無事に退職日が決まると、業務の引き継ぎと退職後に向けた準備をすることになります。会社に勤めている期間は、社会保険料や税金が給料から自動的に天引きされており、細かい手続きのことはあまり考えずにすみますが、退職するとなると手間は一気に増えることに。

その時になって慌てることのないよう、どんな手続きをする必要があるのかご紹介したいと思います。

  • 覚えておきたい退職後の手続き - 健康保険や年金の切り替えは必要?

    退職後、健康保険や年金はどうなる?

健康保険の切り替え

知っておきたい手続きの一つに、健康保険の切り替え手続きがあります。

会社に在籍している時に持っている保険証は、退職日までしか使うことができません。うっかり退職後に病院で使ってしまうと、後日保険が切れていることが発覚し、加入していた健康保険組合から医療費の返還を求められることになるのです。

結果として、一時的に医療費を全額負担することになります。新たに保険に加入すれば、そちらで負担した分を請求することはできますが、手続きが煩雑になるため、退職日以降は保険証を絶対に使わず、早めに会社へ返却するようにするとよいでしょう。

退職後にどの医療保険制度に入るかは、その状況によって異なります。転職して次の就職先で働くことが決まっていれば、就職先で加入している健康保険に加入することになります。

また、退職後に次の職業が決まっていない場合、加入する医療保険制度の一つに国民健康保険があります。私どもがよく受ける質問に「次の就職先が決まったのですが、就職するまで少し期間があります。そのわずかな期間だけでも国民健康保険に加入しなければダメですか」といったようなものがあります。

結論からいえば、少しの期間であっても国民健康保険に加入する必要があります。なぜなら、たとえ手続きを行わなかった場合であっても、保険料は、退職日の翌日まで遡って支払う必要があるからです。

原則として、国民健康保険は退職日から14日以内に手続きしなければなりません。仮に手続きが遅延し、その理由にやむを得ない事由がなければ、病気やケガをしたとしても空白期間について保険の適用を受けられないといったケースがでてくる可能性もあります。その場合は、全額医療費を負担しなければならなくなります。

なお、国民健康保険に切り替える際には、健康保険の資格を喪失したことがわかる「資格喪失証明書」が必要になりますので、速やかに手続きができるよう、退職前に会社担当者に発行してもらうように伝えておきましょう。

退職後も今までの健康保険に加入できる?

退職後の医療保険制度の選択肢として、今までの健康保険に退職後も引き続き加入するという選択肢もあります。

これは「任意継続被保険者」と呼ばれるものです。

以下の2つがその要件となります。

  1. 退職日まで2カ月以上継続して健康保険に加入していたこと
  2. 退職日の翌日から20日以内に申請すること

注意すべきは(2)です。この「20日以内」の要件は、実務上かなり厳格で、20日を過ぎると手続きをとることができなくなります。本人の申し出が要件であることから、必ず期限内に所定の申請書で申し出をするようにしましょう。

  • 覚えておきたい退職後の手続き - 健康保険や年金の切り替えは必要?

    これまでの健康保険に継続加入することも可能

任意継続被保険者を選択するメリットとしては、加入していた健康保険の給付内容が引き続き受けられることにあります。

たとえば、健康保険の給付に、病気で入院などをした場合に自己負担額が一定の金額を超えた時、後から払い戻される「高額療養費」という給付があります。この制度は、健康保険組合によっては大幅に優遇されているケースもあります。

給付の内容は加入している保険によって異なるので、そのあたりも確認して検討するとよいでしょう。

また保険料については、任意継続被保険者になることで今まで負担していなかった会社負担分も負担することになります。在職中の給与によっては、保険料が単純に倍になるケースもあるので注意が必要です。

一方扶養家族がいる場合には、国民健康保険の保険料の方が高くなる可能性もあります。健康保険は何人扶養家族がいても保険料は変わりませんが、国民健康保険には被扶養者の概念がないため、無職であるかどうかに関わらず、家族の人数や年齢を加味して保険料が決定される仕組みとなるからです。

退職前に住んでいる市区町村に確認すれば、概算ですが確認もできます。任意継続した場合の保険料と比較したうえで、受けることができる給付の内容と支払う保険料のバランスをみて決めるとよいでしょう。

なお、会社都合で退職するような場合は、国民健康保険料が減免される可能性があります。その場合退職時に発行される離職票をハローワークへ持っていき、発行される「受給資格者証」を市区町村へ持っていくと保険料が減免されます。

退職後に就職先が決まっていない場合には、家族の扶養になることも可能です。この場合は、保険料はかかりませんし、病気になった場合は、家族が加入している健康保険組合の給付内容を受けることが可能となります。もし、家族の扶養になれるのであれば、退職日の翌日から5日以内に手続きをすることが必要になります。

家族が加入している保険者にもよりますが、5日以内に手続きをとらなければ、退職日の翌日に遡って加入できないといったケースもあるため、すぐに手続きができるよう事前に必要な書類を確認しておくとよいでしょう。

年金の切り替え

次に年金の切り替えについてみていきましょう。1日の空白もなく、次の就職先への入社が決まっていれば、引き続き厚生年金に加入することになるため、とくに手続きは必要ありません(就職先が社会保険に加入する事業所であることが前提)。

しかし就職するまで空白期間がある場合は、国民年金へ切り替える必要があります。健康保険の切り替え時と同様に、会社からもらう「資格喪失証明書」を市区町村の窓口へ持っていき、切り替え手続きを進めましょう。

一方、前職で配偶者を扶養に入れていた場合は、注意が必要です。その場合、配偶者は国民年金第3号被保険者(以下第3号被保険者)として国民年金に加入しています。ところが、自身が退職して厚生年金から脱退すると配偶者も第3号被保険者から自身で保険料を支払う第1号被保険者になってしまうのです。

ところで退職をしてすぐに次の就職先が決まっていない場合は、申請することで国民年金保険料の納付が免除になる場合もあります。その際には雇用保険の離職票や受給資格者証が必要になるため、お住まいの市区町村に確認してみるようにしましょう。

筆者プロフィール: 土井 裕介(どい ゆうすけ)

特定社会保険労務士/大槻経営労務管理事務所所属
数名規模から数千人規模の事業規模、業種ともさまざまなクライアントを担当し、サテライト勤務や在宅勤務をはじめとしたテレワークを生かした働き方のアドバイスを得意とする。また、M&Aの案件も数多く担当し、クライアントのニーズに応えたサービスを提供する。