日々忙しい生活を送っているビジネスパーソン。仕事中はさまざまなストレスにさらされており、高いテンションを引きずったまま帰宅する人も多いことでしょう。そのような緊張状態のまますぐに寝ようとしても、寝付くのが難しいのは当然です。スムーズに眠りにつき、質の高い睡眠を実現するためには、どのような点に気を付けたらよいのでしょうか。
お酒などの嗜好品はほどほどに
アルコールは少量では神経を興奮させ、一定以上の量を嗜めば眠くなる効果があります。しかし、眠るための方法としてお酒を飲んでしまうと、眠りに入るのは早くなっても、睡眠が浅くなってしまう場合があります。結果的に睡眠の質が低下してしまうことになるため、お酒はほどほどにしたほうが良いでしょう。
もちろん、付き合いのうえで適量のお酒を楽しむのは問題ありません。気を付けるべきは、量を過ごさないこと、そしてお酒を飲んで眠る癖をつけないことです。眠るためにお酒を飲むことを習慣化させてしまうと、睡眠の質を下げるだけでなく、次第にその量が増えていきアルコール依存症につながる可能性もあります。眠る前のお酒には注意しましょう。
その他、カフェインやたばこも神経を興奮させる作用がありますので、眠る前の摂取は避けるようにしたほうが睡眠の質を高めることができると言えます。
体内時計を狂わせるブルーライト
IT化の進んだ社会で生活をしている現代人は、長時間にわたりパソコンやスマートフォン、タブレットなどのディスプレイを眺めていることも多いでしょう。こういったディスプレイには、波長380~500nmの青色光が多く含まれています。「ブルーライト」と呼ばれるこの光は、可視光線の中でも強いエネルギーを持っており、角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達します。
ブルーライトは、その強さから眼や身体に大きな負担をかけると言われており、自律神経を興奮させ、ひいては体内時計のリズムを狂わせる要因ともなるのです。ベッドに入ってからもスマートフォンやタブレットを使い続けてしまう人は少なくないと思いますが、ブルーライトを発する機器は、睡眠に入る1,2時間前には使用をやめたほうが良いでしょう。
睡眠に入るための儀式を持とう
世の中には、質の高い睡眠を実現する方法として提案されているものがたくさんあります。例えば、アロマを炊く、ヒーリングミュージックをかける、ヨガやピラティスをする、室内を穏やかな照明にする、などが挙げられるでしょう。
こういった行動は、日中の仕事で上がったテンションを下げるスイッチの役割を果たしてくれます。それぞれが実際に睡眠へどのような影響を与えているのかはともかくとして、何よりも重要なのは、これらの行動がオンとオフを切り替える心理的効果を備えているという点です。眠る前の習慣的動作、睡眠に入るための儀式を持てば、体が眠るタイミングを学習し、睡眠の質を向上させることができるかもしれません。
とはいえ、香りや音、照明などは眠りを妨げる要因にもなりえます。睡眠の導入に利用するのは良いと思いますが、タイマーなどをセットして、一定の時間が経過したら停止するようにしておいた方が良いでしょう。
ここまでは、睡眠の質を高め、十分な量を確保する方法について解説してきました。しかし、睡眠の質と量を満足に確保することが難しいというビジネスパーソンもいらっしゃるでしょう。そんな方に気を付けてほしいのが、睡眠負債です。
次回は、睡眠が負債として溜まっていく理由と、その返し方を紹介します。
監修者
井上雄一 (いのうえゆういち)
医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木 理事長
1956年生まれ。1982年 東京医科大学卒業・鳥取大学大学院入学。1987年 医学博士・鳥取大学医学部神経精神医学助手。1994年 同大講師。1999年 順天堂大学医学部精神医学講師。2003年 代々木睡眠クリニック院長、公益財団法人神経研究所研究員(現職)。2007年 東京医科大学 精神医学講座教授(現職)。2008年 東京医科大学睡眠学講座教授(現職)。2011年より医療法人社団絹和会 理事長(現職)。