日本銀行の調査によると、2020年9月末時点における個人金融資産1,901兆円のうち、530兆円(約27.9%)を保険や年金などの金融商品で保有しています。※出典:日本銀行「2020年第3四半期の資金循環(速報)」これは、現金・預金の1,034兆円(54.4%)に次いで高い割合です。

貯蓄型保険にも、他の金融商品と同様に良い点と注意点があるため、ご自身にとって必要かどうかを判断することが大切です。今回は、若者が貯蓄型保険を検討する際に知っておきたい、良い点や注意点をわかりやすく解説していきます。

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■貯蓄型保険の種類

貯蓄型保険とは、保障と貯蓄機能を兼ね備えた保険のことで、以下の種類があります。

  • 【図版】貯蓄型保険の内容と特徴

また貯蓄型保険には、主に以下の3種類があります。

円建て保険:契約者が日本円で支払った保険料を、保険会社が円のまま運用する保険
外貨建て保険:契約者が円で支払った保険料を、保険会社が日本よりも金利が高いアメリカやオーストラリアのドルと交換して運用する保険
変額保険:保険料の一部の運用先を保険契約者が自ら指定する保険

外貨建て保険や変額保険は、円建て保険と比較して高い利回りが期待できます。しかし外貨建て保険には為替リスク、変額保険には投資リスクがあり、支払った保険料よりも必ず殖えるわけではありません。

貯蓄型保険は、商品によって良い点や注意点が異なります。ここからご紹介するのは、多くの貯蓄型保険に共通する良い点と注意点であることをご留意ください。

■貯蓄型保険の良い点

若者にとっての貯蓄型保険の良い点は、以下の3点です。

・貯蓄が苦手な人でもお金を貯めやすい
・保険料の振り込み免除を付帯できる
・契約者貸付を利用できる

▼貯蓄が苦手な人でもお金を貯めやすい

貯蓄型保険は、毎月や毎年など契約時に定めたタイミングで指定の口座から保険料が引き落とされるため、半強制的にお金を貯められます。

積み立てたお金を引き出すためには、解約の手続きが必要となるため、預貯金のように気軽に引き出せない点も貯蓄型保険でお金を貯めやすい理由です。

また貯蓄型保険に加入して支払った保険料は、保険会社によって運用されます。保険会社の運用が振るわずに、保険の契約者に約束した運用利率(予定利率)を下回っても、契約者が損失を負うことはありません。

「○○歳になると○○円受け取れる」と、受取額が確定することに安心を感じる方もいらっしゃいます。貯蓄が苦手な方や、必要な資金を積み立てたいもののあまりリスクを取りたくない方は、貯蓄型保険に加入するのも選択肢のひとつでしょう。

▼保険料の振り込みが免除される場合がある

貯蓄型保険の中には、所定の要件に該当すると、以後の保険料払い込みが免除される場合があります。

例えば学資保険は、保険料の払い込み中に契約者が亡くなると、保険料の払い込みが免除される場合があります。残された子どもは、大学や高校の進学時などで、予定通りに保険金を受け取れる仕組みです。

また終身保険には、三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)に該当し、所定の状態になると、保険料の払い込みが免除される場合があります。

がんのような重い病気を患った場合、医療費の支払いに加えて就業に制限が発生し、収入が減少するケースも珍しくありません。

医療費の支払いや働けなくなった場合の収入減少は、公的医療保険の給付によってある程度カバーされます。しかし、すべてがカバーされるわけではないため、がんのような重い病気になると、貯蓄を続けるどころか生活費の捻出すら難しくなる場合があるのです。

保険料の払い込みが免除されると、重い病気によって金銭的に苦しい状態となっても、保険会社が代わりに保険料を支払ってくれるため、契約を継続できます。

▼契約者貸付を利用できる

契約者貸付とは、解約返戻金のうち一定範囲内で契約者にお金を貸してくれる制度です。

投資信託のような金融商品で積み立てた資産は、リーマンショックやコロナショックのような不況が訪れた際に活用できない恐れがあります。不況が訪れたときは、運用資産がマイナスとなっており手が付けられないためです。

貯蓄型保険に加入していると、お金のやりくりに困ったときに、契約者貸付を利用して当面の生活費に充てられます。なお、契約者貸付を利用した場合、利息を上乗せして返済しなければなりません。

しかし契約者貸付は、住宅ローンやマイカーローンのように担保を準備する必要がなく、消費者金融よりも金利が低く設定されています。また、新型コロナウイルスによって資金繰りが困った人のために、契約者貸付の利率を0%にした保険会社が多数ありました。

■貯蓄型保険の注意点

貯蓄型保険には、以下のような注意点があります。

・高い利回りは期待できない
・元本割れする可能性がある

▼高い利回りは期待できない

2021年1月現在、貯蓄型保険に適用される利率は、ひと昔前と比較して非常に低い値で推移しています。あなたの親やおじいちゃん、おばあちゃんが加入していたころの貯蓄型保険とは、もはや別物と言っても過言ではありません。

さらに新型コロナウイルスの感染拡大により、外貨建て保険の予定利率も低下している状況です。

そのため、貯蓄型保険に加入してもお金はあまり殖えていきません。リスクを取ってでも、積極的に資産を殖やしたいのであれば、株式や投資信託など、他の金融商品を選択すると良いでしょう。

▼元本割れする可能性がある

貯蓄型保険は、保険料を払い込んでいる最中に解約をすると、解約時に戻ってくるお金(解約返戻金)の額が、払い込んだ保険料を下回るケースがほとんどです。

保険料が、加入時に支払えると思っていた金額であっても安心はできません。転職や子どもの出産などが理由で、支出の増加や収入の減少が発生して、保険料が払えなくなる可能性があるためです。

貯蓄型保険の保険料は、20年や30年にわたって払い込むケースも珍しくありません。貯蓄型保険を検討するときは、最後まで保険料を支払っていけるのかをよく考えましょう。

また保険料を払い込んでいる途中で、保険会社が倒産した場合も、元本割れする可能性があります。元本が、すべて保証されるわけではない点に注意しましょう。

■まとめ

貯蓄型保険は、元本が保証されているだけでなく「保険料払い込み免除」や「契約者貸付制度」などが利用できるという良い点があります。

一方で貯蓄型保険の利率は、ひと昔前と比較して低下しています。また加入するときは、途中解約によって元本割れする可能性がある点にも注意が必要です。

貯蓄型保険は、積極的に資産を殖やすための金融商品ではありません。貯蓄型保険には、資産が減らないようにする仕組みや経済的に困ったときにサポートしてくれる仕組みがあります。そのため利回りだけで、貯蓄型保険と他の金融商品を比較しないことが大切です。

また貯蓄型保険には、「相続税の非課税枠がある」「受取人の固有の財産となる」「遺産分割協議が不要」など、相続の場面で発揮するメリットがあります。若いうちは貯蓄型保険が不要であっても、将来的に必要となる可能性はあるでしょう。