あの日の続き

以下のやり取りをご覧ください。

――これまで指した将棋の中で詰将棋のような手が現れた対局はありますか?

藤井「あると思うんですけど、思い出せるかどうかですね…(長考して)2021年の竜王戦第4局です」

――あ、あの将棋ですか。

「はい」

2021年の竜王戦第4局というのは・・・、みなさんご存じですよね? そうです。豊島先生との炎の十九番勝負の最終局、藤井先生と豊島先生のお二人から「もう少し続けたかった」という感想が出た、伝説の一局です。終盤戦で超難解な局面が出現して豊島先生の長考中に藤井先生が奇跡的な詰み筋を発見して勝つというドラマチックな内容でした。

しかし、驚くのはここからです。藤井先生の言葉の続きを見てみましょう。

藤井「本譜は△3四桂に▲4七玉だったんですけど、▲3六玉とした変化で、以下△2四桂▲4五玉△4四歩▲同玉△3三銀▲同玉△3二歩▲4四玉△3三金▲4五玉△4四歩▲同銀△同金▲同玉△3三銀▲5五玉△8五竜で詰みます。本譜は▲4七玉△5八と▲3六玉となったんですが、先ほどと同じように進めると最後の△8五竜に対してと金が5八にいっているため▲6六玉と逃げられてしまいます。ただ、今回は竜の横利きが通ったので▲3六玉に△2五金からの詰みが生じています。これは詰将棋的な構造かなと思いました」

・・・いや、凄くないですか?

2021年の将棋の長手数の変化手順をそらんじる藤井先生。藤井先生の頭の中にはあの将棋がいつでも取り出せる形で残っているんですね。なんなら普段からあの将棋の続きをまだ一人で考えているんじゃないかとすら思いました。

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※2023年8月2日午後1時40分、記事初出時、記事文中に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。