皆さんは、「超高齢社会」と聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか? 残念ながら、明るいイメージをお持ちの方は少ないと思います。

また、平成26年に内閣府が行った「人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査」によると、「あなたは、50年後の日本の未来は、現在と比べて明るいと思いますか、それとも暗いと思いますか」という質問に対して、「明るいと思う」と回答した人の割合が33.2%であったのに対して、「暗いと思う」と回答した人は過半数の60.0%にも上りました(※1)。

  • 超高齢社会は悪いことばかりではない!?(画像はイメージ)

この結果からも、多くの人が「超高齢社会」に不安を持っているであろうと想像できます。

ただ、それは「超高齢社会」というと、暗い話を多く耳にするせいかもしれません。高齢者の割合が増えて、働き手となる現役世代が減っていくことになりますので、人手不足が深刻になるとか、経済が縮小していくのではないかといった不安がしばしば取り上げられています。

(※1)「明るいと思う」(33.2%)は「明るいと思う」(7.5%)と「どちらかといえば明るいと思う」(25.7%)を合算。
「暗いと思う」(60.0%)は「どちらかといえば暗いと思う」(41.6%)と「暗いと思う」(18.5%)を合算。

「超高齢社会」とは?

そもそも「超高齢社会」とはどのような社会を指すのかといえば、総人口に占める65歳以上人口の割合が21%を超えた社会のことです。日本は、世界に先駆け2007年から超高齢社会へと突入しています。

これからの日本にとって「超高齢社会」とそれに伴う人口減少は解決すべき重大な課題です。しかし、それをすべて悲観的に捉えるのは行き過ぎのように感じます。加えて、未来に希望を持てなければ将来のライフプランを作成するという気も起こらないでしょう。よって、今回は、「超高齢社会」における経済成長の可能性について取り上げます。

「超高齢社会」の可能性

まずは、人手不足です。「超高齢社会」に伴う労働人口の減少は、経済成長にとってはマイナス要因として働きます。既に、飲食などのサービス業や、宅配サービスの配達員の人手が不足しているという話はよく耳にされることと思います。しかし、このような人手不足は、中長期的には働く人の賃金の上昇、省力技術の開発や省力化投資の促進につながり、やがて経済成長を生み出すはずです。

なぜなら、人手不足と省力化投資、これは資本主義が辿ってきた歴史であるからです。そして、先進国で経済成長を生み出すものは、人の数ではなくイノベーションによる「一人あたりの所得」の上昇であるからです(※2)。

次に、経済縮小の問題です。確かに、「超高齢社会」では現役世代の割合が減少するので、現役世代の消費だけを見れば減少する可能性は高いでしょう。しかし、その分増加する高齢者世代は消費をしないのでしょうか? そんなことはないはずです。普段の生活のための消費だけでも相当な規模になるはずですし、高齢世代がぜひ購入したいと思うようなモノやサービスを創出できれば、その消費はさらに大きなものになるはずです。その観点から言えば、「超高齢社会」は多くのイノベーションに対するニーズを高めるので、経済成長の大きなチャンスともなります(※3)。

「超高齢社会」が生み出すイノベーションとして、創薬開発や介護ロボット、遠隔医療サービス、ライドシェアリングによる配車サービスや自動運転車など、様々な分野でのサービスが期待されています。

(※2)吉川洋・八田達夫『「エイジノミクス」で日本は蘇る 高齢社会の成長戦略』(NHK出版)24~26ページ
(※3)吉川洋・八田達夫『「エイジノミクス」で日本は蘇る 高齢社会の成長戦略』(NHK出版) 28ページ

「超高齢社会」の何に不安を感じているのか?

このように考えると、実は私たちは「超高齢社会」そのものに不安を感じているのではなく、未だ「超高齢社会」に十分に対応できていないことに不安を感じているのではないでしょうか?

そうだとすれば、希望はあります。「超高齢社会」そのものを変えることは当分できないでしょうが、「超高齢社会」に対応できるか否かは、これからの私たちの選択と行動次第だからです。ならば「超高齢社会」に対応することによって、老後の不安を減らすことも可能ではないでしょうか。

山田敬幸

山田敬幸

一級ファイナンシャルプランニング技能士。会社員時代に、源泉徴収票の読み方がわからなかったことがきっかけでFPの勉強を始める。その後、金融商品や保険の販売を行わない独立系FPとして起業。人生の満足度を高めるためには、お金だけではなく、健康や人とのつながりも大切であるという理念のもと、現役世代の将来に向けた資産形成や生活設計に対する不安の解消に取り組んでいる。