連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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老後破産を避ける第一歩は計画的な貯蓄ですが、老後破産が心配なあまり「とにかく貯めなきゃ」とやみくもに貯蓄に走るのは望ましくありません。できるだけお金を使わないようにしようと趣味も持たず旅行にも行かず、友人とお茶したり飲んだりすることもしない、というようでは、心豊かな生活とはいえないませんよね。

また、そんな人が老後を迎えるとどうなるでしょう。趣味がなくて退職したらすることがなく、楽しい思い出もなく、おしゃべりできる友人もいないという状態になってしまいます。老後のために"今"を犠牲にしたのに、「お金はあるけど孤独でさびしい老人」になってしまってはなんのための人生かわかりません。

ですから、老後のことも気に掛けながら、"今"を充実させることも大切です。若いときには趣味を楽しんだり、旅行へいっていろいろな経験をしたり、友人と一緒に過ごしたりすることは欠かせません。

やみくも貯金よりメリハリ消費

ただ、趣味がたくさんあり、旅行にも行きたい、飲み会にも欠かさず出たい、となるとお金が足りなくなってしまうかも。そこで自分は何にお金をかけて、何にかけないかを決める必要があります。

限られた収入のなかで「あれもこれも」とお金を使うのではなく、お金の使い方にメリハリをつけるのです。

「メリハリ支出」って?

生活の中で、これだけは削れないというものがあれば、そこにはお金をかけても、ほかの部分にはお金をかけない、それがメリハリ支出です。

例えば、

・あるミュージシャンのファンでコンサートやライブには欠かさず行きたい。だから着るものにはお金をかけない、
・本が好きで毎月何冊も本を買う。その分、ランチは外食せずお弁当を作っていく
・毎朝食べるパンはおいしいものでなきゃイヤ。だから野菜はベランダで栽培してお金をかけない

などなど。

住宅についても同じことがいえます。マイホームを買うとき、立地や広さ、設備、内装など、すべて満足がいくような物件は当然ながら価格が高くなります。そこで、

・新築ではなく中古にすることで住宅にかかる費用を抑えて家計にゆとりを残す
・駅から近いこと優先しそのためには少々手狭でもよしとする
・庭が広いのが一番大切だから通勤に時間がかかっても気にしない

など、優先するものに合った物件を選ぶことが考えられます。

「あれもこれも」とお金をかけた結果、貯蓄ができなくなってしまえば老後破産につながります。きちんと貯蓄をし、残ったお金の範囲で、自分のかけたいところにお金をかける。そのほうが、納得感もあるし満足度も高いはず。人生が豊かになり、自分らしい生き方ができます。

優先順位を決めてお金の使い方にメリハリをつけるということは、何をして何をしないのかを決めて、自分の人生を自分でコントロールしていくことにもつながります。だらだら消費はやめてメリハリ消費を心がけましょう。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。