、そこで自分なりに得た知識が間違っていたら、逆に睡眠障害を発症してしまうかもしれません。
次回は、睡眠にまつわる諸説のウソ・ホントについて解説します。
監修者
井上雄一 (いのうえゆういち)
医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木 理事長
1956年生まれ。1982年 東京医科大学卒業・鳥取大学大学院入学。1987年 医学博士・鳥取大学医学部神経精神医学助手。1994年 同大講師。1999年 順天堂大学医学部精神医学講師。2003年 代々木睡眠クリニック院長、公益財団法人神経研究所研究員(現職)。2007年 東京医科大学 精神医学講座教授(現職)。2008年 東京医科大学睡眠学講座教授(現職)。2011年より医療法人社団絹和会 理事長(現職)。